さかもと#2

次の日、予備校帰り。さかもとは1000円握りしめ同じパチンコ屋に入っていった。1000円で何ができるというのか。無知とは怖い物である。

相変わらず客はほとんどいない。が、昨日打ったハナビの向かい側の台だけはほとんど埋まっていた。台にはアステカと書いてあった。残りわずかだった空き台のひとつに座った。

台に書いてある説明を読みながら回す。太陽のマークが光ったら当たり。なるほど。突然台の盤面上でルーレットが始まった。でででででででででででででででででででっでっでっでっでっでっでっでっでっでっ　ぺか
ルーレットは7図柄で止まり太陽のマークが光る。当たった。2日連続1000円で当たり。これがきっかけで現在までさかもとはスロットを嗜んでいるが、それは素敵な出会いだったのか悪夢の始まりだったのか20年以上経った今もよくわかっていない。

当たったはいいがスロット歴のべ30分のさかもとは7が揃えられなかった。キョロキョロする。客のジジイどもは見て見ぬ振りだ。仕事行けよキモイな。さかもとの額にはブーメランが刺さっていたが気がついていないようだ。

ガタイのいい男性店員が近くを通りかかる。「すみません」さかもとは店員に声をかけた。

さかもと「これ当たってますよね？」
店員「当たってますね」
さかもと「7揃えてもらえますか？」

男性店員は返事の代わりに軽く微笑むと慣れた手つきでぴっぴっぴっと7を揃えた。

さかもと「えっ　うまっ　まさか7見えるんですか？」
店員「えっ　ははは　すぐ見えるようになりますよ」

店員は体つきからは想像できないような滑らかな動きで手のひらを上に向けて台を指し示すと軽く頭を下げて得意げに仕事に戻っていった。当時はかっこいい〜と思ったが書き起こしてみると若干気持ち悪い気がしなくもない。

ビッグボーナスを消化する。昨日のハナビの黒い図柄（レギュラーボーナス）よりもたくさんメダルが出た。やったあ。ボーナス後、盤面下部でまたルーレットが始まった。ルーレットは緑のランプで止まり、けたたましい音楽と共に台がぴかぴかしている。台の説明書きを読む。CT（チャンスタイム）は201枚以上獲得か150ゲーム消化で終了とかいてある。デカチリというでっかい図柄を狙うとメダルが増えるらしい。

CTについて簡単に説明すると、CTに入るとリール制御が変わり目押しで自由に小役が取れるようになるため、201枚超えないように調整してメダル取りながら150ゲームフルで消化して次の当たりを待つというゲーム性になる。

スロット歴のべ35分のさかもとは考えた。なるほど。150ゲーム経過する前に頑張って201枚取り切れば良いんだな。うーん惜しいぞさかもと。

デカチリというでっかい図柄は2コマぶち抜きの図柄でチェリーの集合体になっているため、左リールに止まると15枚の払い出しがある。スロット歴のべ37分のさかもとにもなんとか狙えるほど見やすく、あっという間に201枚以上獲得して台はしーんと静まりかえった。

周囲の客はCTを速攻でおわらせた初心者をチラチラ見てやべえやつおるでとコソコソ陰口を叩いていた。当時のさかもとは1000円でいっぱいメダル出したすごいやつをうらやましがってるんかなと思っていた模様。

たくさんあるメダルを1枚1枚数えるさかもと。480枚もある......1000円で50枚だから......きゅ、9000円以上ある......！！

さっきの店員を捕まえてこのメダルはどうしたら良いのか聞く。「専用の機械でメダルを数えて出てきたレシートをカウンターに持っていくと謎のプラスチックくれるからそれをあそこにある謎の古物商に渡すとお金くれるで」（当時は店員が謎の古物商へ案内することは合法だった）と教えてくれた。

めちゃくちゃ怪しい謎の古物商は8000円出してきた。なんか減ってない？手数料的なやつかな。まあいいか。わずか数十分で手にした8000円にめちゃくちゃドキドキしながらさかもとは帰宅するのであった。

つづく

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