自ら志願して、業界で働いてみた。④

パチンコ製造工場で副業を開始した１日目が終了した。

帰宅後、営業から着信があり、山田さんの言葉通りに仕事が来週で一旦終了になるとの事だった。つまり、代休の月曜と有給の火曜と水曜と働けば、この工場ともサヨナラというわけだ。

そして、営業は更に会話を続けた。

「久兵衛さんは来月も４日間の就業が予定されているようですが、例えばその日に同じく遊技台の部品を扱っているＸＸ電子に勤務は可能でしょうか？場所が今よりもちょっとだけ遠くなるんですけど……」

「あ、いいですよ。」

「分かりました。では就業案内をさせて頂きますね……」

営業からの説明は、以下の通りだった。

・日勤
・作業員の数が決まっている為に遅刻欠勤早退は許されない。
・休む時は2日前から報告をしなければならない。
・昼食時の外出は禁止。緊急の場合は外出届を出すこと。
・髭、ピアス、タトゥーは禁止。
・携帯やカメラの持ち込み厳禁。

来月から4日間の働く新しい派遣先は、予想以上にルールが厳しかった。


週が変わって月曜日。

派遣社員の朝は早い。
家を出る前に必ず派遣会社の営業宛に出発の連絡を入れなくてはならない。これを怠ると所謂『バックレ』と見做されてしまい、個人の信用を失い仕事の紹介も貰えないらしい。

派遣会社によっては、専用のWEB内にある出発ボタンを押すことでその情報が営業に伝わるシステムなどもあるそうだが、自分が登録した派遣会社は出発メールを営業宛に送る必要があり、勤務先と名前を本文に打ち込んで送信することで営業が出発を確認し、其処ではじめて給料が発生するのだった。

メールを送信し終え作業着と弁当をリュックに詰め、地元ＦＭ局を流しながら一昨日と同じ工場に向かう。初日が思ったよりもギリギリだったので、５分早めの出発だ。


工場に到着し作業着に着替えて第2工場へと向かうと、目の前にメガネくんが居たので挨拶。

「慣れましたか？」

「まー、それなりにはね」

「昨晩営業から連絡があって」

「自分もあったよ。んで、来月から4日間XX電子」

「まじすか！あそこ俺も行った事があるんすけど……や、頑張ってください」

「お、おぅ」


初日同様にラジオ体操、朝礼と続き社員の指示のもと各現場へと移動となった。そして自分もメガネくんも同じ場所同じ仕事内容で土曜日と何ら変わりがなかった。

「あ、おはようございます。山田さんって今朝見ました？」

「いや、見てないですけど」

「参ったなァ。営業の方も連絡取れないようで困ってるみたいなんです。ちょっと悪いんですけど山田さんが入る予定のラインも二人で協力してやってもらえますか？」

「わかりました」

「ホントにすいません！簡単なネジ締めと確認ですから宜しくお願いします！！」

高木さんはそう言って小走りで何処かへ行ってしまった。

「山田さんバックレですよ」

「んー、そうなの？」

「前に別な現場で一緒だったんすけど、連絡しないで欠勤した事があったんですよ」

「なるほどなぁ。おっと、作業始まってた！今日も一日頑張ろう！！」

「うっす」


山田さんが出勤しなかったオカゲで、私は初日と同様の作業に加え、メガネくんの作業も半分手伝うことになった。メガネくんは残りの半分の作業と山田さんが本来やるネジ締めの確認作業を担当する事になった。

作業工程が増えたとはいえ、ネジ締めした役モノを裏返しにして、型枠にセットしてモーター部のネジを締めるという単純作業の繰り返しなので、当然ながら飽きる。

大好きなパチンコに触れられる喜びも、就業２日目にして崩壊寸前であった。


黙々と作業を続けて１時間が経過して２時間が経過しようとした時、再び高木さんがやって来て山田さんと連絡が取れたとの報告を受けた。案の定欠勤だった。

「……と、まぁ残念ながら山田さんはお休みだそうです。ところで久兵衛さん、一つ提案なのですが、午後から違う作業をやってみませんか？」

「えっ！？やります、やります！それでどんな内容ですか？」

（続く）

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