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パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
2022.12.13
パチスロライターに“なってしまって”episode.8(ライターバブルな2002年)
2001年の暮れ頃からパチテレ!で「スロ魂ビタ押し」というレギュラー番組が始まります。MCは跳び箱でお馴染みの池谷直樹さん。その脇をヒロシ・ヤングさん、私、そして関口編集長が固めるものでした。関口編集長は、私たちが『必勝パチスロファン』を作るようになる前の編集プロダクションの方でした。うん、気まずい(最初だけでしたが・笑)。
この頃、雑誌のお仕事では掛け持ちの『激爆パチスロ王』の中で序列が上昇。3人程度でほぼ一冊を作る。その中に入っておりました。『必勝パチスロファン』と合わせると月に雑誌を一冊分以上のページレイアウトをしていましたかね。それだけレイアウトまで組める人は少なかったのです。
番組からの派生で関口さんがリアルに編集長をやっていた雑誌『パチスロ攻略天国』でもコラムの連載が始まります。さらに、その編集プロダクションからもポツポツとお仕事をいただくようになります。最盛期は何誌掛け持ちしていただろう。それだけ多くの雑誌が林立していました。大手は専属契約のことが多く、それ以外に作れる人がいないからオファーが集中する。これぞライターバブルでした。演者バブルではなく。
その中でも『激爆パチスロ王』の編集部は変わっていました。もう出版社自体がないので書きますと。メイン基板の解析は某メーカーに依頼。某メーカーは台を入手する手間が省け、内部数値など他社製品の作り方が分かる。編集部側は、専門の機材が必要なメイン基板を読んでもらえるのでWin-Win。サブ基板はめんどくせえと断られましたが『獣王』以降のサブ基板は、副編集長を筆頭に自分達で解析ができるようになっていきました。
異常ですよ。隣で解析が仕上がるのを待ち構えて、出てきたところからページを作るのです。締め切り間際なんかは泊まり込みで(笑)。待っている間があまりに暇だったので、編集部にあった風営法の解説ハンドブックを熟読してしまいましたよ。それも今に生きているわけですが。
▲『サンダーVII』(メーシー:2001年12月)
そんな2001年から2002年の年末年始。市場の目玉は『サンダーVII』でした。2002年の1月発売号は、その解析記事を中心と決まります。今では導入直後から解析のような数値が出ることも珍しくありませんが、この当時は「台を入手→プログラム解析」という手筈を整える必要があったので、解析記事はどうしても市場導入から1ヶ月後や2ヶ月後となっていたのです。
また、この時期から雑誌である競争が始まります。「ページ数が多ければ詳しいだろ」競争です。『サンダーVII』に与えられたページ数は24。オール設定実戦とその分析で7ページは埋めるとして……。それにしても多いです。おかげで正月の1日から泊まり込みを開始したわ(笑)。そんな生活を続けていたので、三重のオールナイト営業に行けたことがないんです。
さて、一方の『必勝パチスロファン』。私が初代『サンダーV』のマニアだったこともあって、こちらも担当となりました。ただ、解析がなかったんです。知っていることを書けないだけではなく、解析をしてくる雑誌がどのようなページを作ってくるかも分かっているのです。なんせ、自分で作っているのですから。そういう気苦労は絶えなかったですね。複数誌の掛け持ち時代は。
▲『アラジンA』(サミー:2002年2月)
翌2月。AT機ブームに移行する決定打となる『アラジンA』が登場します。またも私が担当で、パチスロ王は解析あり。パチスロファンは当面解析なしとなっていました。
つまり、パチスロファンが勝負できるのは他誌に解析記事が出るまでとなります。その焦りから、ここで大きな失敗をやらかします。『獣王』も『サンダーVII』もAT当選時に連チャンテーブルを参照する形になっていました。これもそうだろうと決めつけてページを作ってしまったんですね。
蓋を開けてみれば、完全ハズレ(単チェリー)の時にアラジンチャンス(AT)高確率状態に突入。高確率状態中はアラジンチャンスと高確率からの転落を抽選する形となっていました。私がページを作る上で前提とした連チャン数はまったく関係なかったのです。この時に身をもって感じましたね。サブ基板は何でもあり。決めつけるのは危険。サブ基板怖い……と。
これは、今の有利区間も同じです。メイン基板管理になっていますが、プレイヤーが遊技の結果から推測できないという点は同じです。この辺りの匙加減は難しいですけどね。推測が正解ならば優位に立ち回りをできますが、それが正解である確率を高めるのは難しいものだと思っています。
ちなみに、この当時のサブ基板はガバガバでした。市販のROMライターで読み取り可能。それを16進法から10進法に変換して数列の順列を入れ替えたりして、表計算ソフトに落とすと「あ、ここ何かの抽選をやっているんだろうな」というところが出てきたり。
そこを書き換えたサブ基板を実機に差し込むと検証できちゃったんです。そうやってスーパーアラジンチャンス(AT中の完全ハズレで抽選)の継続ゲーム数のテーブルを見つけたりもしました。副編集長が(笑)。どの小役が成立してもすぐスーパーアラチャンに当選する代わりに、順押しナビしか出ない摩訶不思議な現象も簡単に作れました。
もう一つちなみに。『アラジンA』の演出抽選の総数は、8万くらいあるんですね。でも、実際に抽選されるのは0〜65535までの65536個。残りの1万ちょっとはプログラムとして書かれているけど抽選されることはないダミーだったりします。では、何で消さないのか。消すと何かに影響してバグが出ることもあったようなんですね。他のメーカーの方に一般論として聞いた話ですけど(今は余剰分を残すことは禁止されています)。
なので、分母を65536とするか8万くらいとして計算するのかでは、高確率状態の滞在示唆となる“ラクダ素通り演出”などの出現率も変わってきます。ミスらなかった雑誌とミスった雑誌いろいろありましたね。書きませんけど、覚えてはいます。システム推測の初動で大ミスした自分のことは棚に上げて(笑)。
あ、そうそう。サミーさんへ業務連絡。『釣りキチ三平』追加取材の際に通された部屋が営業会議でも使われている部屋だったようで。ホワイトボードには「2月 アラジンA」という文字がそのまま残っておりました。誰にも言いませんでしたよ! じゃない。そういう情報の取り扱いにはくれぐれも御用心くださいませ(笑)。
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- 佐々木真
- 代表作:パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。
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