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血戦!!グランドオープン!!
血戦!!グランドオープン!!
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ダストさん
- 投稿日:2021/05/12 11:01
20年ほど前になるが、友人のKが新小岩に○ハンがオープンするというビッグニュースを仕入れてきた。
我々の間で○ハン、というのは「聖地」を意味する。かのT村ひとし先生もおっしゃっていた。
○ハンはグランドオープン時には千万単位の赤字営業をします、と。
そんな一大イベントが当時我々が住んでいた船橋市の近隣の町で行われる。
行かない理由はなかった。
しかしながら○ハンのグランドオープン…全国から幾多の猛者が集まるであろうことは容易に予想できる。
Kによると、オープンの一週間前、18時より店舗前にて整理券が配られると言う。
問題は何時に行くか、だ。
我々は、とにかく忍耐するということができない人種であった。新台入れ替えの時など、参加はしたがるが並ぶことを嫌い、30分前に店につくと目に入る長蛇の列に気力を失くし、快適な空間ということだけが取り柄の人気のないホールに流れざっくりやられる、というのがいつものパターンだった。
しかしながら、今回は千万単位の赤字を出す(T村談)○ハンが相手だ。整理券を入手した瞬間、黄金卿への道が開かれることが必至であるため、それ相応の労力を費やす価値がある。
俺は言った。
「18時からなら…朝の6時っていうのはどうかな」
12時間並ぶなど、未知の世界だ。しかしKはクビをふりながら俺の胸ぐらを掴んだ。
「おまえ○ハンなめんなよ!そろそろ俺らも本気だそうぜ。確実に整理券もらうために、前日の18時から並ぶぞ!」
目がマジだった。
「共に、神の世界をつくろうぜ!」
そう言われたら思わず頷いてしまいそうなほど、マジな目だった。
確かに、Kの言う通りだ。
我々は、大好きなパチンコにすら本気になれていなかった。ちゃんと並べば勝てた、狙い台が塞がっていたから他の台を打ったら負けた、全台釘が悪かったから負けた…。
絵に描いたような敗者のたわごとを平気で口にしていた。
勝者へのターニングポイントはここなのか。
そう感じた俺は、Kにのった。
「わかった!24時間並ぼう!」
固く握手した我々は遠足気分で24時間並びに必要なものをリストアップしていった。
まずはトイレ。大は食事を我慢するなどして調整できても小24時間はさすがに無理だろう。空のペットボトルを何本か用意しよう。
季節が秋とはいえ夜は冷え込むだろう。毛布と、体を温めるためにウイスキーを持って行こう。もしかしたら前後に並ぶ同志たちと心を通わせることがあるかもしれない。そんな仲間達と乾杯できるように、紙コップも持っていこう。きっと気の利くやつ、と思ってくれる…。
UNOなんかも時間潰しにはなるだろう。
思いついたアイテムを大きめのボストンバックに放り込み、決戦の日、我々は総武線に飛び乗った。
車内では実際に整理券を手にしたとして、何を打つか、で盛り上がった。
パチンコは、源さんやモンスターなどの爆裂機は新規オープン店には導入できないらしい。
メインは恐らく海物語。
ならばスロットだろう。
恐らく全台6でくるはずだ。
もしもスロットがとれなかったとしても、パチンコなら千円40は回してくるだろう…。
「たとえ、空台がホー助くんのみでも喜んでうつぜ!」
Kは鼻息荒く言った。俺も満面の笑みで頷いた。
いざ新小岩につくと、やけに人が多く感じた。
まさかこの人たち全員○ハンに向かうのか?などと、冗談を飛ばしながら店に向かうと…
想像を絶するほどの人だかりがそこにはあった。
「おいおい、整理券配布まであと24時間もあるんだぞ…」
Kは興奮を隠しきれない様子で呟いた。俺も同じ気持ちだった。千万単位の赤字、というのは本当だったのか、と確信した。
まだ列を成す前の、なんとなくここら辺が最後尾、というところに取りついた俺たちはアバウトに人数を数えた。300はかたい。さらに俺たちの後ろにも続々と人が増えている。このままここでやり過ごせばなんとか台にあぶれることはなさそうだ。
列には色んな人種がいた。メガネのオタク、大学生風、カップル、北斗の拳のジードのようないでたちの奴ら…姿形は違えど、誰もが物凄い熱気を放っていた。このエネルギーが一つになれば明治維新すら容易いのでは、と思えるほどだった。
