◯◯とパチスロの奇妙な因果関係 『な』

今回のお題は佐々木真先生からいただいた「ナノ」。



ナノなの？ナノじゃないの？どっちなの？どういうことなの？ナノって何なの？南野の読み方はナンノなの？って方にこの文章を捧げる。





ふとカレンダーに眼を向けると、2018年の1月がもう終わりかけていた。ついこの間年末を迎え、三重のオールナイトに参加されている方のSNSを千葉の片田舎で指をくわえながら眺めていたばかりだというのに。歳を重ねるごとにその歩みを速める時間の経過に、戸惑いを禁じ得ない。




19世紀のフランスの哲学者、ポール・ジャネが提唱した「ジャネーの法則」というものがある。これは「生涯のある時期における時間の心理的な長さは年齢に反比例する」というもので、5歳の人間の1年は人生の総時間の1/5だが、50歳の人間の1年は1/50である為、早く過ぎているように感じているとの事だ。言われてみれば成る程、理に適っていると膝を打ち鳴らすとともに此処から更にその速度を増すのかと思うと最早恐怖すら覚える。




10年後、20年後、更にその先、圧縮され続けたた俺の1年は一体どれ程のものなるのだろう。瞼を閉じ、再び開いたら年が明けていた、そんな夢まぼろしの様な感覚まで凝縮されてしまってはいないだろうか。宛ら空間を漂う粒子が如き「ナノ」サイズまで縮んでしまっている気がしてならない。本題に入ろう。



ナノ。10の-9乗倍。漢数字表記で塵。この単位に人生で初めて触れたのは、おそらく「iPod nano」であると思われる。当時友人達が挙って所有していたのを尻目にSONYのWALKMAN派だった自分は、会話についていけない事も屡々だった。なんだiTunesって。日本人なら日本製を使え。SonicStageを活用しろ。そんな風によく分からない尖り方をしていた自分も、今では立派な林檎信者。出先でコラムの投稿も出来ちゃう。そう、iPhoneならね。




ほろ苦い思い出を運ぶ単位ナノとパチスロ。この２つの接点はその対極の位置に存在した。ナノが10の-9乗であるのならば、10の9乗は何か。10の9乗はギガである。この単位を聞いて聡明な諸兄であるならば、ある１つの菓子を思い浮かべる事であろう。そう、「GIGA」だ。勝利の余韻を噛み締めつつ、余り玉で獲得するもう一つの戦利品。激戦の疲れを優しい甘味と絶妙な歯応えで癒してくれる至高の一品。確率という数字の世界に生きる我々を、神は天上より見下ろし確かな繋がりを残していた。




勝利の象徴がギガであるならば、ナノは敗北の其れであると言えるだろう。今日も今日とて良いところが無かった。一時でも浮いたあの時に止めていればよかったものを、熱くなって追った結果は全呑まれ。惨めさと後悔を胸の奥に押し込めながら家路に着くその切なさを、もう二度とこんな事はしない、明日からは真面目に立ち回ろうという決意を込めてナノと呼ぼう。




また、我々スロッターは文字通り刹那(10の-18乗)の時を生きる人種だ。レバーを叩く一瞬に、目まぐるしく変化する乱数を拾うその感覚を研ぎ澄ます、凡人よりも圧倒的に凝縮された時間を過ごす生物であると断言できる。故に、例え終日打つという事が時に不毛であると感じる事があったとしても、罪悪感を抱く必要は一切無い。我々がリールを止めるのに掛ける4.1秒は、現代社会を取り巻く其れよりも遥かに濃いのだから。異論は認める。





もしもアト(10の-18乗)少しで天井ナノ(10の-9乗)に、ゼッタ(10の21乗)いに引いてはならないボーナスが当たり、気分もセンチ(10の-2乗)メンタル、テラ(10の12乗)銭も尽きメガ(10の6乗)虚ろになり死んデシ(10の-1乗)まいたい様な気持ちになった時、この文章を思い出して欲しい。世界は数字で溢れている。小さい負けに拘るな。どデカ(10の-1乗)い気持ちで前を向こう。



ヨタ(10の24乗)話にお付き合いいただきありがとうございました。































年が明けてもお題募集中です。お題を下さった皆様に今年の収支が+メガ(10の6乗)円になる様、念を送っておきます。次回は「に」から始まる言葉で。

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