鬼畜

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会社からお金を借りておいて

嫁にはバレたくない。

なんとも都合のいい話だが

前に働いていた同僚の

ある一言を思い出す。

「別で口座を作って給料をそこに振り込んでもらうんだよ」

「そこからいつも嫁が使ってる口座に給料として振り込めば

　使いたい金額差し引くことができるんだよ」


仕事などでは頭が回らないのに

ごまかすためには頭がよく働く。


早速実践すると、意外とバレない。

しかし困ったことも起こる。

休みの日と給料日が重なった場合だ。

その際は

「給料が遅れるから、休みの日には入らない」

そういえば信じてくれた。


給料から差し引いた金額を毎月返済し、

会社から借りた３０万を返済することができた。




「大切な人を傷つける」


そういう代償を払って。





会社からはボーナスが年２回

６月、１２月と支給される。

７月から給料の操作を始めて

その間も

嫁は

「冬にボーナス入ったらこれ欲しいな」

「どこか行きたいよね」

「カードの返済も忘れないようにしないと」

と色々計画を立てていた。

しかし

そのときには

「冬のボーナスで３０万を返済する」という

返済計画がすでに作られていた。

３０万を貸すとなると

やはり会社としても返済してもらわないと困る。

そこで

毎月の給料

ボーナスを含めて

３０万をどう返済するか

計画を立てるように言われる。

月々にいくら

ボーナスで残りを全額返済するという

計画を立てたのだ。



嫁には内緒で。



１２月になり

「ボーナスが支給されない」と告げると

大きく落胆する嫁。

返済した金額で残った

５万円をボーナスとして渡すだけ。

実際は２５万なのに。



さらに鬼畜と化すのはここからである。



年末近くになって

持病の腰痛が悪化した嫁。

日常生活にも支障をきたすため

ほぼ寝たきりで年末を過ごすこととなる。


当時、２９日から正月までは

忙しくなるため全員出勤が当たり前であった。

そんな中

人も足りているから２９日は普通に休んでいいよと

主任から告げられる。

ちょうどその日

近くのホールでライターイベントが行われる。

ライター自身が店長となり

お気に入りの機種や台番に設定を必ず入れる。



もうおわかりだろうか。



嫁が腰痛で動けない中



私はそのイベントに並んでいたのである。



鬼畜と呼ばれて当然である。


しかし

そこは詰めの甘い人間である。


出勤するといって朝２時から家を出て

店に向かい

並び始めるが

何時間待っても誰一人来ない。

６時になって

ある不安がよぎる。

携帯もスマホではないため

ＰＣのページは見ることができない。

そこで近くの漫画喫茶に入り

店のイベントを確認する。

そこにはこう書いてあった。

「イベント前日までに会員になった方のみ

　抽選を受けることができます」


会員・・・・？


前日まで・・・・？



実は前日、下見に行こうか迷っていたが

面倒で行かなかった。

当然

会員には入っていない。

朝２時から寒い中一人で並び

通行人に白い目で見られながら

４時間待ったのは

確認ミスで全て無駄となる。


呆然としたまま漫画喫茶で時間をつぶし

イベントで並んでいる人達を

横目で見ながら通りすぎ




近くの店で４万負けて昼には家に着く。




「早く帰ってきたけど大丈夫？」

そういう嫁に

「早く帰してくれたから」

そういう言い訳しかできないのであった。




そうやってごまかしてきた人生。


その人生に


あることが引き金となって


終焉を迎えることになる。




そして

周りの信頼も

嫁からの信頼も



全て


失うことと


なるのである。




続く

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