新時代の情報戦!?～沖ドキ-30～

ラッシーパチスロワイルドサイド-脇役という生き方-

後輩「しかしスゴい人数ですね～」
――「どうする？店変える？」

その日は某店の旧特定日だった。この店には数年通っているが、最近は客からの信頼を大きく失い、旧特定日でも人が集まらなくなっていた……ハズである。

――「なんで今日はこんなに人が？」
後輩「なんでしょうね……」

店からのメールはいつも通りだし、前夜の店内にも特定の機種を煽ったり示唆するようなPOPは無かったハズだ。不審に思いながら入場抽選を受けた。

――「クッソ～、292番ってなんだよ」
後輩「僕も170番でした」

取り立てて強い狙い台はないものの、せめて看板機種の「パチスロ北斗の拳強敵」くらいには座りたい。そう思っていたが、どうやらそれすら叶いそうにない。

――「店移動かな」
後輩「ですね～。もうどこの抽選も間に合わないですけど」

いっそのことお台場にでも遊びに行ってやろうか。そんなことを考えていると、背中をトントンと優しく叩かれる感触があった。

懐かしい顔。

男「ラッシーさん、お久しぶりです」
――「おおっ、Lさん！久しぶりじゃないっスか！」

振り向いた先に懐かしい顔があった。Lさんは俺の……ファンと言うべきか友人と言うべきか、とにかく古くから交流のある読者だ。職業をひと言で言い表すのは難しいが、ざっくり言えば青年実業家ということになるだろう。

――「あれ？パチスロから離れてませんでしたっけ？」
Lさん「いや～、ハナビで復活しましてね」

――「おおっ！復帰おめでとうございます！」
Lさん「ありがとうございます。で、今はAT機も打ったり」

5号機「ハナビ」をきっかけにオールドユーザーが戻ってきた。どうやらユニバの施策はちゃんと効いているらしい。それが嬉しかった。

――「今日もハナビ狙いで？」
Lさん「いや、それが……」

チラリと後方に目をやるLさん。その視線を辿ると若い男女が居心地悪そうに立っていた。

Lさん「僕の部下と……え～」
――「ああ、まあ詳しくは大丈夫ですwww」

Lさん「いやいや、彼女とかじゃないです全然!!」

焦ったLさんが面白くて、つい笑ってしまった。

――「あ、こちら俺の後輩のNです」
後輩「Nです！よろしくお願いします」

すかさず後輩に耳打ちする。

――「Lさん社長で、何社か持ってるから」
後輩「社長！僕なんでもやります!!」

Lさん「ちょ、ラッシーさんヤメてくださいよ～」
――「フハハハハwww」

さすが動画時代にやってきた後輩だ。頭の回転が速く、瞬時に適切なセリフを吐いて笑わせてくれる。そこが可愛くもあり、尊敬もしている。

――「で、Lさんはなに狙いなんスか？」
Lさん「それが……」

急に小声になり、俺のシャツの裾を優しく掴むLさん。

――「え？どしたんスか？」
Lさん「ちょっと、ちょっと……」

そういうと、俺を物陰まで連れてきたLさん。次いで部下と女性を手招きすると、二人が駆け足で寄ってきた。状況を読めず困惑する俺。Lさんは口元に人差し指を立て、声を抑えつつ話し始めた。

Lさん「実は情報があるんです」
――「……情報？？？」

沖ドキ全6説。

Lさん「実はあの子が情報を入手しまして」

そういってLさんは、ツレの女性に向かって顎をしゃくった。

――「……というと？」
Lさん「今日の沖ドキ〝全6〟らしいですよ」

――「え？ホントすか!?」

隣で聞き耳を立てていた後輩も目を丸くしている。しかし……

一体どこからの情報だ？
あの女性は一体……？

――「そ、それはたしかな情報なんですか？」

Lさんはゆっくり頷き、次いで女性を手で呼び寄せた。

Lさん「な？今日、沖ドキ全6なんだよな？」
女性「はい、間違いなく……友人がそう言ってました」

――「は～、なるほど」

合点がいった。この急激な客の増加は、沖ドキ全6のウワサを聞きつけてのことだろう。問題なのは、その情報の出所だ。たとえば、この店に出入りするスロプロの確度の高い予想がウワサとなり広まっただけなら問題はない。

俺がかつて縄張りにしていた地域には、実際に高設定投入位置をピンポイントで当てまくるプロがたくさんいた。もちろんそれら情報は軍団内でのみ共有されるが、当然ながら人数が増えれば漏洩するリスクも高くなる。今回もそうやって漏れたのか……。

最悪なのは、もう一方のケース。

ホールが俺の知らないツールを使い、新たに情報発信を開始した場合だ。広告宣伝が規制されたことにより、ホールの情報発信はより複雑化した。知らないうちに何かしらのSNSで発信をはじめていたとしたら、その情報の取り逃しは俺にとって致命的になる。

