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閉じた世界の終わり
閉じた世界の終わり
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raraさん
ツイッター→ https://mobile.twitter.com/saiplabo - 投稿日:2019/10/07 23:46
2018年1月31日、僕は北海道某町のG店にいた。
みなし機が、撤去されると聞いたからだ。
僕はパチ・スロが大好きで、唯一の趣味と言っていい。多くの知人が引退してしまったけれど、僕は未だ現役で新台を打っている。世間がいうほど、6号機もP基準も捨てたもんじゃあない。
だけど、古い台を打つのはもっと大好きで…一時期は気が狂ったように遠征を繰り返していた。無職特有の無限の時間を使って。
旅打ちをしていた数年で沢山の店に行ったが、その中でもG店は僕にとって特別な店だった。
2017年に初めて行ったあの日の衝撃は今でも忘れることが出来ない。
営業しているパチ屋とは思えない程、全てが薄汚れ、ぼやけた照明の中に、所狭しと希少な台が並べられていて…お客さんは、一人もいなかった。なんなら、店員さんすらいなかった。ワンオペならぬゼロオペだ。
その上、台の電源も入っていたり入っていなかったりする。まあ、珍古台設置店ばかりを巡っている人間にはよくあることではあるのだけど…流石に、そこそこ広い店内の中で自分一人は打ち出すのを躊躇してしまった。
とはいえ、電車で片道2時間掛けて来ておきながら打たない選択が出来る程臆病でもない。
なにより、目の前にリオパラがあるのだ。今は2017年だというのに!
結局、誰もいない店内で僕は千円札を入れた。それは不思議な体験だった。その上、千円で当たったリオパラさんの体内にはBIG一回分のコインすら無く、店員が来る迄の30分間、リオパラはエラー音を吐き出し続けた。僕はやることも無いので、隣のシティーハンターを打っていた。勿論、オリンピアのAT機じゃなくて、銀座が5号機初期に出していたノーマルの方だ。何を思ってか3台もあった。
結局その日は、朝から閉店寸前迄打ち続けた。あまりにも打ちたい台が多すぎて、片っ端から打っていたら、あっという間に時間が過ぎていた。それでも、まだまだ打ち足りない。初代アクエリオンで6択を当てたい。夢夢DXでドラゴンBBを引きたい。政宗で秀吉を引きたい。ピカ吾郎で神曲、「夢は君と空を越えて」を聞きたい…!
…その日から、僕は月に一度のペースで朝からG店に行くようになった。
初日はパチスロを打っているだけで終わってしまったものの、冷静に見てみるとパチンコはスロ以上にとんでもないラインナップで…何度行っても、打ちたい台全てを打ち切る事は出来なかった。何度行っても、初めて来た時と同じかそれ以上に楽しい時間を味わえた。
そんな中、とんでもないニュースが飛び込んでくる。2018年2月をもってみなし機完全撤去ーーー
殆どの店にとって、大した問題では無かったかもしれない。多少レア台が多い店であったとしても、経営を脅かすレベルでは無かったかもしれない。しかしG店はどうだ?店のほぼ全てがアウトな台だ。これは死刑宣告に等しい。
気が狂ったような出玉性能のAT機は暫くの間大丈夫なのに、G店で長く現役を続けていたビーキッズクラブやエヴァまごころ、初代ツインエンジェルは撤去しなければならないというのだ。これが理不尽でなくてなんだ。
だが、僕が憤ったところで世間は何も変わらない…なら出来る事は何か。生きているうちに行くのだ。一回でも多く。
その日から、僕がG店に行く頻度は上がった。
そして、何度も何度も行くうちに僕の心境は変わっていった。
置いてある台以上に、店が醸し出す雰囲気に惹かれていったのだ。
完全にぶっ壊れている男子トイレ、異常に金を拒否するサンド、7台もあるのに一台しか動かしていないので完全に単なる休憩所と化していたビーキッズクラブ、極限の接客を繰り出す決して言葉を放つことのないとてつもなく無愛想なワンオペの店員、玄関からの日差しに頼り切ったあまりにも薄暗い照明、たまにいるおばあちゃんのどんなに長いリーチでも徹底して打ち出しを止めない姿勢…その全てが好ましく思えた。
