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元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~

元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~

2022.02.02

まさかの逮捕者が……。CR移行時代の徒花『ダービー物語』のしくじり物語。

元・店長カタギリ 元・店長カタギリ   元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~

 


※見せしめ【みせしめ】
他の人が再び同じことをしないように、悪事を働いた人を処罰してみせること。ちなみに経営に行き詰ったホールが営業を終了する場合は『店閉め』とは言わず、なぜか『休業』と表記される場合が多い。            
~淋民名書房 「良い子・悪い子・パチンコ倉庫」より引用~
 


ご機嫌いかがですか、パチ7の泥人形ことカタギリです。良く言えば大人の隠れ家のような、悪く言えば指名手配犯のアジトみたいな当連載も第7回目を迎えました。

パチンコにおいて『7』の数字は非常に有難く、また縁起の良い数字。そこで今回は景気の良い話をお届けしようかなと柄にも無く高僧のようなことを考えましたが、しょせん私は泥で作られた厄災を引き受ける呪詛の道具。普段通り暗めの話題をお届けして、皆様の厄払いに役立てます。

今回はパチンコメーカー社員やホール店長から逮捕者まで出た稀代のしくじり機種をご紹介したいと思います。勘の良いベテランユーザーの皆様ならスグに「ああ、アレね」と頭に浮かんだことでしょう。そう、液晶パチンコ初期の物語シリーズのアレです。

 

★ダービー物語

▲ダービー物語

本機のホールデビューは1993年。大当り確率235分の1、出玉約2,300個の保留玉連チャン機。当時よく見かけた普通のスペックですね。機種名からわかるように競馬の重賞『東京優駿』をモチーフにしたパチンコ台です。

大当り図柄は15種類。1~9までの数字に加えて『大穴(10)』、『本命(11)』の文字、残る4つの図柄は札束(12)、蹄鉄(13)、メンコ着用の白馬(14)、そして優勝トロフィー(15)。10と11図柄は文字だけ、そのシンプルさにデザイナーさんの個性が光ります。

ちなみに、この年のダービーを制したのはウイニングチケット。鞍上の柴田政人騎手がダービーを初制覇したレースとして有名です。葦毛の馬が好きな私はビワハヤヒデ(鞍上は名手・岡部幸雄)を応援していましたが、残念ながら惜しくも半馬身差で2着。テレビの前でガックリ肩を落とした記憶があります。

閑話休題。

さきほどスペックに『保留玉連チャン機』と書きましたが、この保留玉連チャンを発生させるための内部システムと、それに伴うホール側の調整が大問題、つまり今回ご紹介する『しくじりエピソード』の元凶でございます。

 

じくじりポイント:見た目はノーマル機、釘を曲げれば連チャン機。その隠された連チャンシステムと釘曲げによる無承認変更が大事件に発展!


デジパチの大当り終了後に4個の保留玉で再び大当り発生、これが保留玉連チャン。保留玉連チャン機を遊技したことの無い方は内部的なシステムこそ違いますが『大当り終了後に4回転だけSTが搭載されている台』みたいなイメージでオッケーです。

大当り終了後の4回転が再び大当りをゲットする大チャンス。これがCR機の導入前、現金機における連チャンの基本的なスタイルでした。大当り終了後の4回転、固唾を飲みながら画面を凝視する私。数十秒後、単発出玉を自らの手でジェットカウンターへ流し、発券されたレシートを財布の中へ。これが平成初期の私の基本的なスタイルでした。ええ、当時から負けていましたとも。

で、この連チャン発生までのプロセスが各メーカーや機種ごとに様々な違いがあったのが当時の面白く、ややこしく、いかがわしいところ。

例えば大当り中の入賞のみ保留玉連チャンの対象となる機種では、大当り発生時に保留玉が満タンだと連チャンはナッシング。そういった機種の場合は保留ランプを全点灯させずに打つのが常識なのですが、当時は何も知らずに打っている方もチラホラ。今の時代だと連チャンするか否かは抽選、つまり運任せ。しかしながら当時は連チャンシステムの仕組みを知っていれば相応の打ち方をすることで収支に差がつく時代。

そういう世界で何も知らずにハンドルを握って、偶然に発生した連チャンで大喜びしていたド素人、それが私。そりゃ負けるに決まっていますよ。


さて、問題のダービー物語の保留玉連チャン発生条件はと言いますと『大当り中にVゾーンへ5連続入賞させる』というもの。

当時のデジパチにはアタッカー内にVゾーンがありまして、各ラウンドでVゾーンに玉が入賞しなければ大当りがパンクしてしまう仕様だったのです。せっかく引いた大当りでパンクしようものなら、当然お客さんはガッカリしてしまいます。そこでホール側はパンクが発生しないように『大当り中にVゾーンに入賞しやすいような』調整を行うのが普通だった時代なのです。

ダービー物語さん、そこに目をつけました。保通協の型式試験時は釘が普通の台、ホール側の手によって『Vゾーンに入賞しやすく』調整された後には連チャン期待度大幅アップの台へと変貌。Vゾーンへの連続入賞というシステム自体は万人向けであり、だからこそダービー物語は大人気機種として注目されたのでしょう。