俺は、同じ戦いを挑む志士たちに親近感がわいた。夜が更けてくればバックの中のウイスキーが効果を発揮するだろう。もしかしたら、新しい国が誕生する瞬間に立ち会えるかもしれない。
胸を踊らせながら数時間立ち尽くしていると、周りの会話から台数は約600強、との情報を得ることができた。
Kの言う通り24時間前にきてよかった…。まだまだ人は増えているし、朝の6時に来ていたら行列はとっくに600を超していただろう。勝利を確信し、Kと無言でハイタッチをした。
それからしばらく経った頃、店員が姿を見せた。
ようやく奴の指示のもと、整列が始まるのか…。しかし、この群衆が店員の言うことを素直に聞くはずがない。
整列時の混乱に乗じて少しでも前にいこう。俺はハンターのような目つきになり、身構えた。すると店員は、拡声器を片手に驚くべき発言をした。
「近隣の迷惑になるので、整列をお願いします。700人ほどいらっしゃるので、整列順を、いまから抽選で決めます。」
怒号が響き渡った。俺たちもなめんな、と力の限り叫んだ。
それはそうだ。この並んだ数時間は無駄だったというのか。
特にジードの方々は怒り心頭だった。
それでも有無を言わせず始まった抽選に、黙るしかなかった。心の中で、ジード!もっとがんばれよ!!と思ったが、ジードもここで暴れて抽選を受けられなかったらかなわん、と思ったのか大人しく従っていた。
そして、いよいよ我々の番が回ってきた。
「仕方ねえ、いくしかねえよ。外れんのは100人弱だ。6/7の確変だったら余裕だろ?」
そういってKは力強く抽選箱に手を放り込んだ。
「680!」
「馬鹿野郎!なら俺一人で並んでやるぜ!」
「685!」
こうして抽選にあぶれた俺たちは、駅とは逆の方向にとぼとぼ歩き始めた。
「あてのない、旅にでよう…」
そう言った割にはすぐに江戸川に辿り着き、そこを終着点とし、河川敷でウイスキーを飲み始めた。悲しすぎて涙も出なかった。
「終わっちまったな…」
「まあよお、抽選受けてたところでこれから20時間並ぶんだぜ?それで、当日負けてみ?そっちの方が辛いだろ!」
負け惜しみを肴にウイスキーを飲み干し、気を失うように眠りについた。気がつくと朝だった。○ハンの前を通ると泣いてしまいそうなので、遠回りして、新小岩駅へ向かった。その後、帰るに帰れず、駅周辺の名もなきホールで現金機のバトルヒーローを打ち、再び気を失うように負けた。
これが、俺たちのグランドオープンバトルだ。
その後、悲しい思い出が蘇りそうで○ハン新小岩には数ヶ月いけなかったが、電車の中吊り広告で大好きなルパンXが新台導入とあったので、再びKを伴い新小岩を訪れた。
結果、二人ともしょぼ負けだったと記憶している。しかし、「○ハンの新しい店」で打つ、ということで既に期待値は稼いでいる、と笑いあった。見事なまでのT村信者ぶりだった。
しかしながら、ある時ふと、10000000÷600を計算してみた。
16666…
良台のホースケ君ならもっと勝てるのでは、と思った。
注…当時の記憶を掘り起こして書いているので、時間など微妙に違うかもしれませんが、内容はノンフィクションです。
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ダストさんの
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このコラムへのコメント(12 件)
読んで頂いてありがとうございます!
当時のパチンコ話だけで、焼酎1ボトルいけますね!
北海道は谷村に騙されてベガスベガ◯へ3回逝きました、全部負けました
自分も若かりし頃、北海道でブリザードの中、2時間くらい並んで死にかけました。
ほんと、アホやったなぁ…(遠い目)
読んで頂いてありがとうございます!
もうネタが…ありません…
読んで頂いてありがとうございます!
あの日の悲しみを文章に詰め込みました!
ブラックニッカを飲むと、新小岩を思い出します…
メチャメチャ面白かったです。
読んで頂いてありがとうございます!
いや、彼らの明らかに間違った方向に向いている情熱のベクトルを正しい向きに導けばあるいは…笑
読んで頂いてありがとうございます!
ほんと、腰抜けが!と思いました。
しかもジード、たしか良番ひいてました笑
>これが、俺たちのグランドオープンバトルだ。
ここが特に好きです笑
ジードが頑張ってくれれば・・・