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元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~

元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~

2022.09.09

『フェイス・オブ・呪怨』さえあれば……。『CR呪怨』のしくじり物語。

元・店長カタギリ 元・店長カタギリ   元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~


今年の夏も非常に暑い日が続きましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私みたいなパチンコ狂になりますと夏といえばすぐにフィーバー夏祭りやハナビといったド直球のパチンコ・パチスロ機種を連想してしまいますが、もう少し変化球を探してみると夏イコール怪談、すなわち様々な怪奇現象を題材とした作品に目が向くのではないでしょうか。暑い夏を怖い話を聞いて少しでも涼しく過ごしたい、あるいは盆休みに先祖の霊を迎えるから、そういった理由もあってか日本では夏になると怖い話を耳にすることが多くなるように感じます。

そんな訳で今回は、とある夏の時期に登場したホラー系パチンコのしくじりストーリーになります。超有名なジャパニーズホラー映画のパチンコ化で大ヒットを期待されたにも関わらず自打球が顔面直撃で即退場みたいな結果に終わった、違った意味で怖い台としてパチンコ業界関係者の記憶に残る機種を紹介いたします。

 

★今回のしくじり機種は『CR呪怨』

▲CR呪怨 / 2013年

呪怨さんのホール導入時期は2013年の8月。世間的に言えば冒頭で述べた通り怖い話を聞いて涼しくなりたい時期であり、パチンコ業界的には他店舗との熱い集客合戦、いわゆる『お盆商戦』のタイミングでございます。ところがこの呪怨さん、残念ながらお客さんとホール関係者の期待に応えられませんでした。

お盆商戦のメイン機種として大量導入したウチの店でもアッと言う間に涼しいどころか寒過ぎる通路が完成いたしました。では、いったい何がいけなかったのでしょうか……?

 

しくじりポイント1:どうしてもリングとの比較となってしまったイメージ

同メーカーのホラー系パチンコの代名詞といえばもちろん『CRリング』ですよね。中でも68週間もの長期稼働貢献を誇ったリングシリーズの2作品目となる『呪いの7日間』は2011年の7月にリリースされ、デビューと同時にユーザーから絶大な支持を集めました。1998年に公開されジャパニーズホラーブームの火付け役となった大ヒット映画の世界観をパチンコで再現した本作は、ビジュアルの恐怖と大当りに到達するまでのドキドキ感を液晶画面や役モノギミックによって盛り上げ、見事に融合させた点がファンに受け入れられたのです。 ……何だか私、高校野球の序盤で球児たちの地元を紹介するアナウンサーみたいな気分になってきました。

この『CRリング』の大ヒットと『CR呪怨』のしくじりには大きな因果関係があります。どちらも同じメーカーの放った日本のホラー映画を原作としたパチンコですから当然『CR呪怨』は『CRリング』と同様の、あるいはそれ以上の期待が寄せられてしまったのです。はい、この時点で嫌なフラグが立っていますよね……。

『CRリング 呪いの7日間』と『CR呪怨』はどちらも潜伏確変搭載のMAXタイプで、スペック面での大きな違いはさほど目立ちません。この点ではメーカーが『CR呪怨』がリングの人気をそのまま引き継げるよう意識していたように感じます。スペックが原因ではない、そうなると何がいけなかったのでしょうか。

ズバリ、私は演出面にあったと考えております。リングの場合は「井戸から出てきた白ワンピ姿の超ロングヘア女が左右に揺れながらグイグイこっちに近づいてきて、決め技は圧倒的ケア不足の爪で攻撃してジ・エンド。しかもその時の目が完全にイッちゃってる」という恐怖のビジュアルイメージが完成されています。その怖さを青白い両手が超高速で落下する役モノでユーザーにインパクトを与え、大当りへの期待や出玉獲得の喜びにリンクさせていました。わかりやすく言うと「貞子のキャラクターをパチンコユーザーに完璧に認知させた」のです。いきなりズゴーンと落ちてくる手の役モノ、当時メチャクチャ怖かったですからね……。

それに対して呪怨のビジュアルイメージは「アメ食い競争の途中で強引に帰宅させられたような、大人の都合で小麦粉を顔面に塗られた少年が口を開けて立たされている」といった感じです。恐怖というより「だ、大丈夫?」と心配になります。役モノに関しても左右からジワジワと煽ってくるタイプと無数の目玉がガクンと落下してくるタイプ、どちらも『CRリング』レベルのインパクトがありません。早い話、『CRリング超え』に至らなかったのです……。

