パチスロライターに“なってしまって”episode.22（ついに時代が変わる・忍魂）

佐々木真パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

2006年に200万台まで増えたパチスロの総設置台数。4号機ストック機の“置けば儲かる”状態で膨らんだ事業規模は、完全5号機時代になって萎んでいくことになります。2007年〜2009年にかけて約135万台へと減少していくことになります。

若干タイムラグがあるんですね。良い機種が出たからすぐにドーンと増えるわけではありません。つまり、2010年からパチスロの総設置台数は再び増加傾向となっていきますが、そうなる種は2008年や2009年のうちに蒔かれていたということになります。

▲『エイリアン2』（高砂電器産業：2008年4月）

2008年に今まで書いてきた以外で印象に残っているのは『エイリアン2』です。即効性はなくてもキラリと光ったと言いますか。あまり売れなかったですし、評価している人も会ったことはありませんが（笑）。

システムは、ボーナス＋RT。ボーナス終了後に突入する30GのRT“デンジャーゾーン”で普通のリプレイが入賞すると50GのRTへ。特殊リプレイが入賞すると1000GのRTに入るものでした。

この際、デンジャーゾーン中に変則押しをすると、通常のリプレイ入賞を拒否（ゾーン継続のリプレイが入賞）することが可能。そうすることによって、特殊リプレイが成立するのをギリギリまで待つことができたんですね。特殊リプレイを引けなかったとしても“デンジャーゾーン”を引っ張れたことで、その分、長くRT状態で遊技することができます。そう。『ハナビ』や『バーサス』と同じ発想です。

『ハナビ』や『バーサス』がRTだけで評価されているわけではないですが（むしろそれ以外が大きいかな）、ノーマルに付け加えるアイデアは2008年に誕生していたのです。あまりホールで見かけなかったですけど（汗）。

ということで、2008年は2007年までのアイデアを使う形が多かったですかね。個人的に5号機のノーマルの最高傑作と思うのは『桃太郎電鉄』でしょうか。

▲『桃太郎電鉄』（サミー：2008年7月）

やたらとボーナス種別が多かったですが、そのうち半分のボーナスが成立しているとリプレイ確率がアップ。チャンス目となる1枚役奪取も合わせて中押し下段白7狙いばかりしていました。レア小役を取りこぼさないように、それでいてスピードが落ちないように右リールと左リールはタイミング押しを駆使して。

それに加え、ボーナス成立後は逆押しでメイン小役も簡単に奪取できます。どのボーナスから狙うか、どの押し順で狙うか。そんな戦略性も兼ね備えたノーマルの究極形と思っています。出玉率も高かったですし、ボーナス合成確率も軽めでした。

ちなみに、正面パネルで「札幌」と「池袋」となっているのは、当時ハドソン発祥の地が札幌、サミーの本社が池袋にあったからです。今やハドソンはコナミに吸収されましたが。

▲『新世紀エヴァンゲリオン〜約束の時〜』（ビスティ：2008年9月）

9月の『新世紀エヴァンゲリオン〜約束の時〜』と合わせて（ついにエヴァも変則押しできるようになる）、ノーマル打ちは、機種に困らない感じでしたかねえ。ちょっとしたRTというスパイスも欲しければ2007年の機種がありましたし。

ただ、そんなノーマルの天下は長くありませんでした。ついに5号機のシステムの完成形（の一部）が登場します。

★通常時のどこからでも突入するRTの誕生。

2008年までの5号機は、ボーナスを契機に突入するRTを如何に引っ張るかということに主眼が置かれていました。ボーナス成立時のRTを伸ばす『2027』や『リングにかけろ1』といったリプパン方式。『戦国無双』や『キン肉マン』といったボーナス終了後のART機もそうですね。

これ結局のところ、如何にボーナスを引けるかが重要というゲーム性に帰結してしまうんです。ノーマルタイプにせよそうでないにせよ。

▲『忍魂』（大都技研：2009年1月）

そこに登場したのが『忍魂』。通常ゲームからRTモードの推移をしまくって、どのタイミングからもARTに突入させる“ボーナスを引かなくても勝てると思わせる”当時としては斬新なゲーム性でした。

今までの常識にとらわれていたので、ほんっと難儀しましたね。ボーナス終了後から出目とRTモードの推移を確認しまくりました。RTモードを変えるには何かしらの出目が必要なので。

フラグを1つ1つ立てて調べまくりました。それでも答えが出せなかったので、時間をかけた割に普通の記事になってしまいました。会社全体が休みの期間も「サメに餌をあげなければならないので」と広報さんが出社するのを良いことに、押しかけてデータ取りしたり（当時、大都技研には大きな水槽があってサメを飼っていた。すぐ死んでしまうらしい・笑）。

『忍魂』の凄かったところは、RTモードの複雑な推移です。どのタイミングからもARTに突入させられ、どのタイミングでも終わらせることができる。終わらせるタイミングをズラすことによって、ゲーム数上乗せも容易にできたのです。

ただ、いかんせんポップではなかったですかな。これでも十分に時代を変えた名機だと思っていますが、ART小役が押し順タイプならまた全然違ったと思います。「通常ゲームのどこからでも突入するART・ゲーム数上乗せの概念・押し順小役」これらを兼ね備えた『新鬼武者』（ロデオ：2010年3月）の登場でパチスロの総設置台数は再び右肩上がりとなります。その大元のシステムは、2009年までに誕生していたのです。

あ〜1つの答えが出ちゃったよ。そう思うのはもうちょっと後のことです。

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佐々木真: 代表作：パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。