ところが、検定を通過した台が釘曲げによって連チャンしていると知った『お上』が動きます。


1993年10月19日メーカー本社および埼玉県の同社の営業所に捜査が入り、実機や仕様書などの関係書類を押収。この事態は新聞にも掲載され、普段パチンコを打たない人々の目にも触れることになります。さらに翌日以降、同社の社員やダービー物語を導入していたホールの店長までが逮捕(全員が起訴猶予処分)され、業界の内外に大きな衝撃を与えたのです。

かくして一連の騒動はいわゆる『ダービー物語事件』としてユーザーだけでなく、パチンコに関心の無い一般の方々にまで知られることになったのです。

当時、私はまだ20歳。ダービー物語事件によって「やっぱり怖いわ、パチンコ。でも、色々な仕組みがあるのだな」と。警察が動いた事件に対する恐怖感と、自身の理解の範疇を超えたパチンコの内部仕様に奇妙な感心を覚えたのです。そしてパチンコで勝つためには知識が必要なのだとようやく気付いたのです。

その近道こそ、ホールでの勤務。数か月後、私はその好奇心に従い見事にパチンコ業界に飛び込んだのです。ま、結果的にパチンコで勝てるようにならなかったどころか自らの手でパチンコ店を潰しちゃいましたけど……。

 

じくじりポイント:騒動の終了、そして時代の変革。


さて、一連の事件の後にダービー物語がどうなったかといえば、特にシマ封鎖されたわけでも強制撤去の憂き目に遭ったわけでもありません。普通にホールに設置されたままでした。

ただし事件後、明らかに違っていたのは稼働率。以前、年配層やサラリーマン、はたまた多くの女性客で溢れかえっていた近隣ホールのダービー物語のシマを久方振りに覗いてみると、そこに遊技客の姿は皆無。アタッカー周辺の釘を元に戻した、すなわち機種の魅力となる『保留玉連チャン』が発生しにくくなってしまったダービー物語のシマは、かつての熱気を完全に失っていたのです。

「別に、この台が悪かったわけじゃないだろう」と、弔うような気分で黙々と玉を弾いている私の気持ちに応えてくれたかのように早々に大当り。そして2度目の大当りも程なくして発生。しかしながら当然のようにどちらも単発終了。そりゃそうだよな、俺は何を期待していたのだろう、まるで別れた彼女とヨリを戻すのに失敗したような気分で、2枚のレシートを景品カウンターの熟女に手渡したのでした。この熟女、メチャメチャ面倒くさそうな顔をしていたのを30年近く経った今でもハッキリと思い出しました……。


この騒動を境に保留玉連チャン機、言い換えれば現金機の時代は衰退の一途を辿り、代わってホールでユーザーの人気を得たのが『合法連チャン機』となるカード式パチンコ、すなわちCR機です。

普及のため連チャン性能(確率変動など)が合法化されたCR機は、現金機を大きく上回る出玉性能を有し、中でも爆発力の高い『CR花満開』がビッグヒット。果たして誰かの思惑通りに時代の主流は、完全にCR機へと移行していったのです。

ダービー物語の一連の騒動は保留玉連チャン性能を有する現金機をホールから排除するため、そしてCR機を普及させるための『みせしめ』となったとする説もありますが、真偽のほどは不明です。しかしながら結果的にダービー物語事件がCR機への移行のきっかけとなったのは事実。

1992年の登場から今年で30年。CR機の歴史も先月末(2022年1月末。一部例外エリアあり)を持って終了となりましたが、その代役として現在ホールを賑わせている『P機』の一部も激しい出玉性能でユーザーの支持を得ているのもまた事実。現状『みせしめ』のような形となっているのがパチスロで、店を閉めることになったパチスロ専門店も多数。

出る杭は打たれると言いますが、この業界では新たな杭を打つために『厄介な杭は抜かれる』とか『新たな杭はより尖っている』などと表現するのが的確なのではないでしょうか。いずれにせよ、時代は繰り返されているなと感じるのは私の飛躍した考え方でしょうか?

 

★まとめ:ダービー物語の悲運。

単発でも当たればラッキー、保留玉連チャンすれば儲けもの。

そんな穏やかな現金機時代から確率変動による大連チャンを追い求めて打ち続けるギャンブルマシンのCR機時代への移行。そのきっかけとなった『ダービー物語』は大人気機種としての全盛期から一転、みせしめとして粛清され人気を失った不遇台と言えるでしょう。

ユーザーの目に見える形であってもそうでなくても、パチンコ業界の時代の節目には必ずメーカーやホールの犠牲を伴うのだと、私が後になってはじめて気付かされたのが本機に関する一連の事件なのでした。

ま、とはいえ節目の大半はメーカーやホールの『やり過ぎ』が原因で、みせしめとして槍玉に挙げられるのは概ね自業自得なのですがね。

 

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この記事へのコメント(1 件)

プロフィール画像
貯金爆弾
投稿日:2022/02/02
ビワハヤヒデ!
友達が大ファンで、北海道の牧場まで引退後の姿を見に行きましたよ。当時
、自分は北海道に住んでいたので、アッシー君(死語)を買って出たのですが、友達の奴、何時間も牧場でその姿に見とれてて、すげぇ暇だったことを覚えてますw

って、何の話だっけ?
あ、プリンセス物語ね(違う)

元・店長カタギリ
代表作:しくじり店長

シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。

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