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光の射す方へ 三

キツかった話 | コラム

光の射す方へ 三

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さん
投稿日:2016/12/07 01:28

三、比留間の場合


比留間は成功者だった。
彼は今年で54歳になる。20代の頃に立ち上げた事業は今や海外にも支社を出すほどになっている。
国産の食品を扱う、誰に見せても恥のない綺麗な会社。もちろん裏では表立って言えないようなこともやってきた。別の名義で経営している風俗店とパチンコ屋はその最たる例だ。
真っ当な理屈の通じない、金だけが正義の世界。それならばこちらも真っ当なやり方で対抗するのは馬鹿馬鹿しい。大金を動かすことだけを考えてこれまでやってきて、そして成功した。
ただ機械の電源を入れて出入り口を開放しているだけで客は勝手にやってきて、勝手に金を落としていく。

俺が頼んでいるわけでもないのに、中毒のやつらが好きで金を使っているんだ。

比留間はパチンコを打たないし、打つ人間を馬鹿としか思っていない。時間と金の無駄遣い。たまに手に入る小銭で一喜一憂する、矮小な趣味。自己をコントロールできない奴らの墓場でしかない。

店には毎日電話と投書がやってくる。金を返せ、破産した、助けてくれ。

すべて自業自得。すべて自己責任。
勝手に負けた奴らの負け犬の遠吠え。
パチンコなんて、やる奴らが馬鹿なんだ。

それでも時折、閉店後の店内で一人ひっそりと台を回すことがある。
お気に入りはゴーゴージャグラー。レバーを叩いた時の音が小気味良い。静かに光るから好きだ。ランプが優しい色をしているから好きだ。

光ればいいのだ。出てくるメダルには興味がない。
30分、それ以上は打たない。光らず終わる日もあるし、連続で当たる日もある。ランプが点灯すると手を止めて、しばらく眺める。彼に似合わない桃色の光は、暗い店内で淡くじんわりと滲んだようにそっと灯る。

そういえば、あの女はあれからどうしただろうか。
比留間は以前、金で妊娠を示談にした風俗店の女を思い出した。
プロのくせにちゃっかりと金をもぎ取っていきやがった。そういえば、あの女もギャンブル中毒だった。

比留間にとっては払った金などはした金に過ぎない。元々彼は他人に興味などない。

それなのに、ジャグラーを打っている時間だけ、いろんな記憶や他人の顔が走馬灯のように走るのだ。
彼にも昔、家族がいた。今も日本のどこかで生きているのだろう。二人いたはずの娘は現在いくつになっているのか、もう比留間にはわからない。高校生?大学生になっただろうか?

家族のことを思い出すのも、レバーを叩いているこの時間だけだった。

手元でランプがそっと灯る。
彼は電気の消えた店の中で、ただその光を見つめていた。

3

さんの

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