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BAR BIG BONUS#9 カム オン アタック!
BAR BIG BONUS#9 カム オン アタック!
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岡井モノさん
「ダメです」「反応ありません」「完全に沈黙しました」 サーバーが不安定な時は使徒に襲われたネ○フみたいな雰囲気になる愉快な編集部です。 - 投稿日:2017/01/17 01:17
私は業界タレントが集まるバーの雇われマスター。
7の付く日だけに開く店の名前は「BIG BONUS」。
パチスロ好きなオーナーが開業時に、BARという響きを嫌い、せめてもの縁起かつぎにとつけた名前です。
素敵なTOP絵はくりくり。さん
(http://pachiseven.jp/columns/column_list.html?uId=14740#contents)
にいただきました。
話は記憶とweb上の情報を頼りに書いているため、【間違っている部分も多いと思うので、鵜呑みにしないよう】お願いします。
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雪のちらつく静かな夜。
夏の陽気も良いものだが、こんな落ち着いた冬の雰囲気もまた魅力がある。
刺すような冷たい空気をともなう夜は、きっと星も綺麗に見えるだろう。
店内からでは星座鑑賞は楽しめないものの、暖かい部屋の中でお酒を楽しんでいただく。
「マスター! もう一杯じゃ!」
りりしい眉と結われた髷、裃を纏った吉宗さんは既に出来上がっていた。
「今夜はお目付け役のあの方もいらっしゃらないので、ゆっくり飲んでもいいんですよ」
飲みなれている方とはいえ、チェイサー無しで一気にあおるので少し心配になる。
「爺と飲み比べ勝負していた時の癖かの、まぁ、どのみち楽しむ時はめいいっぱいじゃ」
早めのペースで飲み続け、短時間で帰るのが彼のスタイルだ。
なんでもそうした飲み方が粋なんだとか。
無理な飲み方だけはしないで下さいと釘をさし、話を続けた。
「癖ですか、飲み比べをしていたのは4号機時代のデビューからでしたね」
「うむ、2003年に堂々登場の『吉宗』じゃ!」
言わずと知れたそのマシンは、ホールにおいてあの北斗の拳と双璧を成した大ヒット機。
パチスロマシンの分野ではややマイナーな存在であった大都を、一気に人気メーカーにのし上げた立役者だ。
「全BIGが711枚の大量獲得機」
「複数存在する1G連のチャンス」
「天国モードに入ればそんなBIGが100G程度で連チャン」
そして吉宗は単なる過激なスペックのストック機では無かった。
「吉宗や家臣を中心とした個性豊かなオリジナルキャラクター」
「3種から選択できるタイプの異なる歌付きBIG」
「高確率や鷹狩りといったシマの注目を集める演出」
さらに高確時の軽妙なリズム、鷹の鳴き声、1G連確定を告知するキィン!
といった吉宗を象徴するSEも巧みに使用されながら、メリハリのついた演出が出玉を彩り、あっという間に設置を伸ばしていった。
高設定であっても大量の軍資金が必要と言われたスペックでも、撤去まで打ち続けられたのはこうした演出の力も大きかったのだろう。
「まぁ、演出に関しては前作の『シェイク』で原型は完成していたんじゃがの」
「『シェイク』のクールな演出も良いですが、わかりやすくコミカルな吉宗さんが広く受け入れられたというかたちでしょうか」
「うむ、BIG中の曲もそれぞれリミックスCDが何枚も出され、カラオケ配信もされたのじゃ」
パチスロキャラとしては異例の広がりをみせた『吉宗』は、シミュレーターゲームのみならず、複数のグッズが作られテレビアニメ化も果たす。それは史上初めてパチスロキャラがアニメとなった歴史的な出来事でもあった。
後年にはパチンコ化やスピンオフ作として『爺サマー』『ギラギラ爺サマー』が登場するなど、吉宗ワールドはさらに広がることとなる。
「勢いもそのままに、2008年には5号機でも『新・吉宗』が登場しましたね」
「時代の流れもあって、出玉関連部分はマイルドになったがの」
RT付きのボーナス機となった新しい吉宗は、ボーナス中の青7揃いを契機にRTに突入し連チャン性を再現するなどの努力がみられた台であった。
ゲームフローや出玉性能の変化に拒否反応をしめすファンも多かったが、豊富で楽しい演出関連はパワーアップして楽しませてくれた。
「まぁ、RTの格下げがしばしば起こるのはいただけませんでしたが……」
「みな口を揃えてそれを言うのじゃが、こればかりはどうにもならん」
吉宗さんは、聞き飽きたと言いたげな渋い表情で首を横にふった。
「しかしスゴビ採用の演出関連は、今見ても古さを感じさせませんね、吉宗ファミリーもイキイキして見えます」
「んおっ? そうじゃろ、男たるもの視野は広く持つべきじゃ!」
「将軍として街や家臣を守り、傍には可愛らしい姫様も、うらやましい限りです」
「姫か、まぁ、ワシより強いかもしれんがの、アッパーカットが強烈じゃ」
「……それも愛情ゆえ、ということにしておきましょうか」
「いやいや、それがのう、怒らせるととても怖いぞ、奥方様も顔負けじゃ……っくしゅ!へくしょん!」
吉宗さんが2度続けてくしゃみをした。
噂の相手ではなく、自身がくしゃみをするとはどういうことだろう。
私は少し意地悪に言ってみる。
「おや、同じようにお城の誰かが吉宗さんの噂をしているんでしょうか」
「ち、違うぞマスター、冷たい酒をあおったせいで身体が冷えただけじゃ!」
「そういえば姫様は地獄耳という情報も」
「やめい、酒じゃ!何でもいい、もう一杯!」
