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パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
2023.03.21
パチスロライターに“なってしまって”episode.15(パチスロバブル崩壊)
「もう5号機しか担当しません」と言って見事に干されることとなりましたが、プライベートの時間が増えて助かったくらいに思っていました。負け惜しみではありません。というのも、プライベートがかなり忙しかったんです。勝てるホールを見つけたのではありません。思い出の機種たちに最後の挨拶回りをすることで。
2005年12月に、検定・認定切れの機種の撤去を2006年7月までに済ませることと発表されました。5号機の“みなし機撤去”など記憶に新しいですが、この時の撤去騒動はその比ではありませんでした。この時まで検定・認定切れの機種の撤去という概念がなく、探せば1号機すらホールにあったわけです。それらが一気になくなることになります。
モナミ:ニューペガサス(1.5号機)
フジ:アニマル(2号機)・リノ(3号機)
グリンピース:スーパーバンーガール(2号機)・コンチネンタル(3号機)
新宿だけでもこれですもの。グリンピースには他にもいろいろありましたが。1号機から4号機初期まで。スマホどころか携帯の写メすらない時代の機種たちです。なにも写真を持っていないのです。これがラストチャンス。そう思って全国を飛び回りました。パチスロだけでなくパチンコもありますので。
5号機が撤去される際に、私はそこまで感傷的にはなっていないように見えたかもしれません。それは思い入れが少ないというのではなく「なくなるのは5号機だけじゃん。あの時は全部なくなったよ」という思いが強くあったからです。数多くの名店とともに。
そうやって、旧台に繋ぎ止まっていた遊技人口が離れました。過去の歴史的な機種を後から振り返る機会も永遠に失われました。この日を境に、歴史まで興味のある若者の勉強にも“その限界”ができることとなりました。文学に例えるならば、夏目漱石や森鴎外、太宰治などの作品を読めないのと同義です。新しいものに置き換えなければいけない、歴史を振り返れない。ここにパチスロが文化になり得ない要因があると私は考えています。
と、いろいろな思いを抱えたままプライベートのお別れ実戦をする日々でしたが、仕事面も激変のタイミングを迎えることになります。
『解析Vスペシャル』(パチスロ王からリニューアル)が休刊。『必勝パチスロファン』も制作編集プロダクションが変わることに。休刊というのは、事実上の廃刊です。専門的になりますが、雑誌コードを取るのが大変で。なんかの時のために残しておく意味合い(増刊扱いだとコンビニに置けたり)で休刊という表現になることが多いです。
そして私のデビュー媒体である『必勝パチスロファン』。前の編集プロダクションが切られて我々が作るようになったのと同じように、我々が切られて他の編集プロダクションに持っていかれることとなったのです。ちなみに、その移籍先はパチスロ王の副編集長が立ち上げた事務所だったりしますが。うん、狭い世界だ(笑)。
お世話になった雑誌なので悪口は言いたくないですが。『必勝パチスロファン』という雑誌は、これから解析時代になるというところで解析に力を入れ始めていた前の編集部を切り、手順の作れるライターの時代になるところでワサビさんと私だけでなく業界サイトで無記名の一発目記事を書くことになる鈴木研究所さんもいた編集部をカットするあたり、立ち回りがお上手ではなかった気がいたします。それから1年後、休刊の憂き目に遭うことになります。
なんにせよ失職です。数えるのが面倒なほど同時進行でいくつもの雑誌に携わらせていただきましたが、そのどれもが休刊・廃刊となってしまいました。残ったのは大手3誌くらいですね。フリーだった私には縁がありませんでした(当時は)。ただ、さてどうしようと考え込むこともありませんでしたね。旧台のお別れ実戦を黙々とこなしていました。誌面のためではなく、自分のために。
▲最後の日のラストで打ったのは2号機の『ベンハー』
★WEBライターデビュー。
そんなスロニートに戻ったかのような時期に、一本の電話を受け取ります。ニフテティ株式会社からでした。「佐々木さんが暇になったと聞いたので」。
そもそも私がライターとなったのは、ニフティサーブというパソコン通信がきっかけで、ニフティと繋がりができたのは、パチスロフォーラムの副管理人となったから。で、ここに戻ってくるんです。実際は、ちょこちょこ連絡は取り合っていましたけどね。「フォーラムで育った人と一緒に仕事がしたい」そういうオファーでした。まさに渡りに船。
パソコン通信はサービスが終了していたものの、パチンコ・パチスロ関連は777@nifty というサイトとして生まれ変わっていました。その中の機種図鑑というデータベースと各コラムを書いて欲しいと。機種データベースを書くということは、ほぼ全機種を触る必要があります。時間がいくらあっても足りません。マンパワーも不足というか、ほぼ私だけのようです。
ライターの力量が問われる5号機ですよ。燃えるじゃないですか。
この電話をかけてきた編集長。かなり曲者でして。まだこの当時は、誌面のほうが格上でWEB媒体は下に見られていました。で、とあるメーカーに取材で行った際に嫌味的な質問をされたそうです。「パチスロのBIGの法律上の正式名称を知っていますか?」と。そこで答えられなかったのが悔しくて勉強したとか。その編集長から同じ質問をされましたよ。「役物連続作動増加装置がどうかしました?(4号機以前の正式名称)」と即座に返して合格しましたが。
ほぼ全機種を担当。下に見られているWEBなので取材時間も短いです。無理ゲーに思えるじゃないですか。だからこうなったんです。遊技機規則は変わることがありません。変わったら事件です。遊技機規則を理解していれば、打つ前に理解が深まる。一目散に機種の狙いを把握できれば、頓珍漢なデータ取りや質問をすることもない。無駄な時間を減らせる。そうせざるを得なかったのです。
4号機技術介入全盛期の経験から、手順はすぐに作れます。成立した小役を必ず引き込む5号機ですので、打って確認することもありません。机上で理論立てて手順を作れば正解です(一応、確認はしますよ)。
こういう機種を作れないのは、何か知らない内規で封じられているのではないか。などと新機種を見て想像する日々。ほぼ全機種を打っているのですから、このアイデアを他のメーカーがこう使ってきたなんてことも分かります。そうやって規則おじさんへとなっていったのです。この編集長との反省会という名の飲みが毎日のようにあったからですね。
必然なんです。単に出玉を得るためには役立ちませんが、ミスらないために。より早く取材を終わらせるために絶対に変わらない法律・規則の知識が必要だったのです。
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- 佐々木真
- 代表作:パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。
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