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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2023.12.05
成人男性をア〇顔にするパチスロ機~5号機ゲッターマウス③~
▲5号機「ゲッターマウス」(アクロス)
前回のあらすじ
後輩の誌上プロ・Kとともに、遠隔疑惑がある某店のリニューアルオープンへと向かったラッシー。狙うは、この日が導入初日の5号機・ゲッターマウス。すると、ゲッタマのシマにライバル誌の先輩ライター・M氏も現れ、偶然にも二誌によるデータ採りのような展開に! 緊張しながらも新たな打ち方を探るラッシーは、ついにそれらしい打ち方に気付くが…!?
前回(②)はこちら
K「何が〝堅くいくならノーマル〟ですか。クッソ負けたじゃないですか!」
――「いや~、負けたな。完膚なきまでに」
Mさん「ゲッタマ全台ブッコ抜きにきてたね」
K「全員ハデにやられましたね~」
午後8時――
俺ら4人はホール近くの中華居酒屋にいた。導入初日のゲッタマは明らかな回収モードで、閉店を待つまでもなく撤退。リニューアル初日だけに移動できる機種も無く、早めに切り上げて飲みにきたというわけだ。
Mさん「少しぐらい使ってくれてもいいのにな~」
――「ホントっスね。AT機はどうだった?」
K「クッソ出てましたね。特に絆とモンハン月下が」
Mさん「まあ、僕らは抽選の時点で負けてたわけですよ」
――「そうですね。どうせ入場早くてもゲッタマ行ってましたが」
Mさん「ハハ、僕もそうだけど」
導入初日にアタックし、移動もできず大爆死。機種ものライターをしていれば、ごくごく当たり前の日常だ。新装初日のデータ採りで優先すべきは、いかに簡単に台を確保できるか。あえて不人気店を選ぶため、負けやすいのも必定と言える。しかし…
――「リニューアル初日ならワンチャンあるかと思いましたがね」
Mさん「ふふ。ホール側も打ち手の思考くらい読んでるわけですよ」
K「まんまとやられましたね」
Mさん「まあ、夢を買ったと思えばね」
俺の実戦結果は-36,000円。たしかに結果だけを見れば惨敗だが〝一定の収穫〟があったため、そこまで大きな悔しさはなかった。強いて悔いが残った点を挙げるなら、ボーナスが当らなさすぎてリーチ目のサンプルが採れなかったことくらいだろう。
ゲッタマの本質。
6時間弱という短い実戦ながら、ゲッタマのゲーム性の〝本質〟には触れられたように思う。
たしかに一見では小難しい。ハズレ時の左リールの停止形が1コマ単位で変わるため、無意味にスベったように感じる。払い出し1枚のスイカも、毎度フォローしなければならないように見える。
しかし、それは表面的な印象にすぎない。
実際は面倒な小役狙いも不要で、サクサクとプレイできる設計になっている。スイカを取りこぼしても1枚役が代用となるため、ほとんどの場合は損をしない。そのため、目押しが必要となるケースはハナビの通常時と比べても少ない。
俺よりスロ歴もライター歴も長いMさんのことだ。きっとあの短い実戦時間でも、俺と同等か、それ以上に〝掴んで〟いるハズ…。
――「どうでした? ゲッタマは」
さすがに訊かずにはいられなかった。
Mさん「ん~~~」
Mさんは青島ビールを少しだけ口に含むと、ゆっくりと天を仰ぎながら続けた。
Mさん「難しい台だね」
――「難しいとは?」
Mさん「初級者に厳しいよね。ハズレでもスベるし」
――「たしかに。4号機時代とは違いますからね」
Mさん「その実、そんな難しくもないんだけど」
――「…ですね」
やはりだ。核心には触れないが会話から察するに、Mさんもゲッタマの楽しみ方に気付いていると見ていい。これはボヤボヤしていると先を越される恐れが高い。
――「明日も来られます?」
Mさん「いや、明日は別件があって」
――「あら、そうですか」
内心、少しほっとした。ホール側は、あえて導入初日のゲッタマをスカしたのだ。明日こそ設定を使ってくる気がする。
Mさんという強力なライバルがいなければ立ち回りやすいうえ、打ち方ものびのびと探ることができる。