最初は、出来るだけ入れ替えをしないで欲しいと思いながら通っていた店なのに、いつしか僕の気持ちは逆転していた。入れ替えをして欲しい…
現状の機種構成では、ハッキリ言って営業を続けるのは不可能だ。みなし機撤去後に動かせる台がパチンコのバカボンV一台しかない。クソ台だ。これはまずい。
確かに、この店の名機達が撤去されてしまうのは哀しいけれど、この最高の空間で打てなくなることの方がもっと哀しい。だから、最新台だけのお店になっても通うから、入れ替えをしてくれないか…
そう思いながら通っていたものの、ついぞG店が台を入れ替える事は無かった。結局、入れ替えが無かったというのに全ての台を打つことも出来ぬまま、あっという間にXdayの前日である。
いつものように、朝6時に家を出る。たかがパチンコ屋の、それも勝てる算段がある訳でも無い店へ行く為に、朝っぱらから電車を乗り継いでいる僕は、傍から見たら単なる狂人かもしれない。でもそんな日々も今日で終わってしまう。そう思うと泣きそうになった。
正直、閉店の告知を覚悟していた。最低でも、休業であろうと。
なのに、店内は驚く程いつものままだった。相変わらず客はいないし、1月の北海道だというのに暖房が貧相なせいでとんでもなく寒い。そして、どこをどう探しても何の告知も無いのだ。
今まで、一言も発した事の無い無愛想な店員に意を決して聞く。
「明日からも、営業を続けるんですか?」
案の定、声を発しての返答は無かったけれど…彼は、確かに頷いた。
そして2月。殆どの店からみなし機は撤去された。まあ、真っ当な店は1月末までにあらかた撤去し終わっていたのだけれど…あの店が真っ当かと言えば、間違いなく真っ当ではない。なら希望はあるんじゃないか。頷いてたし。
2月中旬に、受験発表の時ぐらいドキドキしながら入店すると、そこには何も変わらないG店の姿があった。店内をグルリと回るも、一台足りともみなし機は撤去されていない。
いや、むしろビーキッズクラブが全台動いていた分増えたとさえ言えるだろう。動くんなら今まで止めていた理由がいよいよ分からないが、何にせよ目出度い事である。
ただ…これは、明らかなルール違反だ。本当に嬉しいが、ルール違反はルール違反だ。だけど、通報するほど野暮じゃあない。僕は、目の前に広がる桃源郷を別の世界の物だと思い込むことにした。
時代から取り残された台に、時代から取り残された設備、外界の物に一切関与しない、閉じきった別の世界での、本来置いてはいけない台と戯れる時間。
そこに、罪悪感なんて物は無かった。ただただ楽しかった。2月は無事乗り越えたんだ、この店は聖域なんだ。永久に生き続ける…
だけど、終わりはあまりにも唐突に、予想外の形で訪れた。
台風による浸水…
北海道の住宅は、雪に対して滅法強いものの、豪雨には大変弱い。とはいえ、パチ屋のようなしっかりした施設なら問題無くて当然なんだけど…あの店は、全然しっかりしてなかったのだ。
今思えば、全てが夢だっだかのようにさえ感じる。特に、みなし機撤去からの数カ月間は…
散り際があまりに呆気なくて、潰れたことが信じられなかったし、信じたくなかったけれど…今、あそこに行っても廃墟があるだけだ。
最早、あの店の事を覚えている人も少ないだろう。
だけど、僕にとってはかけがえのない店だったし、あの閉じきった世界に通っていた時間は一種の青春だったと僕は思っている。ありがとうG店。
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raraさんの
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このコラムへのコメント(5 件)
自分も最近ですが群馬の店行ったみなし機だらけの店は泣きそうになりました。
行った数カ月後、閉店してしまいましたが・・
極限の接客ってなんだよー(笑)