SENZIN研究『ジンクス』：4・9SENZIN

タイルまん SENZIN伝

よくプロスポーツ界では『2年目のジンクス』という言葉を使用する。

これはルーキーイヤー、つまり1年目で活躍した選手は様々な理由から2年目は活躍出来ない事が多いという。恋愛においては『3年目のジンクス』というものが存在する。こちらは付き合って3年目のカップルは倦怠期に突入しやすく別れやすいというもの。脳内でドキドキや高揚感をもたらす奴が分泌されなくなるとか…。詳しく知りたければ勝手に調べていただきたい。

世の中には他にもジンクスと呼ばれるものは山ほどある。日本では良い事にも悪い事にもジンクスという言葉を使用されるが、アメリカなどでは悪い出来事に使用される。私の用いるジンクスの意味は後者に当てはまる。それを踏まえて読んでいただきたい。

パチンコやパチスロを遊技する方々も個々でジンクスというものを持ち合わせているのではないだろうか？例えば私の中にあるジンクス。

『プレミア演出を見た直後に連チャンが終わる』
『カマを掘られた日は何をやっても上手くいかない』

プレミア演出、例えばジャグラーで1G連、ゾロ目でBIGを引いた後は嫌な予感しかしない。自分の経験則からプレミア演出後は大ハマりを喰らう確率が高いからである。カマを掘られた日もそう。この台は駄目だと自分が見切りをつけた台を他の人が打ち、その台でドル箱タワーを築かれた日はどんなに激アツ演出がきても上手くいかない事が多い。人それぞれ自分だけのジンクスがある筈である。

ある日の事。私は通称『白海』と呼ばれる海物語INハワイの甘デジに座った。隣には帽子を被った小柄な女性SENZIN。このSENZIN……横をキョロキョロしたり後ろを振り向いたりと、まるでゴルゴ13に命でも狙われているかのように落ち着きがない。

リーチがかかると台枠を摩る。新しいセンサー機能を搭載したのかと錯覚する程、台枠を丁寧に摩る。勿論その様なセンサーは搭載されていない。リーチが外れ、私の方をジーッと見てくる。視線に耐えきれずSENZINの方を見ると「おかしいよねーー！？」第一声がこれである。

何がおかしいのか……。私の中ではSENZINの第一声がおかしい。ん？と首を傾げるとSENZINは私のデータランプとSENZINの打っているデータランプを交互に指差した。

「私とあんたの台、200以上回ってるのに当たらないのよ！？おかしいわ！」

確かに1/89のスペックだが、200以上ハマる事はよくある。

「さっきもね！100回転から打って500回転までハマって当たったのに単発よ!?おかしいわよね!?」

500はハマり過ぎである。何より1/89で何故そこまで粘ったのか謎である。

「あんたの今打っている台はポンポン当たってたのよ。なのに今になって200回も越えちゃって。この店は何かやってるんじゃないの!?」 SENZIN特有の言い掛かりである。

「私とあんたの台……終わってるな！！」

勝手に終わらせないでいただきたい。

▲なぜ私はこんなにもSENZINに絡まれるのか

投資はどの位か聞いてみると「この台だけで5万よ！4と9！」エグい投資だった。

なるほど。それはイライラしても仕方ないか。 ……ん？4と9？

「あ！また！4と9!!」先程から4と9と叫びながら虫を追い払う様なシッシという手の仕草をしているが……なんなのだ？私は尋ねた。

「4と9が画面に止まると当たらない!!」どんなジンクスだ!! このSENZINは鮫と蟹に家族でも奪われたのだろうか？ 4図柄と9図柄にそれ程の嫌悪感を抱いていた。

私の台にも4図柄と9図柄が止まった。「あんた！そんなの早く追っ払いなさい！」私の台にもシッシとやってくる。

全力の苦笑いしか出来なかった。ここまで鮫と蟹を嫌う理由が知りたくなったので聞くと「4と9はね！不吉なの！昔っから不吉な数字って言われてんの！だから4と9が多く止まる台は駄目！4と9に気をつけなさい！」

