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あの日打った台の名前を私はまだ知らない
あの日打った台の名前を私はまだ知らない
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インプロレスGMさん
20年程打ち散らかしてまいりました。私は何を得たのか、そして何を失ったのか。そんな事を微塵も考えずに今日も打ちます。明日も打ちます。そして呑みます。 - 投稿日:2017/04/13 20:18
たまに、パチンコでもスロットでもいいんだけど最高勝ち額や負け額の話になる時ってあったりしますよね。
どちらかと言えば盛り上がるのは負け額
自慢の話だったりするんですが、私の中で勝った負けたを越えて今だにあれを超える瞬間は無かったなぁなんて話を思い出したのでちょっくらお付き合い下さいな、と。
いきなり20年程前に遡ります。
専門学生とは名前だけの連日パチ屋に通ってはコンチⅡかブンブン丸と戯れてるそんな私にもどういう訳か、そん時は彼女なんてもんがいましてね。
で、「旅情感ある写真」を撮ってこいとか授業で言われたらしく、そんな写真を撮る旅に出かける事になりまして。
あ、そんな専門学校だったんですよ。
広告系…みたいなそんな感じ。
共に埼玉出身の我々としては海が見たいという事でベタだけど熱海に行く事に。
うん、今思い返してもベタだしなんか…エロいわ。
まぁ、それはそうとして。
熱海をフラフラしていると1軒のパチ屋がありまして。
外見からしても今にも潰れそうというか、今潰れましたと言われても何ら不思議では無いこじんまりとした店。
中に入ってみてもシマが四シマくらいだったかなぁ。
なので50台もない本当に小さい店でした。
スロットは無くパチンコのみ。
お客さんも、じいさん一人だけで確か羽物の「Mrフォール」とかを打っていた記憶が。
そんな中、見た事の無い台が。
右に回転体があるから権利物であろう。
当時ネットはもちろん、携帯が無かった。
あったにはあったけど大して普及してなかったそんな時代。
小冊子も置いてない。
全く何者かも分からない権利物。
パチンコ、スロット好きなら目の前に見た事の無い台があったら何を思うか。
〜当てたい〜
ではなかろうか。
私はそうだった。
彼女にすまないがこいつをどうしても打ちたいので旅の写真は一人で撮ってきてくれ。
と言う私。
と言われた彼女は実に分かりやすい見下した目をしてましたね。
兎にも角にも、彼女は一人写真を撮りに街へ。
私はこの何だか分からない権利物と対峙する事に。
まぁ打って納得の回らなさ。
そりゃこんな寂れた店だし。
奥の景品カウンターには店員なのか店長なのか知らんが初老のおっさんが黙々とスポーツ新聞を読んでるだけ。
にしても回らない。おまけにスタートチャッカーはスルーだしで投資のスピードも早い。
いや、この場合投資なんて言わない。
お金を捨ててるような物だ。
それでも見たいのよ、こいつが当たる所を。
まぁ、それかスーパーリーチでもいい。
どんな演出をしてくれるのか見たい。
いわゆるセブセグの3ケタデジタルは実にやる気なさそうにピラリピラリと不快な機械音を鳴らしながら淡々と回っている。
そしてようやくリーチ!
ピラリピラリピラリピラ…ピ。
素っ気なく外れる。
まぁそんなもんだろう。
きっとスーパーリーチはもう少し煽ってくれる筈だ。
何回目かのリーチでその時は来た。
いわゆるノーマルリーチの変動が長い。
これは!?と思った瞬間リーチ音が変わる。
ビヤッ!ビヤッ!ビヤッ!ビヤッ!
数字の動きも早くなっている。
そしてビヤビヤうるさい。
恐らくスピーカー部分が痛んでいるのかノイズが酷い。
そして3が揃った。
揃った!何かビヤッビヤッ!に気を囚われすぎて全くリーチアクション見てなかったけど揃った!当たった!
権利物の大事な所はここからだ。
どこかにあるVゾーンに、玉を入れなくてはならない。
とこだ?
と、思ったらかなり下の方のちっこいアタッカーが開いた。
ここかな。
玉が3、4発入ってV入賞も確認したので保留が無いのも見届けて右打ち開始。
順調に大当りを消化していると何やら景品カウンターに動きが。
さっき羽物を打っていたじいさんがカウンターで店員だか店長のおっさんに私を指差して何やら会話をしている。
なんだろうなぁ?と思った矢先、その二人はダッシュで私の所に来た。
「店長!当たってるだろ!これ!」
じいさん大興奮。
「兄ちゃん、凄いなぁ。こいつ当たってるの初めて見たよ!」
じいさん私の肩をバシバシ叩く。
ちょうど1回目の大当りを消化したので店長さんに
「これ何回権利ですか?」
と聞くと
「いや、私も初めて当たってるの見たから分かんないんだよ。」
との答えが。
うん。
うん?
