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2027年のパチキッズ② とくつみ

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2027年のパチキッズ② とくつみ

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ポリンキーさん
連れ打ち大好きなラッコ。 コラムも漫画も携帯に指でかいてます。 やさしくしてね!
投稿日:2024/11/20 19:44

殺伐とした世の中を少しでも明るく、少しでもみんなで良いものにしていこうという単純な思いつきから始まった、政府主導による地域協力支援特典積立制度、通称「とくつみ」の制度開始から2年がたった。
いわゆる「ボランティア活動」的なものや、献血、地域に貢献する活動など「いいこと」をすると個人に対してポイントが貯まっていき、それが色々な特典や商品に交換できるという制度だ。「徳を積む」という所に略称もかけている。

開始から概ね好調に進んでおり、特典に協力する企業も増え、そこをビジネスチャンスとしてさまざまな業界が進出をしてきている。

パチンコホールのイベントが解禁されてひさしいが、ホールも「とくつみ」に参加をはじめてきており、ポイントを貯めた特典として「設定6変更券」という大昔にあったそれこそスタンプカードを貯めてもらえるシステムが許されたりしていた。

タムラという青年もこの日「とくつみ」で得た設定6券を握りしめ対象のホールの前にたっていた。
とくつみのポイントはさまざまで、地域の清掃に1日参加で1ポイント、学校の行事の設営などで2ポイントなど内容によってポイントも変わってくる。選挙に行ったら1ポイントにしよう、なんて話も出ている。
タムラはそういう地域貢献活動などは苦手で、主に「献血」でポイントを貯めていた。献血はそこまで頻繁にはできないが1回で4ポイント(全血、成分共に)貰える。

設定6券は100ポイントと引き換えできる。タムラは1年以上かけて100ポイントをためようやく引き換えたのだ。

若いときにスマスロに出会い、ハマリ、借金まみれになり職を失ったタムラはその後もフリーターをしながらスロットをする日々が長年続いていた。
久々に得たチャンス。ものにしなければ・・・と設定6なら機械割が130%は超える機械で勝負に出た。

しかし・・・展開に恵まれず、何と大敗。設定は間違いなく6。いままで打ってきた台と明らかに挙動が違う。正直めちゃめちゃ楽しかった。だが伸ばすことができずに敗北・・。

「もう一度・・もう一度打ちたい・・でもまたコツコツ貯めなきゃいけないのか・・。」

普通に設定6をつかめることも勿論あるが、今回のように確定で打てるというのは打つ前から脳汁がでる状況であり、普段低設定ばかり打っているタムラにとっては麻薬のように効いてきたのだ。ああ・・打ちたい・・今すぐ・・明日にでも打ちたい・・

だが100ポイント貯めるにはまた長い年月がかかる・・。そこで高ポイントの活動は何かないか調べてみると、裏掲示板のようなところに気になる書き込みがあった。

ポイントの前借り

つまり活動をあとからして貰ったポイントを返すというものだ。聞いたことがない。そもそも制度として許されるわけがない。

しかしタムラはもともと借金をして身を滅ぼしかけた男。そんなことができるならぜひやってみたい!と思ったのだ。
いろいろな人にweb上で聞いたりしているうちにある所から連絡があった。

その男はある病院とつながりのある男で、政府のこの活動をかなり強くバックアップしている病院の関係者とのことだった。
タムラが献血にいままで貢献をしている実績もデータとして知っており、信頼がおけるのでと話を持ち掛けてきた。

怪しい話ではあるし、身の危険を感じないわけではないが、欲望には抗えず、その男と会うことにした。

「タムラさん・・あなたのデータはすべてこちらに揃っております。まず、ポイントの前渡し制度・・ああ前借りと言われてますが、前渡しと呼んでます。早速ですが、あなた臓器提供のドナー登録はされてませんね?」

来た!!やっぱりだ・・うまい話には裏がある・・これは臓器を売るとかそういうたぐいの話・・

「タムラさん、何か勘違いしてますよね?」

「え?」

「あの・・臓器を売るとかそういう話ではないですよ?」
思いっきりタムラは顔に出していたらしく、男はタムラの考えてることを言い当てた。

「一応免許等もお持ちではないので、調べたのですが、臓器提供意思カードの提供意思によって貰えるポイント数が変わってくるもので・・また、いままでの医療の貢献度にもよって審査が変わってきます。」

貢献度・・自分にはそんなもの皆無だとタムラは思ったのだが、男は続ける。

「タムラさんのように足しげく献血などしてくれている方に、これから先の安定したご協力を確保するためにご提案しているのがこの『前渡し』制度です。制度といってもまだ認可はされておらず、厳密に言うと反則行為ではありますが・・・こちらの病院は政府の活動にかなり貢献をしているので、あくまでテストとしてポイントの付与に権限を持っているのです。タムラさんは非常に貢献度としては高いので、臓器提供意思カードに関しては任意となっております。もし万が一不慮の事故などで亡くなった場合に意思に沿って臓器の提供が行われると家族などにポイントは入りますので・・もちろんこちらの前渡しや生きている人間の臓器提供なんて行ってませんよ(笑)」

