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1,授乳パラドックス
1,授乳パラドックス
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くりくり。さん
マンガ読むのも描くのも好き。 下ネタはパチ7では封印を誓います。 面白かった、コメントが付くたび小躍りします。 無理しない程度に更新頑張ります。 - 投稿日:2021/05/13 00:14
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この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。
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テレビを見ている。
一度では乾かしきれなかった髪の毛にバスタオルを掛けたまま。
テレビを見ている。
友達が買ってくれた柑橘系のハンドクリームを塗りながら。
テレビを見ている。
出し過ぎたハンドクリームを足まで延ばしながら。
テレビを見ている。
足のネイルが半分くらい剥げていることに気づかないふりをして。
テレビを見ている。
別に内容に感動するでも、楽しんでもいない。
テレビを見ている。
今日のニュースを教えてくれるその番組は
「NEWS ZERO」
果たしてニュースが有るのか、無いのか
良く分からない番組名だ。
名前が変わらないってことは、
そんなツッコミをするのは、私くらいなものなのだろう。
キャスターの有働さんがお別れの挨拶をしている。
元嵐の桜井君も横に居る。
元嵐、
ヤマアラシみたいな。
元あらし、
ネット黎明期にイワしてましたわ的な。
藤岡 弘、
ライダーは自分で演じます的な。
テレビではエンディング
米津玄師の曲が流れる。
もう少しで、今日が終わる。
少なくとも、私に関係するニュースは無かったようだ。
NEWS ZERO
ニュース、ゼロ
あるわけがない。
だって私は社会に関わっていないのだから。
私は社会に適合できなくなっているのだから。
そういえば、NEWSもジャニーズだ。
半分以上欠けたけど。
まるで私みたいだな。
結構大事な部分が欠けている気がする。
NEWSも、私も。
勝手にYouTubeとか始めるなよ、元私の半身。
そんなことをうだうだ考えていたら、時刻は0時10分。
ただ、時間を知ったところで、私は動かない。
私は時間に縛られないのだから。
カッコよく言ってみたが、なんのことはない。
私は浮いた歯車だ。
見掛け倒しの歯車だ。
社会、世界の一連の動きに
私は加わることができなくなっている。
会社員は会社の歯車とはよく言ったものである。
歯車として、一生懸命がんばっても
無理に動かされたり、手入れをしてくれないと
使い物にならなくなる。
そうすると、会社という機械から外されて、
歯車は形こそ保っているものの、ガラクタになってしまう。
とどのつまり、
私はガラクタだ。
仕事をしていない。
役割を与えられていない。
ブーーーッ ブーーーッ
ビクッ
スマホのバイブが鳴った。
ホントに怖いからやめて欲しい。
着信にも恐怖を抱く様になってしまった。
ガラクタなんだから無感になれればいいのに。
音で私を恐怖のどん底に落とした犯人は
ドコモからのお知らせ。
通信料が次のステップに移行したらしい。
あんたのせいで
ハラハラして
もうたわ
縦読みだよ、まるで意味のない。
つーかー、ドコモからイドーしてやろうか
死語だよ、すでに会社もない。
0時30分
チョベリバ
死ぬほどくだらない時間を過ごした。
「ははっ」
かわいた笑い声が、のどの奥から転がってきた。
下駄を転がすような笑い声だった。
なんならちょっと吐きそう。
よし、寝よう。
明日もきっと何もないけれど。
ベッドに横たわり、スマホを充電する。
どこに行くわけでもないのに、
どこに行ったわけでもないのに、
残量が42%となったスマホに充電器を差した。
どこに行かなくたって、なにもしなくたって
お腹が空く自分みたいで愛おしいなんて思った。
授乳している母親はこんな気持ちなんだろうか。
100%違うな。うん。
授乳するってなんか、気持ち悪いな。
いや、別に変態な意味ではなく。
漢字には「受」と入っているのに、
能動的だなんて。
乳は吸われているのに、吸わせているのか。
なんだかすわりが悪い。
充電されて、画面の光を一瞬強めたスマホにイラっとして目をつむる。
調子に乗るな。
明日がまたやってくる。虚無な明日がやってくる。
私にもかつて楽しみな明日はあったはずなのに。
終わって欲しくない今日があったはずなのに。
今日はなにもなかった。
今日もなにもなかった。
今日のニュースは
ゴミを出し忘れたことと、
私が今日でちょうど35年生ききったということだ。
ピンポーン
呼び鈴で目を覚ます。
目覚ましなんてずっとセットしていない。
起きた時に起きるのが、今の私の生活スタイル。
カーテンからこぼれた光を見るに、
また朝が来たらしい。
今日は起こされた。
受動態
あれなんだっけ
昨日の夜寝る前に…
ああ、授乳。
授乳パラドックス。
別に思い出したくもなかったが。
ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
こういう時は出ないようにしていたが、
運送会社も不在で何度も行くのが大変困ると聞いてから
インターホンのカメラは見るようになった。
自分で何か買う程、余裕のある暮らしはしていないので
親が何か送り付けて来たか、
なにかの勧誘だろう。
今の心は大変に落ち込んでいるので、
勧誘されたら、入信してしまいそうだ。
インターホンの通話を押そうとした時
ドンドンドン!
