リノの真意

ギロリンッ
トマトが揃う音と共に僕は君が解錠したドアの前に立つことが出来た。
投資は6,000円、決して大きな投資ではないが所謂使ってはいけないお金を使っている。

溢れ出そうとする脳汁抑え、2ゲームを消費する。
その間に僕は、ポケットに入れていた財布や小物を台上に置き、座り直した。
ここからがリノという君を知ることが出来るチャンスなのだ。
トマト揃いは3択、リアルボーナスの連チャン、そんな事は必然結果でしかない。
塞ぎ込んだ君のドアを、探る、察する、そして開く。
それが、君と向き合う真意ではないのか。

中リール中段に赤七を狙う。
中段にリプレイ図柄が止まれば、君はそのドアの鍵を掛けない。
しかし、レモン図柄が止まれば鍵を掛けてしまうかも知れない。
それまで僕はただひたすらに、中押しというノックをするのだ。
貸出ボタンを押し、追加投資1,000円。
そして、ドアをノックする、掛けない、掛けない、掛けない、掛けない。
何度ドアをノックしても君はドアの鍵を掛けない。
ただ、それは喜ばしい事ではないのだ。
誰だってしつこいノックは嫌うだろう。
それを露わにするように中段にレモン図柄が飛び込む。
だが、それは同時にドアの直ぐ側に君が居ることを示している。
いる、そこにいるんだ、今まさにドアに手を掛けようとする君が。
左リール上段にレモン図柄が止まる。
右リールの枠内にレモン図柄が止まればいい。
さぁ、息をするんだ。
無情にも、君の存在が消えるかのように、枠内にレモン図柄が止まることは無かった。

焦燥、恐れ、暗鬼、ドアの前に灯っていた明かりは消え暗闇に包まれる。
その瞬間、今まで酸素の様に必要としてきたリプレイが牙を剥き、毒となって僕を襲うこととなる。
もし君がドアに鍵を掛けていた場合、リプレイの成立確率が高くなる。
よってリプレイが成立すればするほど君が鍵を掛けた可能性が高くなるのだ。
やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ。
追い討ちをかけるように君は追加投資を求めてくる。
現段階で君が鍵を掛けた確たるものが無い。
使ってはいけないお金をまた使わざるを得ない。
投資は8,000円。
ただ、ノックの音が響く度に、僕は微かにだが感じとっていた。

君はそこにいる、体感だがリプレイの成立確率は上がっていない。
いる、いる、いる、いる、来るなよリプレイ。
レモンだ、今はレモンなんだ。
自傷するかの様にレモンが来るのを待った。
どんな形であれ、君の存在を確かめたかった。
しかし、中リール中段に飛び込んでくるのはリプレイ図柄のみ。
僕は右リールを止め、下段にリプレイ図柄が止まるのを確認した。
何故なんだ、使ってはいけないお金を使って手に入れたチャンス、ただ通り過ぎていくのを見ているだけなのか。
絶望の中、左リールを止めその終焉を見守ろうとした。
左リール、、、、、、下段リプレイ！
そう、まさに小山型リプレイ！

居た！君はそこにいた！ずっとそこに居たんだ！
そして君がドアを開けるの待つ。
左リールにナリバを狙う。
次に中リール中段、赤7が止まると同時にトゥントゥン、最後のノックである。
そして開くドア、迎えるグッドマーク。
あぁ、リノって君のことだったのか。

軽快な音楽に、これでもかと言わんばかりに追いかけてくれと君はねだる。
時に歌を唄い、僕を楽しませてくれるんだな。
さらに、ありがとうございます、marvelous、イイね。
これには僕もニッコリである。
感謝され、褒められツンデレも匂わせてくるなんて。
あっという間に楽しい時は過ぎ、君は部屋から出てこなくなってしまった。
体感で分かる、君がしばらく出てこないことは。
僕は払い出しボタンを押し、去り際にパシャりと一枚写真をとった。
溢れきった脳汁で、コインサンドに残った五千円を忘れ意気揚々とメダルを流すのであった。

投資400枚 回収2262枚
（5,000円は勝手に清算された後、その人から回収しました。これにも僕はニッコリでした。）

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