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侃々諤々

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侃々諤々

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玉のゼロさん
すっかり使われなくなっちまった。 そんな哀愁を込めてこの名前を着けました。
投稿日:2017/12/11 09:22

連投となってしまいました。
少し前から、自分の時間を持てるようになっております。
喜ばしいのか、どうなのか。
今はただ、自分のできる事を残したいと思います。
さて、それでは思い出話を紡いでいきましょう・・






『元締めいらっしゃいましたー』

当時は今ほど、インカムに対する制限はありませんでした。
お客様をあだ名で呼ぶことは現在は厳禁ですが、
その昔、『元締め』とあだ名される常連様がいらっしゃいました。

元締めと呼ばれるこの男性。
推定70代前半くらいのお爺ちゃん。
紺色のウインドブレーカーに茶色の作業ズボン。
上下共にタバコの焦げ跡のような穴がチラホラ開いて、
頭髪はモーゼの十戒のようにぱっくり真ん中がなくキレイな白髪。

座るのは決まって、『必殺仕事人Ⅲ』。
私が入社した頃にはとうに旬は過ぎておりました、
空いている台へストンと着席。

当時はイベントも許されておりました。
週に一度の『仕事人の日』というイベント。
プロ用に1、2台ワープをアケるそんなイベント日

時は流れ、アウトの低下から徐々に減り始める仕事人Ⅲ。
それに伴い、ワープをアケる事も無くなった『仕事人の日』も終了。

少し時は流れて、

『疑似連は多くなるけど、基本部分変わらないから元締め気づかないべ』

と、仕事人Ⅲ桜verと総入替された時の台数は4台。
1台、また1台と桜verも減っていく。

仕事人Ⅲ祭verを1台新規で導入しどちらを選ぶか確認する。
どうやら甘デジはお気に召さないようで、
桜verしか打たなかった。
台番は562番台。

バラエティに1台、別名『元締め専用席』と呼ばれた桜ver。

そんな当店に、仕事人Ⅳが導入される。
BIGサプライズ筐体一発目、
『元締め、どっち打つかな?』
店長は嬉しそうに笑っていた。

週に一度でも、その台を打ちに来てくれるなら
俺はその台を外さない。打てるってのはパチンコ打ちの幸せの一つだろ?

私を育ててくれた店長のこういう所は大好きだった。
だけど、それを言うなら桜ver導入時に1台通常ver残した方が・・・
そう思ったがその言葉は飲み込んだ。

スベり疑似連という大々的に変わった疑似連部分すら、
元締めは気づいていなかったかもしれない。
何一つ変わらぬ表情で打っていたのですから・・

そんなこんなで仕事人Ⅳの導入が決まっても、
元締めが完全に移行するまでは桜verは外さない方針だった。

入替告知が張り出され、お客様に対してアピールが始まる。

『新しい仕事人出ますよ』

ご案内に対して元締めは言葉は発せず、
無言のままにニコッと笑った、
そういえば元締めの声は聴いた事がない。
笑ったって事は楽しみにしてるのかな、
そんな事を考えながら、その夜の入替作業。
デジタル傾斜計をあてがいながら、ビス止めし
一足先にサプライズ筐体の重さにサプライズし、愚痴をこぼした。


仕事人Ⅳが導入されて、仕事人の島は活気に満ち溢れていた。
今でこそ、ボタンが飛び出す。そんなのは当たり前。
BIGサプライズ枠のボタンの大きさなど今ではBIGでもなんでもない。
それでも当時は『一・撃・必・殺』の文言の後に飛び出るボタン。
期待と不安と共に押し込む一撃。
賛否両論あるかもしれないが、
『サプライズ』という言葉に偽りはなかったと、私は思う。
前日の入替作業で腰に違和感を感じながら確かにそう思った。

大反響の仕事人Ⅳのシマを元締めが興味深そうにのぞき込む。
お昼過ぎ頃に来店する元締めは混んでいるシマは嫌なのか
元締めはいつもの桜verばかりだったが、
時間が経ち、空き台が目立ち始めた時。
元締めは仕事人Ⅳへ着席した。

表情は一切変わらない、
それは今までもずっと一緒、
純粋無垢に画面を見つめる。
ボタンの『連打』も純粋無垢なままに
押せば押すほど当たりに近づくと信じてやまない
純粋無垢な気持ちで、
静と動と言わんばかりの8ビートを刻んでいた。

