クソ台じゃないよ！ちょっとしくじっただけ！元ホール店長が語る「ブラボーキングダム(平和)」のしくじり物語。

元・店長カタギリ元店長カタギリのしくじり機種～歴代パチンコパチスロ事件簿～

「パチンコ・パチスロは毎ゲーム、同一の確率で抽選を行っているのさ。だからパチンコはなるべく多く抽選を受けられる『よく回る台』を、パチスロは大当り確率そのものが高い『高設定台』を探し出して打てば良いのだよ」

仮に私がパチンコ・パチスロ初心者から「どうすれば勝てるようになるの？」と聞かれたら、インチキ予備校講師のような表情でこのように回答するでしょうね。ま、今年すでに70エイイチ（単位は新紙幣対応）ほどロストしている人間の答えに説得力は皆無ですが。

しかしながら賢明な読者の皆様ならご存知の通り、これまでパチンコ店に設置されてきた全ての遊技機が『完全確率方式』で抽選していた訳ではありません。意図的な連チャンやハマリを発生させるプログラムされていたイリーガルマシンのみならず、独自の抽選方式を用いて極端な出玉の波を演出していた機種も過去には存在していたのです。

今回ご紹介する『しくじり機種』は、そんな独自の抽選方式を採用していた機種としてあまりにも有名なタイトルです。本機はセールス面や設置後の稼働状況において『しくじっていた』訳ではありませんが、パチンコが常に同一の確率で抽選しているとは限らない。という縁日のクジ引きみたいなグレーなイメージをユーザーに与えた点を重視し、今回のご紹介とさせていた次第であります。

それでは参りましょう、導入当時に多くのユーザーを悶絶させた熱狂的王国、いよいよ当コラムでのご紹介となります、はい。

★今回のしくじり機種は『ブラボーキングダム（平和）』

▲ブラボーキングダム（平和）

本機の導入は1992年の春。盤面中央にはドットタイプの地味なデジタル、その左右には睨みを効かせた緑と青のドラゴン、盤面上部には弓を引く戦士がそれぞれ描かれているレトロファンタジー風のデザインが印象的でした。

スペックは大当り確率225分の1、出玉2,400発と、当時のデジパチとしては特筆すべき点はナッシング。しかしながら中身はどえらい鬼畜仕様。パッと見は平凡なOLだが性格は他者の追随を許さぬ超ツンデレ女子、みたいな台でございます。

しくじり.1：恐怖！　無抽選ゾーンが存在するドハマリ誘発仕様！

キングダム様の大当り確率は前述の通り225分の1。ところがその実態はなんと『大当り確率25分の1のモードが1つ、絶対に大当りしないモードが8つ』存在し、保留ランプが3つ点灯した状態でリーチがハズれると、モードが移行するトリッキーな仕様だったのです。

確かに計算式では「25分の1×合計9つのモード＝225分の1」となるのでしょうが、実際に打ってみると初当り225分の1のイメージは容易に崩れます。では、具体的にどういった状況となるのかご説明いたしましょう。

まず本機は導入当初から『とにかくメチャクチャ回る』台でした。当時の低交換率、出玉交換アリのラッキーナンバー制といったホールの営業方針を差し引いても、他の機種に比べて段違いに良く回る台が多数、存在していました。その理由が先に述べた「保留3つ点灯からのリーチハズレでモード移行」という独自仕様。圧倒的に滞在時間の長い無抽選ゾーンを抜けてようやく大当り確率25分の1の『天国ゾーン』に移行したとて、ブン回り状態で運悪く大当りより先にハズレリーチを引いてしまえば再び無抽選ゾーンに移行（転落）してしまうのですから……。なおかつ、大当りを引いて天国ゾーンが確定しても再びブン回してハズレリーチを引いたらハイ、それまでよの無抽選ゾーン移行。そりゃホールも回し放題ですわ。打ち手としては当然、良く回るから投資ジャブジャブ大作戦。

にもかかわらず、大当り確率を疑問視したくなるほど遠い初当り。首を傾げながら無抽選ゾーンを延々と回し続ける不毛な戦いを余儀なくされていた、という訳なのです。かなり回るのにちっとも当たらない。そんな経験、誰でも一度は味わったことがあるでしょう。そんな時、私のようなベテランプレーヤーは心の中で思わず「もしかしてブラキン仕様か？」と呟いてしまうのです。ああ、恐るべきキングダムシンドローム。

しくじり.2：遂に仕様発覚！攻略打法の餌食による終焉

良く回る、でも当りにくい。されど、その仕様さえ判明すれば攻略は容易。導入から半年足らずの1992年、初秋。とうとう攻略誌にブラボーキングダムの攻略打法が大々的に掲載されました。

