歌声を聴かせて

僕の生まれた町岡山はカラオケの生まれた町でもある。そんなことに関係があるかどうかは知らないが、僕自身は初めてカラオケを歌ったのは幼稚園の時に行った温泉で、「夫婦坂」を見事に一人で熱唱した時だ。



たまーーーに若い子と絡むと、「藤原さん歌えるんですか？w」とか、「カラオケとかいくんですか？w」とか煽り交じりに聞いて来やがる。俺に言わせりゃ本当のカラオケなんつーのは、場末のスナックで知らねぇオヤジと通じ合う最良の手段だ。

「スナックで歌うカラオケ」と、「カラオケ屋で歌うカラオケ」には天と地ほどの差がある。その一番の違いは、９割が聞きたくない歌を聴くからだ。若い子のカラオケなんつーのは、こう、初対面の風通しの良さそうな女性めがけて、「今夜はドゥ？」みたいな期待を込めて歌うんだろう？あーもう最低。カラオケをそんな不埒な目的に使わないで！汚らわしい！！




-俺の思う理想のカラオケ-


パチンコで負けてフリーで負けて、この世の生きとし生けるもの全てが憎くなる時に、ふと目に付いた下品なネオンに、「スナック　新世界」とか書いてあって、久しぶりにババアでもからかってやろうかと入るわけだ。一見の客に挨拶すらしないババアを尻目に、カウンターに腰掛開口一番に「ショーチュー」とか言うのよな。

飲み客だとわかったのでイラッシャイなんて無愛想に遅れて言い、中途半端にぬくいおしぼりなんか貰うわけよ。出てきた不味い水割りすきっ腹に流し込み、タバコを加えて、「ココ長いの？」とか店の話を聞いちゃうわけね。

ババアの身の上話を聞きながら、「ママも大変だ・・・」なんて優しい目を向けりゃ、黙ってうなずくババアがいるの。仕草の可愛さだけは昔とった杵柄だわな。時が進むのは世界共通だとコンコンと説教してやろうか。

下手の端にいる中年親父が、一見に愛想を向けるママにかちんと来て「いつものくれよ」とか言う訳よ。大体目が合うから、俺はペコリと頭を下げるのな。油が浮きすぎてラー油になってんぞオヤジ。

少し時間が過ぎて、使い古したデンモクに目をやって、曲の紹介番号が流れるブラウン管を見ながら、「ママ、何か歌ってよ。得意なヤツ。」とか振るわけだ。一応ババアは「えーっ、若いお客さんに聞かせる歌なんて～」とかおどけるのよ。知ってるか？今の年号は平成だぞ。お前の生きた昭和はとうの昔に終わってんだよ。


「頼むよ。一杯奢るから、ねぇ？」ここまで言うと流石に腐ってもサービス業。その歌声を聞かせてくれる。


曲はそうだな・・・百恵ちゃん・・・と言いたいトコだが、俺の百恵を汚されちゃ困る。ひばりで頼むよ。ママは愛燦燦なんかを見事に歌い俺は拍手を送る。「流石だね、乾杯しよう。」とか言った時点で初めて、愛燦燦を作った小椋佳みたいな風貌したオヤジが、客用のデンモクを手に取り、無言で曲を入れるのね。たかじん。鉄板でたかじんがいい。


その歌声を聴きながらおれは・・・・



流石に無理・・・・・・続かない。疲れた。ここまで読んだそこの君！人生の数分を無駄にしたな！また会おう！

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