元締めはすっかり仕事人Ⅳが気に入り、桜verのアウトは皆無となり
桜verの撤去が決まった。

元締めは仕事人Ⅳを打ち続けた。
減台されて、562番台へ最後の1台が移動され。
途中で桜花乱舞ver、お祭りわっしょい、と仕事人の亜種が出たが。
興味を持って少し打っても、結果は元祖の仕事人Ⅳへ戻ってくる。
結果として、562番台の仕事人は残り続けた。

仕事人Ⅳは世間的にも珍古台に近づき
世の中がMAX機撤去と、激震が走る中。
関係ござらんと、元締めは562番台の仕事人Ⅳを打ち続けた。





MAX機撤去で激震したパチンコ業界に、激震する筐体を引っ提げて
『仕事人Ⅴ』がやってくる。


そんな告知を始める少し前、事件は起こった。


10年間変わらない、タバコの焦げ痕の残る上着とパンツ。
いつでも562番台に元締めはいた。

そんな今年の春に、事件は起こった。

事件当日はオーナー視察日、事務所で鼻をほじりながら
パソコンを見つめている訳にはいかなかったし、
『お客様第一ですから!!』
という、視察日ならではのキャラでホールを颯爽と駆け回り、
オーナーからのキラーパスや突っ込みから逃げ回ろうと
打算をしながらホールを走り回る。
ええ、家族のためなら犬にもなります。

『全体の落ち玉拾い入りますのでフォローお願い致します』

ホールの落ち玉を拾う、
今日はやけに元締めの周りに落ち玉が多いな・・

食い入るように斜めになりながら、純粋無垢に元締めはボタンを連打する。
連打する元締めの上皿へ周りに落ちていた玉を返す。

『他のシマからも拾ってきた玉も入ってるから少し増えでるっすよー』

軽く冗談を言いながら微笑むと、元締めも微笑みながら

『うー、あー』

初めて聞く元締めの声、
何を言ってるのかは全く聞き取れなかった、
だが返事を返してくれた。
言いようの無い喜びが心を包み込む。
認められたような気がしたから、
もしかしたら私が初めて声を聴いたスタッフかもしれなかったから。



次の瞬間、元締めが視界から消えた。
正確に言えば、椅子から滑り落ちるように転げた。


『お客様!大丈夫ですか!?』


元締めは床で小刻みに震えながらも、
『うー、あー』
と言いながら笑顔を見せた。


『お客様!私の手につかまってください!』


私は手を伸ばすも、元締めは左手でイヤイヤと振り
『うー、あー』
と言いながら私の手を拒んだ。

自分の力で立ち上がれると、左手で椅子を掴んだ。
しかし、起き上がれずにまた床に倒れた。

多少強引だが、持ち上げ、椅子に座らせ、
『救急車呼びましょうか??』
元締めはやはり手をイヤイヤと振り
『うー、あー』
と、喋る。


今まで元締めの声は聴いた事がない、
だから確信は持てない
ただ、これは明らかに言葉じゃない、
もしかして、言語に障害が出てる?


思うや否や疑惑は確信へと変わる。
元締めが急に立ち上がり、左足で勢いよく一歩目を踏み出し、
小刻みに右足は震えながらそのまま前のめりに倒れていく。
思いがけない瞬間はスローモーションになるという、
スローモーションに感じれたら、どれだけ幸せだったろうか

もう少しゆっくりだったら、私の手は元締めの体を支えられたかもしれない、
この時、私の手は元締めに届かなかった。


前のめりに倒れ、鼻と、口を切り、血を流す元締めなど見たくなかった。


本人の意思を無視して救急車を呼び、
救急隊員の方が到着、
予想通り、元締めの右半身はマヒしており、
救急隊員さん達は『典型的な症状だね』と話している
ストレッチャーに乗せられ、元締めは運ばれていった。


その日の閉店後、顛末を店長に伝えると。


『戻ってきた時、どっち打つかわからないから残しておくよ』


562番台の仕事人Ⅳは平均アウト1,000にも満たないまま。
562番台へ残る事を許された。
元締めからの指令を待ち続けていたのかもしれない、
多少乱暴に連打されるあの8ビートを、また味わいたかったのかもしれない。