以前に私は『洋画版権モノはパチンコとして大ヒットに至りにくい』と書いたことがありますが、邦画に関しては『リング』という大ヒット作品があります。リングがパチンコとして大ヒットした要因は前述の通り、貞子ちゃんのビジュアルインパクトをパチンコでダイレクトに表現できたからだと考えております。つまり『CR呪怨』をヒットさせるためには映画のタイトルを聞いただけで多くの日本人が連想する「白い少年」をプッシュすべきだったのです。白い特大顔面役モノ『フェイス・オブ・呪怨』が非搭載であったことは非常に残念でなりません

 

しくじりポイント2:機種登場のタイミングと販売台数

これまた『CRリング』との比較になっちゃいますが、2011年リリースの『CRリング』の販売台数はメーカー発表によると42,800台。これに対して2013年リリースの『CR呪怨』は57,200台です。数字だけ並べると大差が無いように見えますが、2011年にリリースされた機種の中で『CRリング』は販売台数のベスト10にも入っていないのです。仕事人や海、慶次といったホールの看板機種が軒並み10万台を突破、北斗も7万台以上が導入された中での伏兵による大健闘だったのです。他の機種と比較してもホールに過剰に導入されなかった、この事実が長期稼働を支えた一因だったのです。

それに対して『CR呪怨』は2013年の販売台数ランキングは8位。慶次やルパンといったビッグネームを上回る導入台数となっておりまして、結果的に「過剰供給」となってしまった感が否めません。メーカーもホールも大ヒットを期待しての販売であり購入であったことが数字からも読み取れますが、この年は17万台という圧倒的な導入数となった沖海を筆頭に10万台を超える導入機種が北斗5、冬ソナ、牙狼FINAL、ガンダム、仮面ライダーと強豪揃い。ネームバリューでの見劣りも相まっていた感がありますね。

導入台数が少し多過ぎた、続々と他社のビッグタイトルが導入されてユーザーが目移りしてしまった。なんだかパチンコ店のオーナーに対する営業部長の言い訳みたいになってしまいますが、適正な販売台数とリリースのタイミングがいかに重要かを改めて思い知らされる結果と言えるでしょうね。

 

★元店長カタギリと『CR呪怨』

実は『CR呪怨』がリリースされる前年の暮れに『CRオーメン』が、そして呪怨と同年、先駆けることわずか3ヶ月前には他メーカーからではあるものの『CRクロユリ団地』が、それぞれホラー映画とタイアップしたパチンコ機としてリリースされております。どちらも当時、私が勤務していた店にはある程度の台数を導入していましたが、結果はいずれもイマイチ。

オーメンに関しては「洋画版権=厳しい」と当時から知っていましたので予想通り、クロユリもメーカーが強いから何となく買った台だったのでダメだろうなと思っていましたが、これまた予想通り。この時点で私は「ホラー物が良いというか、リングだけが別格なのでは?」と感じてはいたのですが、当時の部長がノリノリで呪怨を大量導入。そして結果はまたもや私の予想通りとなってしまいました。

この一件で私は、ホラー系パチンコはリングだけでオッケー、貞子は白いマリンちゃん。そう思うようになりました。キットクルの唄、ドストレートの超ロングヘア、オバQみたいな白い布の服、そして井戸のみならずテレビジョンからも出て来る臨機応変さ。アンタ絶対に映画は観たことないだろ、みたいなパチンコユーザーにもガッツリ認知された貞子ちゃんの一人勝ちは、これからも続くことでしょう。あ、個人的には地獄少女の閻魔あいちゃん推しですけどね。

 

★まとめ ~『CR呪怨』の口惜しさ~

今回の『CR呪怨』は本当に惜しい機種だったと思います。導入の前月に沖海とエヴァ、直後には慶次や仕事人といったビッグタイトルが続々と登場した中で「リング級の長期稼働」を期待されての大量導入は、新機種には難しかったのではないでしょうか。

スペックが悪くなかっただけに演出面、導入台数、リリースのタイミング等が少しでも違っていれば、もう少し違った結果になっていたのではないでしょうか。ま、それでも最大の要因はリングの強烈なインパクトを越えられなかった点にあるのですが。

CR呪怨のことを思い出すたびに、私は改めて貞子ちゃんのサクセスストーリーに注目してしまうのです。

 

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元・店長カタギリ
代表作:しくじり店長

シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。

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