大当りが終わったが台枠が点滅していたので恐らく後1回か2回は権利がある筈。
まぁ…手な訳で打つ事にと思った矢先、店長が私の腕を掴む。
「ちょっと待ってくれないか。」
何もやましい事はしていない。
何事か。
常連のじいさんも店長と私を目つめている。
「今、家族呼んでくる。」
店長はそう言って景品カウンターの奥に消えていった。
「まぁ、兄ちゃんそんな急いでないんだろ。待っててくんないか?」
じいさんはそう言うが…。
これから何が起こるのか。
私はどうなってしまうのか。
不安で喉がカラカラになっていると気付いた時、カウンター奥から店長がわらわらと人をつれてきた。
家族…なんだろう。
店長さんと同じ位だから奥さんか。
そして30代くらいか妙に背が高いいかつい顔をした男が息子か。そしてその横でエプロン姿の女性はその奥さんか。
そして小学三年辺りかコロコロコミックを持ったままやって来たのは息子であろう。
そんな寂れたパチ屋の家族5人が揃って私の周りを囲んだ。
そして店長が
「すいません、お待たせしました。あ、これがうちの家族でして。いや、誰もこの台が当たるのを見た事ないんで是非皆で見たいなぁと」
「俺もみてえよ」
とじいさんも。
かくして私はパチ屋の家族と常連のじいさんに囲まれて2回目の当たりを目指す事になった。
2回目は確率が相当下がってる筈なのですぐに当たりは来る筈なのだが前述した通り回らないのです。
電サポとかも無いので自力で回さないといけない。
回らない。たまに回ってもスルーだしで玉はぐんぐん減っていく。
さすがにざわつくオーディエンス達。
「なんでこんな釘にしてんだ」
「よく、こんな台打ったもんだ」
「本当に当たるのこれ?」
「麦茶飲むかしら?」
「あぁ、持ってこい」
「俺も飲みたい」
盤面を夢中で見ていたので誰が何を喋っているのかさっぱり分からないが、とにかく何でもいいから早く当たって欲しい。
なんだこの光景。
すると麦茶が差し出された。
店長の奥さんらしき人だった。
「ごめんなさいね、麦茶しかないんだけど飲んで頑張って!」
訳の分からない状況とプレッシャーにすっかり渇ききった喉を湿すのには最高の一杯だった。
「ありがとうございましす。頑張ってみます!」
その直後、例のビヤッビヤッ言うリーチが来た。
オーディエンスも私も静かに見守った。
そして1箱飲まれるかどうかの瀬戸際で当たってくれた。
「これが!」
「本当に当たるんだ」
後ろで驚きを隠せない家族と常連のじいさん。
そして1番驚いていたのはそんな光景を見ていた彼女だった。
そりゃそうだ。
さっきまで誰も周りにいなかったのにいきなり私が囲まれてるのだから。
恐る恐る私のもとに来て
「何があったの!?」
と聞く彼女。
「当たったんだよ。」
と答える私。
「あれ?彼女さんかい?」
「可愛いねぇ。どこから来たの?」
「旅行なの?」
「麦茶飲みます?」
「そのカメラかっこいい!」
またしても後ろで誰が何を喋っているのかさっぱり分からないのだが気がついたら隣に座らされて麦茶を飲んでいる彼女がいた。
そして大当りを終え台枠の点滅が消えたのを確認して2回権利物だった事を知り出玉を流すことにした。
驚いたのが出玉をジェットカウンターに流して玉数が出た瞬間に店長が隣のレジらしき物から直接現金を渡して来た。
「いやぁ、お疲れさんね。いいもん見れたよ」
しわくちゃの五千円札を差し出してニコニコしていた。
色々と突っ込みたかったが、もはや何も言うまい。
帰り際、店長の奥さんがビニール袋を持ってきて
「おはぎ、二人で食べてね」
とおはぎを貰った。
そのおはぎは恐らく糖尿病の人が食べたら瞬殺でこの世に別れを告げられる程に甘かった。
その後の旅の事は殆ど覚えてないが、あのパチ屋で起きた事は今でもよく覚えている。
ただ、結局なんの台だったかとかは覚えてないんだけども、あの光景は私の中で今でも20年程打ち散らかして来たパチ、スロライフで1番の思い出であり、この場で例えるのが許されるのならばあれこそが
〜私にとってのベストバウト〜
でした。
あ、その彼女とは何年か後には壮絶な別れ方をするのですがその話はまたいつか。
いや、それは書きませんけども(笑)。
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このコラムへのコメント(14 件)
こちらこそ返信が遅れてすいません!
ありがとうございます!
ジェットさんに褒められると、けっこう個人的には満足です(笑)。
いや、本当に。
思い出というのは勝手に美化されていくんでしょうか。
打ち始めたばかりの頃、あんなに面白かったあの台がスロゲーセンで久しぶりに再会して、あれ?こんなもんだっけ?という感覚はよくあります。
にしても確かに最近は1回当ててみたいというより、1回事故らせてみたいというか事故らないと出ない台ばかりで、なんともなぁな感じです。
アットホームという言葉を思い出さなくて良かったような。熱海ですし、なんとなく「和」な雰囲気に浸れたんで。不必要な横文字って、オーディエンスくらいじゃないですか? その違和感が、お客さん、店員さんとの心の距離感が近いような示唆になっているように感じました。
この機種、なんで導入して、どうやって釘調整してたのよ……と思うんですが。機種名は、わからないままのほうが美しい思い出となるような気がします。パチスロなら、不意にスロゲーセンで見つけてしまうとかありますが。図鑑系は買わないほうが良いですよ(笑)。
「1回当ててみたい」そう思わせる機種を作ろうというのを感じることが少なくなった昨今だと痛感しました(^^;;
あぁ!アットホームという言い方がありましたね。
にしても確かに当たり見た事ない台を何故置いたって話ですよね(笑)。
今は情報が早いですし、結局中身は似たのばっかですからね。
特に見た事の無い羽物を初打ちする時は本当にワクワクしたもんですよ!
今、本当に打ちたい台が無くて寂しい限りです…。
初代GODを一緒に打ったのが彼女との最後だったかなぁ。
うん、もうこれ以上は無理です(笑)。
いや本当にそうなんですよね。
ちょっと書くともう満足しちゃうんでしょうねぇ。
次の個人的な企画がもう始まってますから…。
いや、あの…はい頑張ります。
今、ネットですぐ調べられるご時世なのであの時打った台を色々検索してるのですが全く出てきません。
ちなみに彼女と最後に打ったのは初代GODでした。
それで察してください(笑)。
でも、立場上自店の台が当たることに驚いたらアカン(笑)