元締めはまだ、戻らない。
残してくれていた店長は異動となり、
新しい店長がやってきた。

『なんで、こんなアウトの台残してるの?』

新しい店長へ、この件を伝えるも。

『でも、現実もう何か月も来てないんでしょ?』


こうして、562番台から仕事人Ⅳは姿を消し、
元締めの席は無くなった。


それでも、仕事人Ⅴがあるから。


この先、元締めが戻ってきたら。
激震予告を楽しんでくれるかな、
ボタンが刀になったから、8ビートは刻みにくくなったかな、
サブ液晶とか目で追い切れるかな、
音量の下げ方、教えてあげなきゃな、

戻ってきて・・くれるかな・・・

救急車を呼ばれたのが恥ずかしくて
もう行かれない、別の店に行こうってなってて。
紺と茶色のコントラストで、
セブンスターをふかしながら、
トランペットを鳴らしていてくれたなら

私はそれでもいい、

新しいサプライズを、
CGとなっても蘇った中村主水を、
体感してほしかった・・・・



さて、冒頭の時間が増えた件ですが、
私、この度FA宣言をさせていただきました。

率直に言うと、辞めるという話ですね。

一通り引継ぎ作業をこなしながら
少しずつ、自分の仕事がなくなってきています。


ど田舎の主任職を拾ってくれる法人があるかはわかりません。
何故こんなことになってしまったかの経緯は
次の機会にでも紡がせていただきます。


今後は全国転勤も含めて、なりふり構わず生きていこうと思います。
ツライことは山ほどあります。
男として生まれた以上、野望もあります、

ただ、失敗を考えると恐怖しかありません、

『それでも生きていこう』

その言葉を胸に、頑張ります。

13

玉のゼロさんの

※本記事はユーザー投稿コンテンツです。

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このコラムへのコメント(16 件)

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玉のゼロ
投稿日:2017/12/19
らびっとパンツァーさん
コメントありがとうございます。
恐らく身寄りのない方だったので退院してたらしてたで不安と言うか心配事もあったりするのですが・・
次回はもっと切ない思い出の予定です、
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らびっとパンツァー
投稿日:2017/12/17
ハタハタと涙がとまらないコラムでした…!!
戻ってきて…!と、願いながら読ませていただきました…
そして、お店も、良い意味でこんな風に待っていてくれるなんて泣けるじゃありませんかっ…!!
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玉のゼロ
投稿日:2017/12/16
パチ7編集長さん
私はずっと、コラムに度々出てくる店長の背中を追っています。

育ててくれて、
背中を押してくれて、
助けてくれて、

『迷ったらやれ、責任は俺が取る。』

その言葉に助けられて今があります。
そんな人物になる為、頑張ります。

書きかけの思い出はいっぱいありますので、今後も投稿させて頂きますω
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パチ7編集長
投稿日:2017/12/15
玉のゼロさんのホールに行ってみたいです。

これからも素敵なエピソードをお待ちしております。
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玉のゼロ
投稿日:2017/12/12
とんきさん
キレイな言い方ですが、最終的にはこういう商売ですから。恨んでるお客様多いと思います、楽しんだ対価としてお客様が感じていただけるように今後も勉強していきます。期待しないで待っててください笑
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とんき
投稿日:2017/12/12
玉のゼロさん
お〜それは朗報だ。になるよう期待せずにお待ち申し上げておりますorz

玉さんの愛が溢れるホールでうってみたいw
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玉のゼロ
投稿日:2017/12/12
ユイリィさん
何気に珍古店なラインナップだったんです、さすがに壊れて部品供給も無理ってなったら外しましたがお客様には謝罪をしてから外す、そんな環境で私は育てて頂きました。
ご指摘通り自由契約ですね笑。その辺り曖昧でして、ご指摘ありがとうございますω
頑張って生きていきます、
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玉のゼロ
投稿日:2017/12/12
元職長さん
ですね、離婚も考えて嫁ちゃんに今後の事を伝えたら着いてきてくれると言われた時、嬉しかったです。
私の数少ない嫁ちゃんという財産のために今後頑張ります。
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玉のゼロ
投稿日:2017/12/12
kamoさん
長く愛される主水さんのように蘇ってくれれば・・
最近、ボーッと『生きていてくれればいいんだけど・・』って考えます。
身寄りもなさそうな方でしたので・・
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玉のゼロ
投稿日:2017/12/12
あきうめさん
所轄や組合とかで同じ管轄内の事務所の方は結構顔合わせてますからね汗
正直プライベートの問題含めて県内にいたいと思わないので遠方前提で考えております。
そういえば、こちらでは祝福しておりませんでしたね。
受賞おめでとうございます、私のマブダチ様

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