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右リールのチェリーは何のため
右リールのチェリーは何のため
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岡井モノさん
「ダメです」「反応ありません」「完全に沈黙しました」 サーバーが不安定な時は使徒に襲われたネ○フみたいな雰囲気になる愉快な編集部です。 - 投稿日:2016/11/16 16:07
ワアッハッハッハッ
ジャッキーン
2004年5月に登場した『主役は銭形』。
ボーナスのストック機能を搭載した大量獲得機で、ビッグボーナス中の押し順ナビに従うとほぼ711枚獲得出来る。
ボーナス図柄には3連セブンが印象的な赤7が採用されており、テンパイさせると冒頭のようなとっつあんのスペシャルボイスが聴ける。
私はこの銭形が好きだった。
大量獲得機ではあるものの、当時人気だった北斗や吉宗ほどカドがたっておらず、1000ハマり以降のボーナスは必ずBIG、BIG後は誰でも3ゲーム連抽選、14枚役のベルも狙いやすい配置。若干物々しくなっていった北斗・吉宗のシマの雰囲気が苦手だったという理由もあるが、当時の私はホールに入ればまず銭形のシマをチェックしていた。
時間だけはある学生時代、私はパチスロを覚えホールに通うようになっていた。
といっても講義は真面目に出席し、レストランのアルバイトも欠勤無し、のめりこんで散財するというタイプでもなくあくまで小遣い稼ぎという位置付けで、むしろパチスロよりも友人と対戦格闘ゲームで遊ぶ方が楽しかった。
まだ夏の暑さが居座る日、人もまばらなバスの座席で購入したばかりのゲームの説明書を読んで心躍らせる。好きなものはその説明書を読むだけでも楽しいものだ。
単なる小遣い稼ぎとしてのホール通いだった私は、パチスロ話を周囲に話すことも無かったが、ある日後輩のアベちゃんとホールで遭遇した。
線が細くメガネをかけた彼は成績も良く、仲間内では「ブレイン」のあだ名で呼ばれていたが、より近しい友人からは「エロ本ラボ」の異名で恐れられていた。
「岡井さんもパチスロやるんですか?ちょっと意外ですね」
そう話して近づいてくる彼、聞くとパチスロはじめたての初心者らしい。
聞かれるままに私は自身のパチスロ歴や簡単な立ち回りスタイル等を話し、まぁまぁ戦績のよかった私の話にアベちゃんは目を輝かせた。
「スゴイ!僕にも立ち回り教えてください」
岡井の人生でパチスロを一番褒めてくれたのは恐らくアベちゃんである。
話の流れで後日実家暮らしのアベちゃんの家でパチスロについてレクチャーする約束をした。さんざんおだてられた私は、まぁ可愛い後輩のためだと一肌脱ぐことにしたのだ。
当日は手土産がわりに書店で適当なパチスロ雑誌を購入し、アベちゃんの家に訪問。クビの部分が伸びきって乳首が見え隠れするTシャツ、という衝撃的ないでたちで私を出迎えたアベちゃんに誘われて部屋に入った。
パチスロの仕組みを簡単に伝えた後に、買って来た雑誌を解説しながら読み進めていくというスタイルで教えていく。
もともと頭の良い彼なので飲み込みは早く、ホール設置機種の立ち回り知識はほぼ完璧、あとは多少目押しを練習すれば立派なスロッカスであろう。
お礼にコーヒーでも、といって部屋を出た彼の言葉に甘えることにした。
雑誌をパラパラとめくっていると視線を感じてドアの方を見る、そこには両手にマグカップを持ったアベちゃんと、その隣には彼の母親がいた。そしてアベちゃんと私を交互に見ながら一言、
「誰、このオトコ」
まるで妻の浮気現場に遭遇した係長みたいなセリフだ。
一肌脱ぐとはいったが実際には一枚も脱いでいないぞ、息子と同年代の男がいれば十中八九友達だろ。アベ家は母親もちょっと変わっていた。
コーヒーに妙な薬を入れられていないかが気になって、味はほとんどわからなかったが、彼の役に立てたならそれでいい。マグカップをおき、帰ろうと立ち上がるとお土産を持って行ってくれとアベちゃんが言う、気をつかわなくていいと伝える間もなく棚から大量のマニアック過ぎるエロ本を取り出してきた。
どれでも好きなのを持って行って欲しいというアベちゃんに、必死に要らないからと伝える岡井。
「うぬが選ぶまでこの扉は通さん、オススメのモデルの構図はー」
ラオウみたいになっていた彼によるエロ本神拳勝舞が繰り広げられる。ここから地獄のような2時間30分がはじまった。
数週間後、大学で再会した彼は収支も好調らしく上機嫌だった。
私も師匠の身として満足して話を聞いていたが、ここで一つの質問を投げられた。