私利私欲とはいえ、自分の献血が世の中の役に立っていて、これからも求められているというのは今まで社会のゴミのように自分を思ってきたタムラにとっては救われたような気にもなった。
任意とは言っていたがタムラは臓器提供意思カードのすべてに提供意思があると記入をして登録した。

「そうしましたら、タムラさんにはMAX100ポイントをお渡しできます。そしてその後お渡しした分の献血活動を行ってもらいます。全血の400mlのみになりますが、「後払い」という形でお渡ししたポイント分無償でいただくことになります。」

献血なんてもともと無償で行うものだ。今後はポイントを貰うことができないが、それは社会貢献としてしっかりやっていくしかないな・・ポイントは他の活動で貯めていこう。苦手なボランティア活動でもしてみるかな・・など少し心境の変化もタムラには起きていた。

「それでは手続き完了いたしましたので、明日中にポイントを付与いたします。ありがとうございました。」

一時はどうなることかと思ったが、すんなり帰ることができ、翌日あっさりと100ポイントが付与されていた。


タムラは前回とは違う店で同じ台の設定6券をすぐに使った。今度こそ。

打ち始めてほどなく「前回と同じ感触だ・・」と気づく。これは6だ。間違いない。ただ一つ違うのは今回はやれているということだ。

朝から出っぱなしというのが誇張ではなく本当にその通りで、ギャラリーもでき、店もその様子をYouTubeで流している。ちなみにポイントを使ってでた出玉は政府の保証になるためホールとしては盛り上がるのでありがたいのだ。

楽しい・・・もうこんなに出ることは今後ないだろう。もうスロットはやめて、この資金をもとにまっとうに生きよう。自分だって社会の役に立てるんだから・・。久しぶりに唯一の家族であるおふくろになにか買ってあげるか・・そんなことを考えながら最後は打っていた。

人間一人を更生させることもできるこの制度。なんて素晴らしいんだ。そうだ。この制度にたずさわる仕事がしたい・・あの男に相談しよう・・・。

そのまま閉店を迎え、出玉は約9万枚にも及んだ。人生、やり直そう。そう決意したタムラであった。




前渡しの返却として初めて献血に向かうタムラ。指定された病院へと向かう。聞いていた大きな病院とはちがうこじんまりとした所だ。おそらくこの裏制度を大っぴらにはできないからだろう。新しく買った革靴の音を意気揚々と鳴らしながら病院へ入る。

するとあの男がいた。

「ああ、その節はどうもありがとうございました。今日はなんでまた・・?」

「今日献血に来られると聞きまして、ちょっと確認していなかったことがあったのでついでに来た次第です。あ、後ほどで結構ですのでまずは献血へ・・」

「あの・・僕もあなたに相談したいことが実はあって・・後で時間をもらえますか?」

タムラがそういうと男は黙って微笑み、献血ルームの中へいざなった。


「それでは初めていきます。」
注射器を持った看護師らしき人間が寝ているタムラの元に来た。

次の瞬間、タムラは違和感に襲われる。

注射器をタムラの腕に刺し、何かを注入しているのだ。

「え?これは・・・?」

「麻酔ですよ。」
看護師ではなく、部屋にまだいたあの男が答えた。

「どういうことですか・・?献血するのに麻酔って・・?」

「暴れられると危険なので、しばらく・・・眠っていただこうと思いまして。」

「危険??ただ血液を400ml抜くだけで・・?」

「400ml??あなたにお渡ししたポイントは25回分のポイントですよ?」

「??そうですよ??なので25回こちらに通・・」
タムラの意識が朦朧としてきた。

「誰が分割して返してもらうといいました?『後でポイント分貰います』といいましたよね?今日、25回分貰うんですよ??」

25回ぶ・・ん・・?

400かける25・・いちま・・ん・・・10リットル・・そんなに抜かれたら死・・・

薄れゆく意識の中で男の声が耳元でささやく。

「ああタムラさんそうだ確認しなきゃいけないことがあったんですよ。臓器提供した分のポイントはどなたにお付けしますか??」


「・・・・おふくろ・・・・・」

そういうとタムラは目を閉じ、最後に男の「かしこまりました」という声だけが聞こえてきた。





6年前に書いた第1話↓
https://pachiseven.jp/columns/column_detail/14790#contents

6

ポリンキーさんの

※本記事はユーザー投稿コンテンツです。

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このコラムへのコメント(2 件)

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ギャンtube
投稿日:2024/11/20
初めて金を借りたときの内腑の心地が蘇りました。
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DC兵マツバ
投稿日:2024/11/20
世にも奇妙な物語みたいですねぇこわいこわい

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