SENZIN伝：第6話「転生先人」

タイルまん SENZIN伝

いつもホールに行くといる人。

皆さんにも経験あるのでは無いだろうか？俺がよく行くホールにもいる。

豪腕先輩と栗山さん曰くあの人は『毎日北斗転生』を打っている。

通称転生おじさん。

おじさんと言っても見るからに70代後半の先人である。

少し前までは島単位で転生があった。

それが全国バジリスク絆はいいぞ運動で3台に減り、とうとうバラエティーコーナーに1台のみとなってしまった。

転生おじさんは雨にも負けず風にも負けずホールに来て転生を打っていた。

何故そこまでして転生を打ちたいのか？北斗が好きなのか？

それは無いだろう。強敵、修羅と見向きもしない。

分かりやすい機種でもない…と個人的には思う。

いつも不思議に思っていた。

ある日、夜勤明けで行くとやはり転生おじさんは黙々と転生を打っていた。

見た感じは某ボートレース漫画の主人公の父親に似ている。

主人公の父親は豆腐屋で職人気質でぶっきらぼうな感じも何処と無く似ている。

転生のみをひたすら回し続けるおじさん。

好き嫌いではなく、ここまで来ると職人だ。

楽しいから打っている感じがしない。

ただ当たり前に目の前の仕事を文句言わずにこなしている風にすら見える。

何年も打ち込まれた台はバックライトが切れて、液晶も少し汚い。

転生おじさんはそんな事関係無しにひたすら回し続ける。

そしてたまに台の脇をさすってあげている。

その姿は台を労う様にも…台と語っている様にも見える。

よぉ…おめぇさん今日の調子はどんなもんだい？

昨日は全然駄目だったなぁ…単発ばっかりだったじゃねぇか…昔の元気はどこに行ったんだ？

まぁ俺も最近は腰が痛くてなぁ…それだけお互い歳食っちまったって事なのかね？

昔はおめぇさんもライト切れてなかったもんな…それにこんな薄汚れちまって。

ちゃんとメンテナンスされてんのかい？

こんなに隅っこに追いやられちまってなぁ…

昔は沢山仲間がいて店のド真ん中にデーンと構えてたってのに。

それが今じゃ店の端におめぇさんだけがポツンと残っちまった。

これも時代なのかね？俺も同じ様なもんだ。そうじゃなきゃ毎日おめぇさんに会いに来ねえや。

そう語り合っている様に見える。俺は隣の台に座り打ち始めた。

ふと転生おじさんのあべしを見た。

580あべし。

256はとっくに、555ゾーンも抜けている。

ゾーンなど関係無しにただひたすら回し続けている。

同じ常連の先人が転生おじさんに話しかけてきた。

常連「またこれ打ってんのか！」

転生「駄目だこれ。」

常連「止めればいーだろ！」

転生「入ったら簡単に出るのさ！」

いや簡単には出ねえよ！！会話にツッコミかけたが俺は抑えた。

確かに馬鹿みたいに玉が集まってポンポン勝っていっちゃう時はある。

逆に玉が何個あろうがケンちゃんリンチ状態になる事もある。

転生「要はここだ」

バンバン！と自分の左腕を叩いて笑っている。

自分のヒキ次第って言いたいのね。

常連「でも昨日負けてたろ？」

転生「うるせえやい！！」

負けたのかよ！！

いや…もっと言うと…左手1回も使ってねーじゃん！！

レバーもボタンストップも全部右手でやってんじゃん！

小さな事だよ？小さな事だけどさ！それなら右腕を叩いてくれよ！！

常連の先人が帰り、少しした後で転生おじさんは天破に入った。

そして…スルー。

まぁそんなもんだよね。その後も天破に入りスルー。

スルー。

スルー。

あっという間に天井間近。

しかしそこは転生おじさん。職人はそんな事では動じ……ていた。

無表情で黙々と回していた頃が本当にあったのか？と問いたくなる程のご立腹感を前面に出されていらっしゃる。

不動明王の化身なのかな？ミスター不動さんかな？ビックリする位険しい表情なんだけど…。

いやもう転生君もさ、当たってやれって(笑)

そして1200あべしを貯めた所で天破…。

あべしチャレンジのお時間がやって参りました。

もう当てて！

隣で祈る俺。

さっきまで長押しだったのに気合いを入れて連打する転生おじさん。

ダンダンダンダンダンダン！！

えらい強打だな(笑)

ババババババッ！

どんどん減っていくあべし。

どんどん連打が強くなっていく転生おじさん。

ダンダンダンダンダンダン！！！

ババババババババババババッ！

……ぶぅーん…。

ドゴンッ！！

ドゴン！？

隣にも伝わる衝撃音。

転生おじさんは神の左手でリール部分にストレートパンチを容赦なく繰り出していた。

えええぇーーー！！

下パネルではなくリール部分に！？

さっきまで愛でていた台に渾身のストレートお見舞いしたぞ！

殴り合うストーリーだけど本当に殴るなよ！！

というか、左腕をパンパンと叩いたのはヒキじゃなく腕力自慢だったって事なの！？

パチスロ腕力いらないよ！使う場面ないよ！！

フー…フー…。

相当頭に来ていたんだろう。

転生おじさんの荒い鼻息がこちらにも分かる。

手を出したら駄目だっておじさん…。

フー…フー…。

おじさん息整えなよ(笑)

フー…フー…。

……。

おじさん…左手プルプルいってるけど…。

それ怒りじゃなく…痛いんでしょ？折れたんじゃね？

さっきからフーフー言ってるのも…痛いからでしょ？

転生おじさんは北斗神拳の使い手にはなれなかった。

そしてようやく当たった頃には…おじさんの左手は腫れていた…。

泣きっ面に蜂とは正にこの事。

単発で終わった。

デデデデーデーデーン♪ バシュンッ！

両手で台を掴みうな垂れる転生おじさん。

その姿は正にサウザーの最期。

お…お師さん…もう1度…ぬくもりを…。

俺から言わせれば

お…おじさん…もう2度と…台パンやめて…！

転生おじさんはその日トボトボと帰っていった。

数日後…仕事帰りに同じホールに行くと転生おじさんはいた。

しかし違和感を感じた。

新鬼武者に座っていたのだ。

え？転生は？

転生を見ると別な若者が座っている。

そして1番驚いたのは…。

新鬼武者で19000枚出していた…。

……。

出し過ぎだわ！！

2016年も年の瀬。転生おじさんは年の瀬に他の機種の楽しさを覚えたみたいだった。

左手に包帯を巻いて…。

と、いう訳で2016年ありがとうございました。

2017年も打ち切りにならない限り！先人達と戯れていきます！

おい編集長！打ち切りにするんじゃないぞ！！

それでは皆様！良いお年を！！