『せっかくフリーズ引いたのに』第10話

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10話
◆不

　クソッ！
『甲鉄城のカバネリ』を打ちながら舌打ちをする。
「狙え！」をわざと外して黒血漿貯まらないようしてるってのに低確チャンス目がバンバン出て、しかも簡単に当たりやがる。
　設定推測においてSTなんて短い方がいいに決まってる。
　しかも普段なら200枚ボーナスばかりでうんざりするところ、この台は300枚以上を次々選ぶ有様。
　この挙動は、設定関係なくただヤレているときのカバネリ。
　ヤバい。合計獲得1000枚越えてしまうと、70or100ゲーム間低純増でただ回していくだけの無名回想に入ってしまう。
　そして──。
　トータル900枚となった次のSTで、低確チャンス目から「零」の文字が出て第3ボタンが押せなくなる……マズい。
　液晶下部から黒い煙がぶわっと広がり、来栖フリーズ。当然のように青7が揃い、エピソードボーナス「燃える命」。

　クソクソクソッ！　こんなんは現実世界でやってくれよ。なんで、命が懸かったこの場面で……。

　急いで席を立ち、中央へと走る。
　あんなの消化してる時間はもったいないし、残り枠数は4人分。

　ドラムくんが待つ解答エリアへたどり着いた時、ふと思う。
　──ここで、もしオレが正解したら、少なくともひとりの人間を殺してしまうことと同じなんじゃねえか？
　いや、でもな。やっぱり妹の入院費用を稼ぐため、オレは元の世界へ帰らないといけない。

　意を決して6のボタンを押す。

　ドラムくんのリールが回転し……✕✕✕の図柄が揃い、ブッブー！　と音が鳴った。

　ああ、チクショウ！　なら5か？　いや、まだ105pt以上が出てないだけで4以下の可能性だってぜんぜんある。

　ダメだ、いま2回目を使うわけにはいかない。

　大丈夫だ。まだ時間はあるはず。とにかくあのSTをとっとと終わらせ、また通常時のゲーム数を増やして……。

　元の席に戻り、背もたれに手をかけたその時、長髪ジャケットくんが声をかけてきた。

「待って。その台座らない方がいいよ」

「え？」

(続く)

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