会いたかった。ただそれだけ。

物心がついた時から

父親に連れられてパチンコ屋へ。

仕組みを覚えるのに時間はかからなかった。

高校生になった頃、周りでは

「クランキーは勝てる」

「アステカやべぇ」

そんな話を耳にしながらも、

自分一人で行くなんて考えられなかった。

ある夜、テスト前の息抜きに

何気なく見ていた深夜のパチンコ番組。

紹介された機種は



「CRルパン三世」


とにかく衝撃だった。

今まではよくわからないキャラが出てくるか、

ただデジタル数字が回るだけの機種ばかり。

そんな中に現れるルパンや五エ門、次元の活躍。

大当たり時に流れるオープニング。

すっかり魅せられてしまい、とった行動はただ１つ。


貯めていたお金を握りしめてパチンコ屋へ。

大人びた格好で入店し、慣れた手つきでパッキーカードを買う。



内心は心臓が止まるかと思うほどドキドキしている。



打ち始めて1000円目。

黒いパンツの不二子が出てくる。

期待度大幅アップとか言ってたやつだ。

五エ門リーチに発展し、１つずつ絵柄を切っていく。

そして、訪れる大当たりの瞬間。

5回リミットまで到達し、恐くなってすぐ止める。

1000円が3万円に変わってしまった。

それからすぐにハマってしまい､

毎週のように同じ台に座り、毎回面白いくらいに当たる。

手元のお金はどんどん増えていく。

好きなアーティストのスコア

ハーモニカも音階違うものを数個

ハーモニカホルダーやカフー

全て簡単に手に入った。

クリスマスには彼女を誘ってホテルでも泊まろうか。

その先は……。


なんて妄想が過ぎる頃、いつもの通り出していると

店員が肩を叩いてくる。


「君、◯◯高校の学生だよね？」

「バス停から制服のまま降りる所を見たんだけど」


その場で固まってしまい、謝罪すると


「学校には言わないでおくから、出玉交換して」

「次回から店に来ないでくれる？」


人生で初の、いや最初で最後の出禁である。

実はこのお店、父親や叔父とよく通った店なので

店員とも顔見知り。小さな町のパチンコ屋だから

寛大な処置で済んだのかもしれない。

さすがに懲りてしまい、

その日からその店には行かなくなった。



「その店には」だが。



わざわざバスに揺られ2時間半、

CCガールズを打って負け続けたあげく

クリスマス前に彼女に振られ、

やけっぱちで打ったルパンの現金機が爆発した話は

残念ながら割愛しておく。



後日談ではあるが、

地元の高校生に店員が注意したら

「だから何よ？」と切り返し

そのまま打ち続けたという。


ちょっと昔の、今とは違う頃のお話。

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