俺の人生3コマ滑り 〜その３〜

パンツ必勝法という理論がある。


人間の運気というのは一体何処から生み出されているのか。脳か、心臓か、はたまた指先か。一説には臍の下三寸、丹田の辺りで生み出され、その後全身を廻るのだそうだ。



運とは永続的に生まれ続ける物であり、枯渇することは無いとされる。そして、ある一定の時間を掛けて蓄積することが出来ると言われている。では、蓄積されていった運の影響を最も受けるのは一体何か。自らの体が第一だとして、第二は身に付けている衣類であろう。



中でも丹田の最も近くに位置するパンツこそが、生み出された運の恩恵を一身に浴びる究極のパワーアイテムなのだ。



ただでさえ幸運のアイテム足り得るパンツを数日間に渡って着用することにより、さらなる運気の蓄積とそれによるバイオリズムの好転を図るのが、パンツ必勝法である。一度使用すれば連戦連勝。運がさらなる運を呼び、その勢いはとどまる事を知らない。目眩く勝利の世界が、さらなる高みへと貴方を連れて行く。最高速で連勝街道を駆け抜けた後、ふと高層タワーマンションから街を見下ろしながらこう呟く。

「思えば遠くへ来たもんだ…。」



世界の真理に触れかけているこの理論を友人に語ったところ、侮蔑と憐れみの入り混じった視線を向けられた。誠に遺憾である。




人は誰でも必勝法を持っている。勝負の前に缶コーヒーを買うのも然り、打ちに行くときはお気に入りのTシャツを着て行くのも然り、大事な場面では左手でレバーを叩くのも然り。



験担ぎと言ってしまえば其れ迄だが、やらないよりやった方が自らの心に納得が出来るというのであれば、一定の効果は有ると言えるだろう。



必ず勝つと書いて必勝。もし、それを成すことの出来る摩訶不思議な方程式を確立出来るのであれば、一度はその深奥に触れてみたいものだ。勝った暁にはその全額を、カンボジアの小学校へ寄付することを約束しよう。



オカルトも、自らが楽しんでいる内ならば最高のスパイス足り得るが、これを人に強要した瞬間、糞の役にも立たない世迷い言となる。必勝法は己が内にのみ蓄え、熟成させていくのが正しい在り方であるということだろう。



しかし…いくら記憶を遡っても、900嵌った後のトマトがバケ2連で終わったこのリノに有効な必勝法が見つからない…。まだまだ研鑽が足りなかったようだ。




俺の人生3コマ滑り。
ずるりと滑ってバケ揃う。それでもめげずに生きて行く。

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