さすがの八代将軍も姫様には頭があがらない様子。
私はミルクを温めて次の一杯を準備した。
イメージとしては熱燗でもつけてみたいところだが、今夜はこの一杯を。
「では温かい飲み物を、ホット・エッグノックです、落ち着きますよ」
「むっ、これはいいものじゃ」
「からかったお詫びを兼ねて、この一杯はサービスさせていただきます」
「今夜のマスターはいつになく気前がいいのう」
「大判振舞というやつでしょうか」
酒をはさんだ二人で笑いあう。
ホットカクテルを提供し、少々ペースを落としていただいた。
酒の好き嫌いはほとんどしない彼ではあるが、喜んでいただいた様子で私も一安心だ。
「吉宗さんは甘い酒も大丈夫なんですね、将軍のイメージとは少しギャップがありました」
「マスターは遅れておるのう、将軍だからこそ、新しいものを積極的にとりいれるのじゃ」
「そういえば、ツインカムエンジンの大型バイクも乗りこなしていますね」
「うむ、悪者退治の足としても一役かっておるぞ」
2013年、『吉宗』はAT機となって姿を現した。
ATは「爆走大盤振舞」として吉宗さんがバイクで街中を駆ける演出が入る。
初代ではあくまで演出用であった「高確率」が本物の1G毎の「高確率」抽選となり、AT上乗せも搭載。モード移行が重要だった初代に対し、その場での引きが重要となるゲーム性だった。
「おなじみの3種BIGや高確前兆も盛り込まれていましたね」
「うむ、手ごたえはあった、しかし初代のような激しさを求める声も大きかったのう」
「それだけ偉大だったということであり、期待の裏返しでもありますが」
「将軍たるもの民の期待には応えねばなるまい」
2015年に登場した『吉宗~極~』は前作のスペック違いで、いわば荒波バージョン。
天井が深い代わりにBIGは特化ゾーンからスタート、ATの上乗せや引き戻し確率もアップしている。
もともとは大都直営店のみの設置だったものが、全国展開に踏み切られた経緯がある。
「一撃派のスロッタ―にも歓迎されましたが、どちらかというとホールに支持された機種でしたね」
「よく知っておるのう、コストをおさえた流通で、ホール満足度は高かったぞ」
フル稼働の人気機種とまではいかずとも、安く設置できそこそこ動く。
導入日に機械代の回収にやっきになる昨今の新台とは少し異なるその台は、業界関係者の中で注目するものも多かったという。
「前作の在庫処分などと揶揄するものもおったが、資産の活用は打ち手にもめぐっていくものじゃぞ」
「ここさえなんとかなればという台も多いので、ホールの負担を抑えたマイナーチェンジは可能性を秘めていると感じます」
「伊賀と甲賀の忍者が争う人気台もマイナーチェンジだしの」
「願わくばそれをうまく活用できるホールと、打ち手の理解も欲しかったところですが」
派手な暴れん坊のイメージがついている『吉宗』だが、その実態は流行を察知し、追随する戦略をとることで手堅い実績をあげてきた歴史がある。
ふりかえってみれば、ST・RT・ATといった時代のトレンドを取り入れ続けたシリーズだった。
「吉宗」というキャラクターはそうした機能にマッチする演出で盛り上げ、ファンを増やしていったことは間違いない。
イメージが独り歩きしてしまうことの良し悪しはあるものの、大都に吉宗ありと言われるほどの影響力を、八代どころか一代でつくりあげた功績は見事の一言だ。
思い出を噛みしめるように、私も吉宗さんもしばし何も喋らない。
そうして5、6分経ったであろうか頃に吉宗さんは席を立った。
「……さて、そろそろおいとましようかのう」
「あ……ありがとうございました、外は雪です、足元にお気をつけて」
「鷹狩で鍛えた足腰、伊達ではないぞ、はっはっは」
吉宗さんは笑いながら外へとび出て行った。
相変わらず去り際があざやかな彼の姿が見えなくなってから、胸のあたりを通って小さくため息が出た。
言いそびれてしまった。
常連の方々には出来る限り伝えるべきだが、こうした話はどうも苦手だ。
義理堅いお客様が多いので、どうしても別れがつらくなる。
最後にサービスした一杯で許してもらえるだろうか。
いや、これでいいんだ。
感謝の気持ちを忘れてはいけないが、過去への執着は時に目を曇らせる。
新しい世界をそれぞれが見つけていく、先程言われたばかりではないか。
営業はまだ終わっていない。
いつものお客様が店内で待っている。
BAR BIG BONUS 最後のお客様が。
THE NEXT TIME IS LAST BONUS…
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岡井モノさんの
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このコラムへのコメント(20 件)
おお、お待ちしておりました。
くりくり。様にはお世話になったので、なんとか期待には応えたいものですが……どうでしょうか。
最終回だなんて!
BAR SUPER BIG BONUSになるんですよね?!
マスター!!
はてさて来店は……
北海道は特に温かい飲み物がうれしいですよね。
ホットのカクテル載みたぁぁぁい(´;ω;`)
いつもありがとうございます。
みなさんも良く知っている方ですが、結末はどうなるでしょうか。
またお越しください。
はたして予想の方でしょうか。
酒がなくとも語らえますよ、あればもっと楽しいですが。
次回もよろしくお願いします。
最後のお客様は、少し意外な方かもしれません。
次回お越しいただき、確かめていただければ。
酒豪の爺が相手だとほぼ復活待ちでしたね。
最後のゲストは……お待ちください。
戻ってくるかもしれませんし、来ないかもしれません。
いずれにしても一区切り、静かにお待ちいただければ。