どう気をつければいいのだろうか？

確かに4は死、9は苦と読めるから不吉だなんて言われる。現にホテルなどでも4の付く部屋が存在しない所もある。

4月は嫌いかと聞いてみた。

「桜が咲くし暖かくなるから好き」 9月は？

「孫の誕生日」

暦上の数字は関係ないらしい。ここまで4と9を忌み嫌っているなら、いっそ嫌いと言って欲しかった。

9月に関しては好き嫌いの質問の答えになっていない。そして何故この隣の若者はいきなり暦の話をしてきたのか？という疑問丸出しの顔をされたのが悲しかった。

私は自分で振りまいた若干の気まずさを挽回しようとパチンコは好きかと尋ねた。

「嫌いっ！！」早かった。

念の為、もう一度尋ねた。

「嫌いっ！！」

取りつく島がない。貴方は何故今ここにいるのだ……。パニックを起こしそうになった。

「私ね、普段パチンコやらないのよ。」ほう。

「歯医者や病院の帰りとか、遠出した時しかやらないのよ。家の近所にも無いし。今日も歯医者だったから寄っただけ。病院から帰る途中でパチンコやると勝てるのよ！！」お母さん5万も負けてるじゃないですか！ついつい言ってしまった。

「そう！だから嫌いなのっ！」 SENZINは私の肩をバシバシ叩いて笑った。

「なんなのさ！たまには息抜きしなきゃボケるからと思ってやったら大負け！音、うるさいし！だから嫌いなの！でも本当にいつも病院帰りは勝ってるのよ！でも、あまりやらないから楽しみ方も分かりゃしない！」今度は怒り出した。情緒が不安定である。

そもそもの話だが、嫌いなら5万も使わないと考える。もしかしたらこのSENZINはあまりこの機種のことを知らないのかもしれない。私も海物語はそこまで詳しくは無いが、簡単に演出を説明した。説明している最中にSENZINの台はマリンちゃんのSPリーチに発展。

「この女が出てきてもサッパリだよ！」

知っているし、やはりSENZINはマリンちゃんに手厳しい。あっさりハズレると「アレ、何しに来たのさ！」最早マリンちゃんをアレ呼ばわりだ。

魚群が来るとチャンスと教えると、

「小魚でしょ！？2回来たわよ！ハズレたわよ！」

これも知っていたし、私は先程から楽しみ方を説明しているのだが、逆効果でSENZINの怒りのボルテージを上げているだけなのだろうか？当たる所を見せてあげられたら……。そんな事を思っていると、なんと私の台に魚群が！更に4図柄！ SENZINの4図柄への偏見を取り除く大チャンスでもある！

当たる瞬間を目にして貰いたくて、急いで隣のSENZINに教える。固唾を飲み、祈る。当たれ……当たってくれ……！ギュイギュイギュイと音を鳴らし、ゆっくりと4図柄である鮫が並びかける。ペコッ！気の抜ける図柄の停止音が鳴り響く。真ん中の鮫は両サイドの鮫より1つ頭飛び抜けゴールイン。競馬じゃないんだよっ!! 並びなさいよっ！

「ほらね！？4は駄目なんだよ！」 SENZINのジンクス恐るべし……！

「やっぱり……私とあんたの台……終わってるな！」決め台詞みたいに使わないでいただきたい。

しかしSENZINの言葉にも一理ある。台が終わっているというより、今日は何をやっても駄目な気がしたのだ。SENZINに止める事を伝えると「その方がいいね。終わってるから。」せめて台が終わってると言ってほしかった。

「私も止めるよ。終わってるから。」何故ここに来て終わってる発言を連発してくるのか？一礼して私はその場を離れた。その後も私は1時間程、ホールをウロウロしていた。もうあのSENZINは帰ったのだろうか？

▲おい……帰りなさいって。

まだ打っていた。

『4図柄と9図柄は不吉』だ、当たらないというジンクスを持ちながら『病院帰りは勝てる！』というゲン担ぎをしていたSENZIN。

止めると言っていたくせに粘っている所を目撃した時、私はジンクスよりゲン担ぎを信じているんだなと感じた。

人それぞれジンクスはある。私にもある。しかし……ネガティブ面ばかりに気を取られず、ポジティブな面を信じていく方が人生を楽しく、長く歩いていけるのかもしれない。私は海物語を打つSENZINの背中を遠くから見ながらそう思った。

翌日。前日SENZINが打っていた台をチェックすると400回転ハマって単発で終わっていた。

ゲン担ぎを信じていくのもいいが、ジンクスを信じて危機回避していく事も人生の中では大切である。

以上！今日の講義はここまで！解散！