ドアを叩かれた。
およそノックとは呼べない強さだった。
えっ
怖いんですけど。
借金取り?
いやいや、借金はしてない
てか令和だぞ
こんな時代錯誤な。
もしかして私が引きこもっているうちに
世界が変わってしまった?
漂流賃貸?
どうやら私のワンルームは過去に飛ばされて
「お金がない!」の時代まで戻ってしまったのか?
家族にーはーおどかさーれー♪
親友にーののしらーれー♪
OVER THE TROUBLE
色んなドラマが混ざっているぞ
ずっちーなぁ
言ってみたかっただけ。
しばらく固まっていると
ドン!ドン!ドン! ドン! ドン! ドンドン! ドドッドーン!
おや?
驚安の殿堂か?
ドアの向こうから歌声が聞こえた
『ボリューム満点激安ジャングルー』
「ジャングルだぁー」
思わず合いの手を入れてしまった。
『居るなら開けろや』
そこに居たのはドンペンではなく、
ドンペンのフォルムに似たヤンママだった。
小学校からの友達。
名前はオオシマ。
ガチャ。
促されるままにドアを少し開ける。
「どしたん?」
久々に出した私の声に、私の耳も喉も驚いた。
『誕生日、おめでと』
起きてからそんなに経っていないのと、
旧友の強襲によって理解できなかった。
『あれ?あんた誕生日だったよね?』
確認された。
そう、そうだよ。
私今日誕生日だ。
え?誕生日の日に友達が凸ってくるって普通?
誕生日の人は待ってるべきなの?
あ、でも祝ってもらう
受動態
自分が主役なのに、他人任せ
授乳パラドックス。
『とりあえず上がっていい?』
オオシマは私が答える前にドカドカ上がってきた。
ワンルームしかない私の部屋を見まわし、
昨日のバスタオルを拾い、
ハンドクリームに蓋をして
飲みかけのお茶を流しに捨てた。
え、なに?マルサ?
家宅捜索?
『保護観察です。』
いや、意味わかんない
「あの、オオシマさん?私は犯罪者ではありませんが」
オオシマは手を止めると、私に向き直り話し始めた。
『ヤマモトさん、あなたは会社を辞める前、
私に何度も相談の電話をしてきました。
私はちゃんと聞いてあげていたと思います。』
うん、事実です。
『ですが、辞めた際にはラインで一言
“退社しました”だけで
それ以降、連絡もなし。
…実家に連絡もしてないんでしょ。
おばさん、何か知らないかって泣きながら電話してきたよ』
うっ
『あなたの罪は、連絡しなかった罪です。』
いや、もうちょい捻れよ。罪名。
それで保護観察がついたというわけか。
『それで私が来ました。
まぁ、あんたのことはあんた以上に知ってるから
予想通りって感じだけど。』
何が分かるの!って言いかけたけど、
ヤメておく。
こいつは全部わかってる。
ムカつくくらい。
ムカついたから言い返してやった。
「あんたこそ、子供はどうした」
『今は小学校行ってる。旦那もテレワークになってるから
今日多少遅くなっても平気。』
だよな。そりゃそうだ。
そんなこともできないやつが、人の心配なんてできない。
『とりあえず私が片付けてやるから、陽の光浴びて散歩してこい。』
そ、そんな。獅子の子落としじゃあるまいし。
こわいです。
「いやさすがに悪いし、部屋見られるのは恥ずかしいって」
『ハイハイ、出た出た。外行きたくないだけなんでしょ』
ほら、オミトオシ。うん。
恥ずかしいわけないじゃん、
座薬打ち合った仲よ。
『パチでも打ってこい。』
オオシマは、バン!とテーブルに2万円を置いた
『おばさんから二人でおいしいもの食べてって預かってきた
私は受け取れないから、あんたに渡しとく。』
目の前に置かれた2万円。
正直、この2万が無くてもしばらくは生きていける。
でもオオシマが持って帰れるはずもなく。
とりあえず受け取り、棚にしまった。
言われるがまま、着替え、
出かける準備をする。
といってもセーターにジーパン、スニーカー
キャップを被ってマスクして完成。
さっきオオシマをヤンママといって申し訳なくなった。
立派じゃないか。
オオシマは『あんたさぁ』と声をかけてきたが、
私は聞こえないふりをすると、次の言葉をひっこめた。
会社を辞めて2か月。
何度目かの外出。
買い物以外での不要不急の外出は
在職中でもあっただろうか?
辞める前の最後の一年間は
ほとんど自由が無かった。
そう考えると、本当に久々の不要不急の外出だ。
パチンコ、か
いつ以来行ってないんだろう。
よく考えたら、一時期毎日のようにパチンコしていた私が
忙しくなって、行かなくなって。
今、なんにもすることがないのに、
パチンコに行くことが頭になかった。
そうか、パチンコ。
いい思い出も、苦い思い出も
酸いも甘いも
思い出されていく。
準備が終わったのにも関わらず、
一向に出ていかない私に
オオシマは追い出すように蹴る振りをする。
『早く出てけ!邪魔!』
二発当たった。
ガチャ、
さて。
締め出“”され”、追い出”された”私は
心のどこかで
パチンコに“行きたい”なと思い始めていた。
受動的で能動的
矛盾
授乳パラドックス。
4
くりくり。さんの
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