パチンコ台の反射

養分の話なんですがね、世間から見たらそれはまぁ立派なパチンコ依存症の、まぁ仮にM君としておきましょうかね。

その日も彼は、いつものように仕事を終えて、パチンコ屋に向かったんですね。よーし今日こそはいっぱい勝つぞーなんて意気込んでね。

パチンコ屋に着いて、彼はひとまず店内をうろうろうろうろしてたんですよ。右打ちランプ点いてないかなー、点いてないなーって。

そんな風に歩いてると一台気になる台があったんですよ。上の台の名前の方に視線をやると、リング、新台と書かれてる。

こりゃあ新台ならたくさん出てもおかしくねぇなぁと、いつもの軽いノリでその台に座ったんですね。2台並んでる内の左の方に。

打ち出すとこれがまたよく回る。やっぱ新台はいい調整してるぞ、と彼は喜んでその台を当たるまで回していたんですね。

しかしこれがまた当たらない。回せども回せども当たらない。当たりそうな演出も全然なくてですね。彼もちょっとスマートフォンをいじったりしてたんですよ。

スマートフォンに夢中になってて気がついてなかったんですが、いつの間にか右の同じ台に、ご年配の女性が座っていたんです。

相変わらず熱い演出もないのでスマートフォンを見ていたんですが、何かやたらと見られている気がして、スマートフォンを仕舞って顔を上げたんですね。

すると、隣の女性がチラチラチラチラと見ている。彼の台は別に演出が起きてる訳でもなく、女性と似たような状態だったんですね。

何だ、変な人だなぁ、俺の台だけBSが映るとかそういうのないぞ、なんて心の中で軽口を叩きながらそのまま打ってたんです。なにせよく回りますから、横にちょっとおかしな人がいても辞める気なんて起きなかったんですね。

しばらくすると、いよいよ熱い演出が起きたんですよ。液晶がビカビカーッと光って騒々しく煽り始めました。

よぉし、当たれ！なんて念じながら体を前に乗り出すと、視界の隅に隣の女性が見えたんですね。女性はもうこちら側に体を傾けて、凝視していたんです。

しかし台の方も煽りの真っ最中でしたので、そちらに集中していましたら、あっさり外れてしまった。女性もいつの間にか、いなくなっていました。

なんだこんな熱いのあっさり外すのか、と彼は外れた瞬間を写真に撮ったそうなんですね。それで結局その日は負けて、家路に着いた。

夜になって彼は、SNSに今日撮った写真をアップしようと見返してたんですよ。そこで彼は気付いたそうなんです。

横の女性は、彼の台の液晶が気になって見てたんじゃなかった、液晶に反射して映る、年中負け犬の、彼の必死の形相があまりにもブサイクすぎてそれを見ていたんだと…。

−5000円

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