「そういえば、右リールのチェリーってなんのためにあるんですか?」
払い出しに関係無いし、スイカでも置いてくれた方が取りこぼしが少なくて良いのではと主張する彼に対して、ゲチェナをはじめとするリーチ目を構成する右リールチェリーの役割を伝えた。
しかし彼はいまいちわからないという顔で言う、
「え、ボーナスは液晶演出で察知できるし、昔の機種の名残ってヤツですか」
そう、ストック機・大量獲得機全盛の当時、リーチ目の存在自体がかなり希薄になっており、ボーナスはランプや液晶だけでも察知可能。リーチ目を覚えるなんてパルサー等の一部機種を打ち込む層だけに求められた「マニアックな知識」となりつつあった。
3連チェリー等で右チェリーをゲーム性に盛り込んだ機種も少なく、必要のない図柄として考えられても不思議ではない。一撃数千枚が当たり前の時代ではボーナスを早く察知することよりも解除期待度の高いゲーム数を暗記することの方がよっぽど有益だった。
私は彼にうまく答えることができず、ボーナスの成立はわからないよりわかる方がいいだろうと、なんとなくごまかしてしまった。
季節も秋になろうかとしていた頃、いつものホールでいつもの銭形を打っていた。
タイプラ演出で「ゲチェナを盗め!」が出て、先日のアベちゃんの疑問を思い出す。確かに、ゲチェナが止まろうが適当押ししようが、BETすりゃ次ゲームで答えがでるんだもんな。
そんなことを考えながら、BIG確定演出が出たためいつものように3連セブンを狙う……
いや、たまには白7を揃えてみるか。
赤7と比較して地味な存在、テンパイボイスもなければ、音楽が変わるわけでもない。私は戯れにハサミ打ちで右リールにチェリーを携えた白7を停止させた。
……
あれ、これって……
私はホールを飛び出して携帯の履歴から「エロ本ラボ」を探した。
近くのゲームセンターにいたらしいアベちゃんはすぐにホールに来た。
右リールのチェリーに意味はある、これからそれを見せる。私は興奮を抑えながらそう伝えると左リールに白7・プラム・BARを停止させた。
ここで右リール中下段にチェリー付き白7を狙う、下段に止まればBIG、BARが滑ってくるとREG、ロスの無いボーナスフラグの一発察知だ。そして右リールに白7は二つあるが、これはチェリー付きの白7でなければできない芸当だ。
一気にまくしたてた私に若干距離をとりつつも、アベちゃんは私を称賛した。
「チェリーが目印とはスゴイ、たしかにこれなら間違いないですね」
その日から私とアベちゃんはボーナスを白7で揃えるようになった。
この話はベテランスロッター諸兄にとっては退屈なものだったかもしれない。ボーナス最速察知はスロッターにとってはごく当たり前におこなわれていることであり、上記の手順も配列を見ればすぐに気づくようなものだ。
しかし私にとってリールの配列を見て自分で考え実践する、成功した時の達成感、そして友人とそれを共有する喜び。それが実感できた初めての台は『主役は銭形』だった。ゲームの説明書を眺めていた時と同様に、パチスロの配列を見るだけでワクワクできる岡井がこの時に誕生したのである。
そして後日、お礼と称して大学構内でオススメのエロ本を渡そうとするアベちゃんはもう逮捕されればいいんだと思った。
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岡井モノさんの
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このコラムへのコメント(14 件)
私にも敬意を、いや例のカードを!(懇願)
面白かった。
それで問題ないと思います、止まれば嬉しいだけだと。
ギャース
私ならそう説明しかできない(´;ω;`)
ギャース
デートライン銀河シリーズの進化について語ってみたいとも思いましたが、Ⅲしか打ったことが無いので思いとどまりました。
銭形は立ち回りやすい機種、でも確かに書くことは少ないですね。
タイプラはみんな大好き、中段チェリーはそのままBARが揃えられるんですよね。
ガッツゲーム!
石松タイム!
BIG中「俺の名はエロ本ラボ」のタイプラで1ゲーム連も可能です
パチスロゲームの値下がり具合はスゴイですよね。
「岡井モノ」カテゴリは何者かの陰謀により消失したんだ。
銭形とは意外でした。私ももっとも回したストック機は、キンパルか銭形です。
朝イチ182ヤメの台は据え置きなら、前日から364回ってるので148打つのもアリとか……最後は原稿に書くことがなくなって困りましたけど(^^;;