恐らく史上初。パチスロライターが実のオヤジにガチ人生インタビュー！あしののオヤジ編！

あしのインタビュー・ウィズ・スロッター（稀にパチンカー）

「えーと……。オヤジ、今何歳だっけ」

「……72たい」

「職業は？」

「大工ばってんが……。なんねいきなり？」

「いやぁ……。インタビューしようかなぁと……」

「はぁ？　お父さんにか？」

「うん……。ちなみに録ってるからコレ。ICレコーダー……」

「……お前は一体なんばしよるとか」

「なんかまあ……そういう仕事しててさ……」

「仕事ォ？　仕事ね？　こいが？」

「まあ……。仕事……。かな？　仕事なのかな……」

「飲み過ぎたい、お前。アルコール中毒なるばい？」

▲やたら高級な仕出弁当。

八畳ほどの居間。テーブルの向かいにはハゲこなした老人が一人。ジュン。

正真正銘、俺のオヤジである。御年72歳。終戦直前に生まれたバリバリの焼跡世代だ。

なにがどうなってこうなったのか思い返しても良く分からんが、祖母の一周忌の経を上げたあとで仕出し弁当を食いながら親子でビールを飲んでたら、いつの間にかこうなった。なんか申し訳ない。インタビュー・ウィズ・スロッター。十五人目のターゲットはマイ・ファザーである。

業界人でもなんでもねぇ大工。 ……いや、ただの大工ではない。 1960年代初頭のぱちんこを知る大工である！それでは行ってみよう。ヒア・ウィー・焼跡！ファイッ！

「何から訊こうか……。あー……っと。爺様について訊いていい？」

「爺様？　清二さんね。お父さんのオヤジさんの事やろ？」

「そう。俺会ったことないんだよね」

「当たり前さ。すぐ死なしたもん。怖かったぞぉオヤジさんは」

「軍人だったんだっけ？」

「そう。陸軍」

「ん？　海軍だろ？」

「いや陸軍よ」

「なんで陸軍だよ。どう考えても海軍だろ。佐世保だぜここ」

「佐世保に住んどるとはたまたまやけん。オヤジさんはもともと佐賀ばい」

「佐賀ッ！？　ダサッ！　マジで！？」

「ちなみにお婆ちゃんは大阪やけん」

「うわ、佐世保関係ねぇ！」

「そうばい。佐世保はたまたま。お前知らんやったとか？」

「知らんわ！　教えてよそういうの！」

「お婆ちゃんの生きとらした時に聞いとかんば。そがんとは」

「いやぁ……衝撃だわ……。マジかよ……。ウチ5代くらい前から佐世保に住んでたのかと思ってたわ……」

▲満州にて（たぶん）中央が爺様らしい。

「爺様、結核で亡くなったんだっけ？」

「そうたい。お前が学生時代に住んどった部屋。あそこで死なした」

「……うわぁ」

「お偉いさんやったけん、公職追放でなんも仕事できんでさ。しかもすぐ結核になって寝たきりたい。そいけん、貧乏やったぞォウチは……」

「ああ……なんか聞いたことあるなぁその辺……。でもそれ退職金？　みたいなのスゲー出たんじゃねーの？」

「わからん。聞いとらん。でもあそこ……湊町あるやろ？」

「外人飲み屋街らへん？」

「そう。あの一帯は昔赤線でパンパン屋（売春宿）が一杯あったとけど、その土地ば退職金代わりに貰わしたとって。でも『パンパン屋のある土地なんか要らん』って、すぐ人にタダで譲らしたってさ」

「えー……マジで。あの辺いまスゲー高騰してるぞ……」

「まあ、そういうね……高潔な人やったっちゃろねぇ……」

「うわー勿体ねぇ……いらねぇわその高潔……」

「ちなみに四ヶ町の近くに昔『トラ屋』ってデパートのあったとけど、その辺におるパンパン屋の事を『トラパン』って言いよったとばい」

「なんの話してんだよ……」

★戦後エピソード。

「そういや婆ちゃんが昔『ピカドンの光を見た』って言い張ってたんだけど、あれマジなのかね？」

「知らん。なんて言いよらした？」

「なんか井戸で水汲んでたら西の空がピカッと光って、翌日新聞に『新型爆弾が落ちました』って書いてあったから、ああアレか……って。絶対気のせいだと思うんだけどさ」

「あー……いや……待て。それホントかも知れんぞ。似たごた話は結構あるけんね、この辺。お父さんも子供の頃に学校の先生から聞いたりしたし。ピカドンの光は、佐世保でも見えたっちゃなかかねぇ……あんまり見とう無かけど」

「うおお……。何も言えねぇ……。あとなんか終戦直後っぽいエピソードとかない？」

「うちの竹やぶ、しばらく焼夷弾あったとぞ。佐世保は大空襲のあったけん」

「……えマジで！？　そこ？　その窓の向こうの竹やぶ！？」

「そう。そこ。焼夷弾」

「危ねぇ！」

「危なかよ。焼夷弾は。石坂町の親戚ん所なんか、屋根ブチ破って３発くらい家ン中に入ってきたってさ。ありゃもう燃料のギャンギャン燃えるけん、消そうってしても無理ってさ。２発目までは家族総出で消そうってしたけど、３発目の落っちゃけて来た瞬間全力で逃げた！　って言いよらしたモンね」