この日は早めに解散し、帰宅後に途中まで探った「赤7チェリー落とし」手順をまとめた。打ち方は概ね固まった。あとはリーチ目のサンプルを増やせれば……。
スーツ姿の男。
翌日、午後6時すぎ――
――「っし!」
リーチ目を確認し、下皿のメダルをドル箱に移した。朝から順調にボーナスを重ね、確定演出(※)こそ未確認だが、昼過ぎには高設定を確信。現在はカチ盛りで3箱に到達したところなので、およそ4,500枚といったところか。
設定5・6確定演出
BIG終了時の7セグの文字が小文字の「chu」なら設定5・6確定。なお、その際は「チュッ」の音声が葉月ちゃんになる(普段はネズミの音声)。
探っていたのは、前日にほぼ完成していた「赤7チェリー落とし」だ。
▲はじめに狙う図柄
まずは左リール上・中段に、下にチェリーが付いた赤7を狙う。そして左リールの停止形を問わず、次は中リールをフリー打ち。ゲッチュー演出があろうが無かろうが、とにかく第2停止の中リールはフリー打ちで構わない。
スイカ成立の可能性があるのは、赤7が下段に停止した場合のみ。つまり、それ以外の停止形ならスイカをフォローする必要がナイ。
第2停止で手を止める必要があるのは、この2パターンだけ。スイカおよび1枚役の可能性があるため、右リールにスイカやBARを狙ってフォローする。逆にこれ以外の停止形なら、右リールもフリー打ちで構わない。
この打ち方なら第2停止の目押しは不要。第3停止の目押し頻度もかなり低いため、ハナビやサンダー以上にサクサクとプレイできるわけだ。
当たりのサンプルがたくさん採れたことで、リーチ目法則も概ね理解できた。
この打ち方でよく見られる中段ラインのオレンジテンパイハズレは、中リール下段の図柄が重要。ネズミやBARといったボーナス図柄であれば鉄板だ。
もちろん他の左第1停止小役狙い同様、右リール上or下段にイチロー・サブロー・赤7停止の小役否定も強い。演出ナシで不意にズドンと停止することも多く、そのサプライズ感が堪らなく気持ちイイ。
1枚掛けをし、あえて中押しでネズミBIGを揃えた。ネズミBIG確定のリーチ目が多い点も、この打ち方のいいところ。上機嫌でBIGを消化していると……
――「………(来たか)」
しばらく空き台になっていた隣の台に、仕事帰りと思しきスーツ姿の男が座った。歳は俺より3つ4つほど上に見える。相当楽しみにしていたのだろう。いそいそと一万円札をサンドに流し込み、顔からは分かりやすく笑みがこぼれている。
隣の台も悪くはない。現在は340Gほどハマっているが、ボーナス合算出現率は約1/135。概ね設定4の近似値だ。ボーナス成立から揃えるまでのロスも考慮すれば、設定4を上回るペースで当っている。
シマの雰囲気は昨日とまるで違う。さすがに全⑤⑥はなさそうだが、平均設定は昨日から大きく上げてきた印象だ。
しかし、スーツ姿の男の表情が曇るのに時間はかからなかった。座って2分ほど経つと首を傾げることが多くなり、だんだん台間POPを睨んで手を止める時間が多くなった。
俺と同じく、4号機のゲッタマに触れていない世代なのかもしれない。
彼が台間POPと〝にらめっこ〟を続けている間にも、俺の台の勢いは止まらない。まもなく7,000Gに到達するが、ボーナス合算出現率は設定⑥を上回る1/110前後をキープしている。
俺がリーチ目に気付き手を止めるたび、羨ましそうに横目で見てくる彼。はじめはチラ見程度だったが、その行動は徐々に大胆になり、挙句には俺がボーナスを揃えると拍手をするまでになった。
俺が軽く会釈を返すと、いよいよ声を掛けてきた。
男「どうして入ったって気付いたんですか?」
――「もちろんリーチ目が出たんで」
男「いや、そうなんスけど…どこ狙えばいいか全然分かんなくて」
――「そうスよね、俺もまだ探ってる段階スけど」
男「赤7のチェリー落とししてます?」
――「そうそう。今のところ、ここが面白いスね」
男「ちょっと…マネしてもいいですか?」
――「……ええ、もちろん」
ライターの仕事。
仮にこの男が積極的にパチスロの情報を発信するブロガーなら、先に赤7チェリー落としを広められる恐れがある。しかし、他人に教えを乞うくらいだ。その恐れは低いと見ていい。
なにより試したいではないか!
