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光の射す方へ 四
光の射す方へ 四
-
さん
- 投稿日:2016/12/07 13:17
四、あやかの場合
小さな重みのある、銀の玉が飛ぶ。
たくさんの釘に衝突して弾ける。
玉の動きは不思議だ。
すっと釘を逃れて真下に落ちてしまいそうに見えるのに、ちゃんとヘソまで運ばれて意図した隙間に入る。
あやかが好きなのはそれだけだ。
ヘソに玉が入るとアニメーションがぐるぐる回って外れたり当たったりするけれど、そんなものに興味はない。
お金を追加するときと一定時間が経過したとき、そして当たったときにLINEで回転数と出た玉の数を報告するだけ。それが彼女の今のアルバイトだった。
何故、こんなところにいるのだろう。
私はここにいるような人間じゃないのに。
この仕事をしている時間、彼女はいつもこの言葉を頭の中で繰り返していた。
父親は名前を言えば誰でも知っているような食品会社の経営者で、幼い頃に父と母は離婚したけれどそれでも家は金持ちだった。
幼稚舎からエスカレーター式の、私立の学校に行っていた。成績だって良かった。順当に内部推薦で女子大まで進んだ。
大学に入学したばかりの春、彼女は突然退学届を出した。怒り狂う母親を説得する気力も、説明するだけの理由もなかった。黙って家を出て、友人の家を転々としていた。
いわゆるお嬢様学校通っていると、必ず年に数人は『墜ちる』同級生が現れる。成績や家庭の経済事情で脱落する子たち。彼女たちは必ずと言っていいほどその後『墜ちていく』。
あやかが大学を辞めたあと転がり込んでいたのはそういう子たちの家だ。彼女たちの仲間に入るために酒と、煙草と、ギャンブルを覚えた。あやかにとってはどれもただのポーズに過ぎない。本気で入れ込んだりしない。もうそんなものでいきがるような子供じゃないんだし。
ともかく金は必要だ。友達に紹介されたのはパチンコの打ち子と呼ばれるアルバイト。時給1500円でひたすらパチンコを回し続ける。たくさん出した時にはボーナスもある。
私は、『堕ちた』わけじゃない。
大学を辞めたのも、家を出たのも自分の選択だ。
秋が来ればあやかは19歳になる。
自分が子供なのか大人なのかもわからない。これからどうするのか、どうしたいのかもわからない。私にとって未来は、霧のかかった夜道と同じなんだ。
大げさな音と光が大当たりを告げる。
あやかは無表情のまま、LINEで報告を送信した。
3
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このコラムへのコメント(2 件)
ありがとうございます(*´◇`*)