もしも 奈須きのこ がスロット実践レポートを書いたら

パチンコホールが近所にあるならば、そこへ行ったのは先週の日曜日の事だっただろうか。
灼熱の日差し照りつき、うだるような暑さを朝からはらんでいるそこには、溢れんばかりの人だかり。
故に、抽選は困難を極めることが明白であった。

周りを、よく見る。見慣れない赤いきぐるみがあった。
「あれ『あ○まる』だ。」と。だれかがそう言った。
ああ、そうか―――ス露パチの取材日。そうか、見慣れない大多数が居る理由なのか。

取材初開催の煽りごときで、普段は目もくれやしない中小ホールに足を運ぶ―――。
否、許されない。それは断じて、許されざることである。
まるでイナゴが稲穂を食い荒らす様。その罪深さを想像をし、猛烈な吐き気と苛立ちを覚える。カップルなども来ているあたり、そのおめでたさに辟易する。

刹那。
「9時30分より抽選開始します」
そう、店員が告げ整列が開始される。

ざっと、500人は居るであろう。欲深き矮小なる人間が500人。
目も当てられないが、現実だ。整列開始しすべり込むように、約250番ほどの位置に入る。9時30分まで残り30分。残された時間は少なくはない。P-WORLDにて機種構成を知る時間とした。

次々と続々と列形成されていく。欲の深さと業の深さを知る者たち。熱気を直射日光とアスファルトから受ける体は、灼熱の暑さに音を上げる。
―――倒れるわけにはいかない。
抽選を受ける、それ故に、早起きをしたのだ。

「あはーあーはーはあーあー」
抽選が開始され数刻。呻き声が響く。
死んだ番号を引いた連中が、軍団連中であるならば、俺は良番を引けるのだろうか。

抽選機が目の前にある。俺の番だ。
液晶画面には数字がくるくると回る様が描かれる。

疑問があった。今日は何人並んだのか、それは当然だった。
店員に投げかける。750名様ほどです、と形式張った答えが響く。
その回答と同時に抽選ボタンを叩いた。

721番。

『コロセコロセコロセコロセココロセ』
どす黒い感情と絶望と怨嗟の連鎖。軍団を恨む言葉しか出ないあたり、俺も欲深き罪深き矮小なるニンゲンと同義。
気づけば引き子を持つであろう軍団は2桁番号の辺りに集合している。

――ああ、これではスロットは打てないのか。
それならば、パチンコに切り替えるだけだ――。
そう思って別の方向で戦おうとしているから始末が悪い。
ここまで糞番号を掴まされていても打つことを止めない思考。それこそが、『養分』なのである。

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