大当り終了後の4回転でハズレリーチが発生しなければ天国ゾーン滞在が確定するため、その後はモード移行させないように単発回しで遊技すればオッケー。実に簡単ですが、非常に目立つ打ち方でもありました。当然ながら一般ユーザーが知り得た段階でホール側も対策を講じます。

シマを格闘技経験のあるベテランスタッフ（決めつけ）に監視させるオーソドックスな対応や、基板そのものを交換する昔のパチ屋ならではの荒業を含め、様々な手法で連チャン打法を封じます。とはいえ何より簡単なのは「とにかく回らなくしちゃえ」です。

攻略法が広く知れ渡った以降、ブン回り機種であったキングダム様は一転してガチ締め機種に早変わり。導入直後と末期でここまで調整内容が激変した機種を私は他に思い出せません。

後に聞いた話では攻略法発表の直前、攻略プロはもちろんのこと多くのパチンコライターさん達も掲載前にひと稼ぎしたとのこと。それはちょっとズルいんじゃない、でも、うらやましいなあ。そんな複雑な気持ちが交差したのをよく覚えております。

★元店長カタギリとブラボーキングダム

良く回るなあ、でも当たらないなあ。とはいえ、一回当たれば連チャンしやすいなあ。当時高校を卒業したばかりの私は、本機を打つ大半の方々と同じ思いでキングダム様と対決しておりました。

そりゃ打ちましたよ、ブン回りですもの。それに当たってしまえば何故か次の大当りが即座に引けることが多かったのですから。

とはいえデジパチに限らず一発台、羽根モノ、権利物、何よりいかがわしい連チャンが発生するパチスロ、といった魅力的な機種が数多くホールに設置されていた当時は毎日のように違う台を遊技していたため、いつしかキングダム様への興味は薄れ、自身の遊技の対象からは外れてしまっていたのです。

それから数か月後。地元のホールへと久々に足を運んでみた、とある夏の日。すでにメインのシマからは外され、デジパチバラエティーコーナーにひっそりと移動されていたキングダム様の一台が、凄まじい数のドル箱を積み上げているのを目撃ドキュンしたのです。2,500発入りの真っ赤なドル箱、その数なんと20箱以上。ラッキーナンバー制に加えて無制限ナンバーも採用していたその店で、首尾よく交換不要の無制限の権利をゲットしたのでしょう。少なく見積もっても5万発は下らないであろう大量出玉に私はただ圧倒され、運の良い人もいるものだなあ、うらやましいな。お金を貸して欲しいな、いや、できればお金をくれないかな。みたいなことを考えながら店を後にしました。

もちろん、その出玉は攻略打法による恩恵だったことでしょう。ということは、ドル箱を積み上げていたのは情報を先取りしていた攻略プロだったのでしょうか。インターネットの存在しなかった当時に、小規模な郊外店でひとり黙々と単発打ちに勤しんでいた彼は今、何をやっているのでしょうね。

貴方の職人気質な背中は30年以上の時が流れてしまった今もなお、私の脳裏に焼き付いて離れないのですよ。言葉にして良いですか、今からでも良いのであの日、私が負けた分のお金をください。

★まとめ～ブラボーキングダムから得た教訓～

近年ではスマスロにおける冷遇期間が話題となり、現在も熱い議論を交わす題材のひとつとなっております。当りやすく出玉が伸びやすい、当りにくく連チャンしにくい。もしかすると、ある程度はそのように作られているのかもしれません。メーカーが台をリリースするには試験に通る必要があります。ホールも出っ放しの台では困ります。何より、全く出ないような台ばかりではユーザーもついていけませんからね。

パチンコ・パチスロの醍醐味のひとつは、今も昔も大当りの興奮とハマリの悔しさが共存する点です。まだまだ連チャンするだろう、もう出ないかな、そろそろ当たるだろう、ハマったから連チャンしてくれよ、ここでやめるべきか、いや、ここまできてやめてたまるか。めくるめく逡巡の先に待つ結末がたとえ仕組まれたものであろうとも、私はメーカーに対して怒りや失望の念は一切抱くことはありません。

パチンコ・パチスロは娯楽である以前に、メーカーやホールに利益をもたらす機械なのですから。我々をいかに楽しませてくれるか、いかに上手に騙してくれるか。メーカーの開発者の皆様に私が期待しているのは、そういった手法の巧みさなのです。

ブラボーキングダムはまさしく、一時的であれユーザーを上手く手玉に取って楽しませてくれた名機であったと同時に、当然の如く化けの皮が剝がされて終焉を迎えた愛しき『しくじり機種』でありました。いや、ホントに上手くしてやられた感がありましたよ。

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元・店長カタギリ: 代表作：しくじり店長

シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。タイトルは「しくじり店長」。パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。