せっていちゅうがあきらめた実戦報告

2XXX年某月某日

待ちに待った給料日は銀行ATMで19枚の全財産を引き落とす事から始まった。
負けられない闘いへ身を投じる覚悟を決めたが何を打つかは決めていない。

とりあえず19万あれば何でも打てる。

一時は完全に下火となったパチスロ業界だったが、産業・雇用問題を基点に遊技環境の根本から大きく見直しが入った。
一昨年の年末、出玉に関する規制と検定認定やら法規の強烈な緩和・法改正が行われたのは記憶に新しい。
細かい話は省くが、これにより5号機と6号機に加えて4号機のパチスロ機を設置した営業が合法的に可能となった。

圧倒的な出玉率では他の追従を許さない4号機。わかりやすく遊びやすいという観点で好まれる5号機。未知数なところもあるが最新のコンテンツに加えて出玉スピードが4号機並という観点で好まれる6号機。
ホールは今、4号機×5号機×6号機の三国時代を迎えているのである。

さて、一見すると4号機が圧倒的と思われるパチスロ三国時代だが、現場では5号機が最も支持されている。4号機の設定状況は全国的にも良い状況とは言えないからだ。
4号機＝爆裂機という印象もあるのだろうが、とにかく機械代が高いらしい。現代から見れば4号機は遺物のようなモノであり、そもそもホールで稼働できる個体が限られているとのこと。
そのためホール側としては機械代のPAYOUTが見込めないという理由で設定を入れにくい。遊技資金も5号機に比べて多く必要となるため若いユーザーからも支持されていないようだ。
また、故障した際の修理費が高くついてしまい維持費がかかるのも設定が入らない要因の1つだそうだ。交換部品が見つからず稼働停止となる事も多いくようで、冒頭に”パチスロ三国時代”とは例えたが、4号機の台数自体は圧倒的に少ないのが現実だったりする。

5号機は相変わらずバジリスク絆が人気を博しており、次いで番長2、バイオハザード5、緑ドン、新鬼武者と5号機時代に名機と呼ばれた機種が真の覇権争いをしている。
有利区間が存在する5.9号機についてはディスクアップが相変わらず強い。ちなみに4号機ディスクアップは稼働できる個体が今のところ見つかっていないそうだ。

6号機はまだこれからと言ったところだが、設定に素直だという実績から一島に3,4台はしっかり入っている。
導入したての頃はイマイチという印象が強かったが、設定状況が良くなってだいぶ印象が変わった。
台選定は個人の好みが強いだろうが、個人的にはRe:ゼロを推したい。引いたことはないが有利区間完走フリーズは心が跳ねる。
(アニメの方は未視聴だが、KonozamaPrimeでも配信されているようなので時間を見つけて観てみようと思う）

さて、三種回胴機の群雄割拠となったホール内の光景は昔では考えられないほど大きく変化した。
4号機/5号機/6号機島として固めるところもあれば、4号機から6号機までのシリーズを順に並びで入れているところもある。
個人的にはシリーズ全機種を並べている方が見た目としては好みで、特にパルサーシリーズの4号機から5号機の機種総並びは一見の価値ありだ。

ちなみに今日実戦するホールではミリオンゴッドシリーズが最近リリースされた順に並んでいる。

ハーデス2で背負った負債を凱旋で...!ゼウスで背負った負債を系譜で！初代で...! という八大地獄巡りのような立ち回りが可能となっている。






と、考えていたら脳裏に初代ゴッドがチラついたので今日は初代ゴッドを打とう。
突拍子もないジャストアイデアだが結果にコミットすれば問題ない。

駅前にあるいつものホールで開店を待つ。
今日は先着入場の通常営業で間違いないようだ。
前に数人並んではいるが、通常営業の朝イチから初代ゴッドを打つイカれたホモサピエンスは恐らく自分だけだろう。



「いらっしゃいませ！」
店員さんのご機嫌な一言で入場が始まった。
イカれたホモサピエンス選手の入場である
入り口から見て右側の島一列がミリオンゴッド 島だ。

（ハーデス2..ポセイドン...凱旋...ハーデス...)

（ゼウス...系譜...あった！初代！)

台確保券を下皿に投げ込んで顔上げた。

（これは...…?）

すぐさま台確保券を隣に投げ込み無事確保。

初代の基本的な打ち方は非常に簡単で、メダルを3枚入れてレバーを叩き液晶の押し順に従うだけだ。

初代ミリオンゴッドのPGG性能はその名にふさわしいほどに強力。純増約10枚のGGが500G、つまり5000枚前後の出玉が約束されているが、いつ如何なる時もペナルティは絶対に許されない。
もしペナルティを打ってしまったあとすぐにPGGフラグを引いてしまったらどうなるか、中段にGODが揃い15枚の払い出しが虚しく行われるだけである。
これは後継機となる5号機でも同様ではあるが、期待値約3000枚と確定約5000枚は天と地ほど違う。
ペナルティさえしなければ5000枚、ペナルティをしてしまえばその1/333.3の15枚で終了。
正直、やってしまった日には「固め濃いめ味玉」と松屋のカウンターで言ってしまうほどに気が狂うことだろう。



財布から犠牲者第一号を取り出し、サンドに挿入。
貸出ボタンをセグメントが0になるまで連打し、下皿に500枚ほどのコインが溜まったところで準備完了。
通常時は16〜19G/1K程度しか回らなく、頻繁に貸出ボタンを押すハメになるので諭吉を1枚入れたら貸出を10回押すのが合理的となムーブとなる。
..…言いたい事がわかるが、PGGを引けば交換率の差など誤差レベルだ。



何はともあれ、軍資金は余るほどあるわけだから問題ない。
サクッと引いてサクッと出せばいいのだ。

天井GGにて総獲得494枚、残金なし。
総投資19万を捲る策を考えなければならなくなったが、どれだけ考えても挽回できる策が思いつかない。身体が鉛のように重く、10年分はあろうかという徒労感に襲われている。

……足掻き方を考えても仕方がないのでGZONEでの薄いストック開放を祈る事にした。
いや祈ったところで何も変わらないのはわかっている。そんな事は社会でたくさん経験してきた。
行動に移し成し遂げることで結果が付いてくる。俺は成し遂げられなかった敗者だ。
敗者にできる事はただ祈ることだけのはずがPGGを引いた。

GZONE中のPGG当選、これは全ミリオンゴッドシリーズの中で最強の爆裂契機(仮)。
恩赦はGG500G+内部ストックされているGGの全放出。
ちなみに理論上の最大値は16384個であるが本機の特性上、大量のストックが溜まっている事はあまり現実的ではない。

現実的ではないが、あり得ない話ではない。

その事実を脳が認識した瞬間、全身の毛穴から血が吹き出そうなほど身体が熱くなった。
先ほどまでの徒労感はどうやら休暇でハワイにでも行ってしまったようで、身体が軽く気分も良い。


ストックが切れるまで打ち続ける以外の選択肢が消し飛んだ。捲れる。捲れないはずがない。
これから閉店まで延々とコインを吐き出し続けるこの畜生に対して一定の動きをするだけの仕事。

それをただ無言・無心・無機にこなすだけだ。

捲った。

-おわり-

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