この赤7チェリー落としが本当に面白いのか。彼が面白いと言ってくれれば、俺の感覚がズレていないという証明になるハズ!!
――「じゃあ、赤7を上・中段2コマに狙う感じで」
男は恥ずかしそうに「えへへ」と笑いながら、俺の言う通りに試しはじめた。
男「でも、なんかスベるんですけど…」
――「ああ、気にしない。スベったら残りリールはフリー打ちでOKです」
男「マジですか? スイカ大丈夫ですか?」
――「大丈夫。スベってスイカ無いんで」
男「はあ…」
――「赤7下段のときも順押しで、第2停止はフリーで大丈夫です」
男「マジですか? スイカこぼさない?」
――「マジです。第2まではこぼさない」
男「分かりました」
俺も手を動かしながら、恐る恐るプレイする男を見守っていると…
――「ストップ!」
男「り、リーチ目ですか?」
――「そうスね。中段オレンジハズレなら、中リール下段を見て…」
男「ほうほう、なるほど…」
これは残念ながらREGだったが、またほどなく…
――「あ、当りましたね。赤7枠下にスベっての小役ダブテンハズレ」
男「リプとオレンジのダブテンハズレか」
――「ちなみに赤7枠下からのリーチ目はネズミBIGスね」
男「え? なんでです?」
――「赤7BIGとREGなら、ボーナス絵柄の赤7を枠内に残すじゃないスか?」
男「あ~、たしかに!」
1枚掛けでネズミ図柄を揃え、満足げに笑う男。
――「やりましたね!」
男「ありがとうございます!」
そして、BIG終了からしばらく経ち…
男「こ、これは…???」
――「おめでとうございます。この打ち方でのスリスはネズミBIGイチ確です」
男「マジですか!!? うお~!!!」
――「気持ちいいスよね」
男「ヤバ、アツすぎますって!」
子どものように笑う彼の横顔を見て、俺まで笑ってしまった。そうだ、これこそが俺の仕事なのだ。
そしてア〇顔へ――。
およそ4時間後――
男「あっ、あっ、右上段イチロー!」
――「おめでとうございます」
男「あっ、スベって中段スイカテンパイ」
――「ネズミBIGの2確っスね」
男「あっ、ヤバい…キモチイイ♥」
――「………(なんてツラしてやがるw)」
彼の台も高設定だったらしく、ボーナス合算出現率は1/120をきっている。彼の表情は当たるたびにゆるみ、いよいよ人には見せられないほどに。まさかホールで成人男性のア〇顔を拝む日が来るとは…。
男「あっ、見て見て…右下段ジローなのにオレンジハズレで中リール下段BAR」
――「あ~、素敵っスね~」
男「あっ♥ あっ♥ あっ♥」
――「ふはは(喘ぐなwww)」
そして閉店まで残り15分と迫ったところで、満足そうに精算ボタンを押す彼。
男「大変お世話になりました!」
――「いえいえ。お粗末さまです」
男「閉店までですか?」
――「ええ、もちろん。昨日ここでヤラれたんで、限界までいきます」
男「さすがスね!」
――「いやいや」
彼の出玉はユルめに盛って2箱。それでも2,000枚は超えているハズだ。それを嬉しそうに抱える彼に、最後に訊かねばならないことがあった。
――「どうでした? 赤7チェリー落としは」
男「最っ高です! ゲッタマがめっちゃ好きになりました!!」
――「ふはは! それが聞けてよかった」
男「お兄さん、やっぱプロなんですか?」
――「いえいえいえ、ただの……パチスロ好きです」
男「じゃあ僕と一緒ですね。では、またここで」
――「ええ、また」
手を動かしながら彼を見送り、その背中を見て確信した。やはりゲッタマは俺の妄想などでなく、左第1停止を前提として作られたリーチ目マシンだ。開発者が発したメッセージを受け取ったような気がした。
たった数時間で成人男性をア〇顔にしてしまうゲッターマウス。またとんでもねえ台が出てきてしまった。そんな感動が胸の中を満たしていた。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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