パチスロライターに“なってしまって”episode.29（AT機の時代へ）

佐々木真パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

震災の翌年、2012年。5号機の発展がゴールらしきものを迎えます。AT機の登場です。導入ベースで考えれば『ねぇ～ねぇ～島娘』が最初となるでしょうか。

▲『ねぇ～ねぇ～島娘』（オリンピア：2012年4月）『パチスロ鉄拳2デビルVer.』（山佐：2012年5月）

実際は、1月に登場した『パチスロ鉄拳2』のタイミングで出せていたなんて話も聞くので、面倒だから同率1位ということにしています（笑）。正直なところ、当時のAT機に対しては「う〜ん」というのが率直な感想でした。

AT機の作り方は、今も昔もこのようになっています。

1）増えないボーナスが成立
2）そのボーナスはほぼ揃えられない
3）ボーナス成立後RTに滞在し続ける
4）押し順ナビが出れば増える、出なければ減る

通常時もAT中も、常にボーナスを隠し持った状態で進行していくこととなります。なので、途中でリアルボーナスが成立することはありません。それだけではありません。常にボーナスを隠し持った状態で進行していくので、RT状態も変化させることができません。通常リプレイも特殊リプレイも確率は同じです。要は、出目に何の変化もないんです。

液晶を確認して、当たるかハズれるか。それだけならリールがある必要性を感じません。それならゲームなどのほうが、遊技機規則などで雁字搦めにされない分、自由度は高そうなものです。これは今でも同じ意見ですが（汗）。

なので、そこまでAT機だらけにはならないだろうと思っていたのはあります。正直、最初はそこまで人気も高くありませんでした。

脱線しますが、我が家の近くには大学も多くあるんですね。で、その駅前のホール。ボーナス＋ARTの遊びやすかった『パチスロ鉄拳2nd』が導入されて稼働がかなり上がったんです。学生さんでも“当たりなしで”帰らせられることも減って、遊びやすかったので。

そんな立地と客層のホールが、5月に『パチスロ鉄拳2nd』をハズして『パチスロ鉄拳2デビルVer.』にそのまま入れ替えたのです。

学生さんは一気に消えました。お金が持たないですもの。液晶演出がほぼ同じというのもあって、この入れ替えをすると下取り価格が優遇されたのかもしれません。そんな業界側の都合で、せっかくの若い顧客を失ったのです。そして、このホールはそれからも利益率の高いAT機ばかりを入れ替え続け、多くいる学生さんにはそっぽを向かれたまま、閉店することになってしまいました。

同じモチーフだから大丈夫だろう。元のゲームや原作が人気なんだろうというだけで、中身も客層も理解していなかったらそうなりますよね。

多くのユーザーも最初はAT機に対して良いイメージを持っていなかったかと思います。その代表例が『バジリスク～甲賀忍法帖～絆』でしょう。

▲『バジリスク～甲賀忍法帖～II』（メーシー：2012年6月）『バジリスク～甲賀忍法帖～絆』（エレコ：2014年1月）

5号機終盤こそ『バジリスク絆』は大人気機種でしたが、その導入直後は不評でした。当時は『バジリスクII』の人気が高く、それを超えられないといった状況でした。人気が出てきたのは「3ベル・6ベル」が浸透した頃でしょうか。そういった分かりやすさと、それを多くの人に体感させようとしたホールの努力が実ったと思っております。

そういうのがあっても発見されなかったり、発見されてもホールにそんな設定ないよとなって、短命に終わった機種も数知れず。元が水準以上であれば、どんな機種でもロングヒットとなり得る。要はホールのやり方次第。そう『バジリスク絆』は教えてくれているような気がします。というほど、最初に貼られたレッテルは悪かったですから。

★なぜAT機を作る必要があったのか？

ART機であれば、RTモードも推移でき、出目の変化も作ることができます。なのに、AT機にシフトしていったのは、こんな事情からです。

ARTのみの機種（モンキーターン・ミリオンゴッド神々の系譜etc...）は、1Gあたりの純増2.4枚が限界。同じボーナスなしの機械であれば、1Gあたりの純増が高いほうがホールも買いやすい（分かりやすい売り文句にできる）傾向にありました。なので『バジリスクII』や『押忍!!豪炎高校應援團』のように2種BB＋リプレイで純増を加速させるシステムなどが考案されてきた歴史があります。1Gあたりの純増が2.4枚以上となるように。

その点、AT機は5号機の上限である1Gあたりの純増3.0枚まで容易に作ることが可能だったのです。ユーザーからの支持が薄い!? そんなものはどうとでもなります。

この頃、とあるAT機の機種パンフレットを見て愕然としましたよ。「時代が求めているのは、ユーザーに支持されている純増3.0枚のAT機」と謳われていたのです。私が聞く限り不人気だったのに。でも、ホールのオーナーさんなどにはそんなことは知る由もないでしょうね。今までのART機よりも高いコイン単価（ホールの利益となる指針）に釣られ、AT機ばかりが導入されていきました。

当たりまでしんどいとかは二の次。新装時の謳い文句を作りやすいですから。

そう。結果的に……ですが。業界がAT機を打つユーザーを求めたと言えるような気がしています。純増2.4枚以下でもゲーム性がどうたらと小難しいことを言う人は切り捨て、儲かる純増3.0枚を好んで打ってくれる人だけをターゲットにしたのです。ノーマル系が少なくなっていったのはその最たる例かもしれませんね。

それが悪いとは言いません。買ってくれる大型店が望むのは、遠くからお客さんを呼べる派手な機種です。そうやって主流となる機種の方向性が変わっていくのは、避けようのない時代の流れかもしれません。

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佐々木真: 代表作：パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。