チキンは海の底に

普段、パチやスロを打つ時ってよほどの事が無いかぎり周りの事とかはあんまり気にならない。

まぁ、人は人。
私は私ってな具合で自分が打っている台をなんとなく見ていますよね。


先日の話なんですが、普段はあまり行かない街の普段はまず自分なら入らない大型店のパチ屋になんとなく行ったんです。

確か、待ち合わせの時間に余裕があったからとかそんな理由だったかなぁと。


んで、ひととおり店内をぐるっと見てのどこも満台だなぁ、なんて思ってたら海ジャパンに一台空きが。

海かぁ。あんま相性良くないんだよなぁなんて思いながら座ってみる。

打つ。

千円で何回位回るかなぁ、なんて事を見ながら打つ。


左隣で打ってる人が私の凄く大好きなプロレスラーだって事に気付く。

バンドルから発射される玉の軌道は明らかに安定さを欠け、ともすれば通常時なのに右打ちになってしまっているほど。

落ち着け私。

再度確認だ。

なんとなく持っていた煙草を左側に置きながら目線は左下から左上に持っていき0.5秒ほどで目視。

間違いない。

あのプロレスラーさんだ。


あ、私プロレスが好きでして。

といっても、せいぜいプロレス専門チャンネルに加入して暇があれば東京ドームクラスの団体から観客20人程度の団体まで見ていて、しまいには実際のプロレス会場を押さえてそこでプロレス演劇をする程度のプロレスファンなんでさほど詳しくはないです。


で、そんな詳しくない私でもどうやら間違いない。

あの団体のあの選手だ。

かなり私が好きな選手だ。

あまり人のデータをチラ見するのはよろしくないのですが、なるべく気づかれないようにチラ。

450回って当たり無し。


まぁ、どこから回し始めたのかは分からないので何ともだが。

どうする？

どうするってのもなぁ。

いつも試合観てます！って言う？

いやいや、パチンコ打ってて突然隣からそんな風に言われたら驚かれるだろう。

それに今はプライベートな一時だ。

ここは気づかないフリをしておくか。

うん、私のチキンな事。


でも、とりあえずは大好きなプロレスラーと隣で打つというのはなかなか出来ない事だ。

まずはこの瞬間を大事にしよう。

プロレスラーさんが当たった場合なら声をかけるチャンスが再度くるかもだし。

プロレスラーさん当たる→私、台の当たりに気がついて隣を見る。→あらびっくり貴方はあのレスラーさん。→いつも観てます！的なね。


うんうん、いい構成だ。

問題は私が先に当たった場合だ。

これはよろしくない。

後から来た奴にサッと当てられたらそれはもう面白くないって話で。

私が当てた瞬間レスラーさんは止めてしまうかもだ。

うん、この展開は回避したい。

と思っていたら緑保留が私の台に。


共にお祭りモードを選択していたのだが、これは良くない。

海の場合、緑でもそれなりに当たる。

リーチがかかる。

頼む！泡でお願いします！

パネルをタッチ！

見事に画面下から泡が。

よし！緑保留からの泡だ！

これは大丈夫！


外れる！

外れた！


ふー、危ない危ない。

危うく当たってしまう所だった。


からの今度はプロレスラーさんの台に煽りが。

そして緑保留。


あるよ、ある。

海の緑は十分にある。


しかし外してしまう。

プロレスラーさん、財布から諭吉投入。

とうやら闘いは続行のようだ。

ならば私も諭吉投入。
私の台、あんま回らないけど。

うん？というかこのシマ全体出ていない？だと。

なるほど。

どうやらこの闘いは台との勝負よりはもはや店との闘いだ。

こんなにも台数がありながらも、ろくに出ていないそんな店にはこちらが出してやるまでだ。


今、この瞬間に私とプロレスラーさんのタッグチームが完成したのだ。

このデスマッチ勝ってやる！

したらプロレスラーさんがノーマルからの確変に！

そっから５連！

私全く当たらない。

プロレスラーさん時短抜けで止め。

店員さんを呼んだ。


終わった。


三万負け。

そしたらプロレスラーさんが去り際に

「あの、よく会場に来てくれてますよね？」

と声をかけてくれた。


「え？あ、はい！あの…はい！そうです！」

「この店出ないよ。あ、また試合観に来てくださいね。」


「あ、はい！来月行くんで！」


うん、三万負けはチャラになりましたよ。

いや、実際私の財布からは確実に三万は消えたのだが、あれですよプライスレスって奴ですよ。

普段リング上でしか観ない人と共にパチを打ち最終的に向こうから声をかけてくれる。


うん、三万負けなんて安いもんだ！


妙にテンションの上がった私がそのあと更に三万負けたってのは明らかに蛇足でしたが（笑）。

うん、あれですね。

試合には負けたが勝負には勝ったって事ですね。

ええ、そういう事にしてあげて下さい。

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