自ら志願して、業界で働いてみた。③

パチンコ製造工場で副業を開始した１日目。
初作業として任されたのは、パチンコ筐体に取り付ける予定の役モノのネジ締めだった。

パチ７の３周年企画の一つ『愛喜工場見学』でも実際に触って動かした電動ドライバーとの再会。
去年の事なのに妙に懐かしさすら感じてしまい、思わずフフッと笑みが浮かんでしまった。

作業机にあるのは、この吊り下げられた伸縮可能な電動ドライバーと、たけのこ型の製菓の箱とほぼ同じくらいのケースが６つ。ケースの中には小さなネジがビッシリと並んでいた。

高木さんが隣に居た別の派遣社員から役モノを受け取ると、ケース内のネジに向かってドライバーを移動させ、一瞬だけスイッチを押してネジを抜き取り役モノのネジ穴へと差し込んだ。

「いいですか？スイッチを押してネジが締まったら、もう一度スイッチを押して緩まない様に２度締めを行います。再確認を怠ることは不良品を出すことに繋がりますので必ず２度締めは行うように徹底してください」

軽く頷きながらハイと返事をすると、高木さんが同じ役モノを両手に抱えて持ってきてくれた。成人男性が両手で抱えるほどの大きな役モノで、最終的には盤面の中央に取り付けられるそうだ。

「久兵衛さんには役モノの上蓋を取り付けた後で上下左右合わせて９箇所のネジ締めしてください」

電動ドライバーを高木さんから渡され、ケース内のネジを抜き取り指示されたネジ穴へネジを差し込む。

元々使い慣れた工具ということもあってスグに作業を終えることができたが、実のところ本来そこまで器用な人間ではなく、数を重ねることにボロが出ることもあった。

しかしながら周りの方からのフォローもあり、大きなトラブルにはならずに済んだのは幸いだった。集団作業で大切な周囲の人間との連携やフォローの意味について改めて考えさせられながら半日が過ぎた。

昼食はメガネくんと一緒になり、大学生であることとファミレスのバイトと兼業でやってることを彼の口から聞く事ができた。ちなみにパチンコは付き合いで偶に打つとのことで『魔法少女まどかマギカ』がお気に入りとも。推しは美樹さやかでQBはブッXXしたいそうだ（笑）


午後からの作業も同じく役モノのネジ締めだ。
左隣の別の派遣社員から受け取った大きな役モノにプラスチックの蓋を被せてネジを締める。そして右隣のメガネくんに渡す。その繰り返しだ。

様々な機械音が交差し、薄暗いライトに照らされ単純作業を繰り返す。
午後の休憩時間まで延々とだ。


午後の休憩時間は１５時から１０分間だけ。俗に言うトイレ休憩タバコ休憩ってやつだ。
水分補給をする人も居たが、作業場では勿論飲食は禁止なので食堂まで行く必要がある。ちなみに往復の移動時間だけで7分弱掛かってしまうので時間効率はあまり宜しくない。

休み時間はキッチリ休むのがモットーなので、トイレだけ済ませて後はプラスチックのパレットの上に座ってボケーっと周囲を観察していた。


午後の休憩時間が終了し、黙々と作業を続けて2時間。
「ちょっと作業を止めてください」と言いながら再び高木さんが登場。

朝に渡された作業日報の説明と明日の業務内容を告げられた。


そして、高木さんが去った後で直ぐにタイミングよく終業のチャイムが鳴り、私の副業1日目日もこれにて終了となった。


タイムカードに打刻をし、ロッカーに向かう途中で後ろから山田さんに声をかけられた。

「あ、お疲れ様です」

「おつかれー」

「自分、来週も何日か入れたんですけど山田さんは？」

「まだ決めてない。それよりも営業に聞いたんだけどさ……」

（2日目編に続く）

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