少なくともTwitterにはそれらしきアカウントはナイはずだが、俺の知らないマイナーなSNSを使用されていれば気付かない恐れは十分ある。

女性の口ぶりから察するに、可能性が高いのは前者。後者のSNSであれば、Lさんもそのソースを俺に見せてくれるハズだ。つまり、単なるウワサにすぎない。そう断じても構わないが、この客の集まり具合が情報の確度の高さを物語っているのではないか……。

――「お友達から聞いたんですね？」
女性「はい、パチスロが得意な友人から」

友人が誰かから聞いたのか、それとも友人がSNSで入手したのか。

Lさん「というわけで、こうして打ちに来たというわけです」
――「うーん……」

情報の出所が気になる。もしもSNSならば、なるべく早く見つけ出さねばならない。いずれにせよ、踵を返してお台場へ遊びに行っている場合ではない。

――「よし、たしかめましょう」
Lさん「ですね！ぜひおチカラを」

こうして沖ドキ全6説を検証する戦いが始まった。

情報の確度。

Lさん「で、抽選はどうでした？」
――「あっ……」

俺はクシャクシャに握りつぶした入場整理券をLさんに見せた。

Lさん「292番？それスロ打てるんですか？」
――「………ムリすね」

そして後輩・Lさん・Lさんの部下も全員が100番台後半。旧特定日ならリセットだけを狙って沖ドキを打つ客も多い。つまり我々が沖ドキに座れる可能性はほぼゼロだ。しかし……

女性「私、入場8番です……」
――「つ、強すぎぃ～～～!!」

午前10時、開店―――

Lさん「どうやら彼女、無事に沖ドキ取れたみたいです」
――「それはよかったですね」

あの女性が的確に設定を判別してくれれば万事解決。難しいことはない。設定の6段階をピンポイントで当てるのは難しいが、設定6だけは話が違う。初当たりが別格で軽いため、設定6か否かの判別はイージーなハズだ。

――「とりあえず我々も再整列しますか」
Lさん「そうですね。では、またあとで……」

俺がパチスロフロアに入れたのは、開店から10分が経過したころだった。案の定どの機種にも空き台はなく、いつもなら閑古鳥が鳴いている不人気ジマすら埋まっている。俺は空き台を探すことも諦め、真っ直ぐ沖ドキのシマへと向かった。すると…

――「……おい、マジかよこれ!!?」

予想外の展開。

沖ドキコーナーに人だかりができているではないか!!　たしかに沖ドキは人気機種だし、設定変更がされやすい旧特定日ならリセットだけを狙うプレイヤーも集まる。しかし、この店で立ち見がでるほど人が集まったケースは記憶にない！つまり…

沖ドキ全6説が出回っているのは確定！

彼女だけでなく、多くの客がこの情報を入手し集まってきたと考えていい。となると、やはり信憑性が高いのではなかろうか。しかし、スロプロから流出した情報がこれほど出回るだろうか？

まだ開店から20分ほどだが、沖ドキにはすでに当たっている台がチラホラある。旧特定日だから全台リセットをかけているハズ。設定変更でチャンスモードへ移行したのだろう。

設定変更時_モード移行振り分け
移行先	振り分け率
通常Aへ	57.0%
通常Bへ	9.8%
チャンスへ	33.2%

【チャンス滞在時】実質的なボーナス当選率
設定	当選率
1	1/99.3
2	1/94.2
3	1/89.5
4	1/85.3
5	1/81.5
6	1/78.0

※チェリー・スイカからの当選は除く

肝心のあの女性は……当たってるぅ～～～！しかも、すでに32G以内でループしているではないか!!

――「はっや！一体なにが……」

設定変更でチャンスモードへ移行し、そこから一発で天国へ？概ね通常Bを経由するハズだが、スイカや確定フラグでの当りから天国へ移行した可能性も考えられる。

いや、あのループの長さは天国ではない。最低でも約80%継続のドキドキに移行しているハズだ。詳細を聞きたいが、さっき会ったばかりの知らない女性だ。気軽に声を掛けるのは憚られる。

ここは静観でいい。彼女の台だけでなくシマ全体を見ていれば、全6か否かくらいは分かるだろう。俺は人でごった返すシマを出て、広めの通路に陣取った。リセット狙い勢がモードBからの天国を取り切れば空き台も出るだろうが、この調子ならスグに埋まるハズだ。

そして、しばらくシマを観察していると……

――「な、な、なんで!!?」

〝あの女性〟がドル箱にメダルを移し、ヤメようとしているではないか!!

つづく

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ラッシー: 代表作：パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-

山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本＆DX」や「パチスロ極＆Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。