「２発は消せるんだ……」

「そう。３発は無理って。木造やし。にしても、佐世保大空襲は軍隊の建モンには爆弾落ちとらんちゃもん。民家ばっかりたい。ポンコツやもん米軍！」

「全然知らなかった……」

「お父さんたちの世代はみんな貧乏でさぁ。どがんかして小遣いば稼ごうってして……。あいは小学校の頃かなぁ……。お父さんの一コ上の先輩ばってん、焼夷弾に目ば付けてさ。あれさ、周りが銅で出来とるったい。溶かしたら銅の塊の出来るけん、そいば売ったら10円とか……20円とか……。幾らくらいか分からんけど、売れるとさ」

「お……おう……」

「で、その辺ば堀り返して不発弾ば取ってきて」

「メタルマックスか！」

「んで焚き火で溶かして」

「危ねぇ！　ヤバイだろそれ！」

「そりゃもう、もう爆発たい」

「え！？」

「夏休み終わってから、こがんやって……両手の袖のプランプランなって学校に来らして……。腕のふっ飛んだって」

「うわぁ……マジかよ……。焼け跡世代やべぇ……」

「そがん話、一杯あるよ……」

「いやもういい。お腹いっぱいです……」

★その頃のぱちんこ。

「オヤジ、パチンコ好きだよね」

「好きたい」

「初めて打ったのいつ？」

「16……くらいかなぁ」

「ええと……1961年……か……。うわ、ケネディ就任の年……」

「お前シズオさん知っとるやろ」

「あー……オヤジの友達だよね。知ってる」

「シズオさんはねぇ、良か兄ちゃんでさぁ。色々遊びば教えてくれてね。カッコ良かったとよ。シズオさん」

「千昌夫に似てるよね……。んじゃパチンコもシズオさんに教えて貰った感じ？」

「そう。ジュンちゃん、チョコレート貰えるけん、行こう！　って言われて」

「ほお……？　当時のパチンコってどんな感じだったの？」

「わからん。なんかレバーのあってさ。引くったい」

「スマートボールみたいな？」

「違う違う。スマートボールじゃあ無か。パチンコたい。でもレバーば引くとさ。ピーン、ピーンって。そしたら玉の飛ぶと」

▲たぶんこの辺の台です。（写真は日本遊技機工業組合のHPより転載）

「面白かった？」

「面白かったよ。なんか大人になった気分やったね。シズオさんに連れられて、大人の人の間に座ってさ。こうやってレバーば引くったい」

「勝てた？」

「勝てた勝てた。負けた事なんか無かよ」

「……マジで？」

「なんかねぇ、台の後ろに女の人のおるとさ。今みたいに当たったら自動で玉が出て来るんじゃなくて、当時は当たったら台の後ろの人が玉ばジャラーって流してくれて」

「うそん」

「そうたい。で、シズオさんくらいになりゃ台の後ろの女の人と大人の関係ば持っとったけんが、もう女の子もシズオさんの顔見ればそれだけで玉ばジャンジャカ流してくれて、チョコレートでも日用品でもタバコでも取り放題たい」

「どういう攻略法だよ……！　てかマジで？　店員さんのさじ加減なの？」

「さじ加減さ。当時はね。そういう時代やったと」

「そりゃ負けねぇわ……。当時のパチンコ屋の雰囲気を教えて」

「雰囲気？　いやーもう、独特やったよ。独特」

「怖かった？」

「怖くはなかったけども、女性が一人で行くのはとてもじゃないけど無理やったね。そがん雰囲気じゃあない。魚市場のセリが終わった人が長靴にエプロンのまんまずら～っと並んでレバーを握ってたり……。あとドロランって分かる？」

「なにそれ」

「何て言えば良かとかね……。お前これ何に使うとね？　仕事？」

「え。何それ。ちょっと。ドロランって何」

「うーん。覚せ……。いや、なんだろう」

「いますげーヤバイ単語が出そうにならなかった？」

「いや、違うったい。違う。似て異なるモノたい。睡眠薬って言えば良かとかねぇ……。上手く表現出来んっちゃけど、まあ薬たい」

「薬……」

「当時のカッコよか兄ちゃん達がこぞって使いよった睡眠薬っちゃけど、もう臭いで分かるとよ。臭かっちゃもん。お父さん使った事ないけど、もうドロラン飲んだ人がさ、フラッフラになって白目剥きながら打ちよるとさ。お父さん笑ってからさ。ホント。面白かったぞアレは」

「イヤだわいそんなの……！」

★その後。

「オヤジそれからずっとパチンコ打ってたの？」

「いや……。暫くは打ちよらんやったね。お父さんはシズオさんと離れ離れになったし」

「ああ、東京に出たんだよね」

「その前に自衛隊やね」

「知ってる。すぐ辞めたんだろ？」

「すぐ辞めた。３ヶ月で辞めた」

「なんでまた……」

「呉の教育隊でさぁ、船の上に缶詰になってずっと訓練するんだけども、いやーもう欲求不満たい」

「欲求不満……」

「そう。遊びたくてさ。広島の街がねぇ、こう、キラキラと輝いて、お父さんば誘いよるっちゃもん。で、お父さん脱走してさ」

「脱走ッ！」

「憲兵の探しに来るったい」

「来るだろそりゃ」

「当時ねぇ、田舎の三男坊は大体自衛隊に入りよったっちゃけど、そういう人たちは他に行く所も無かけん、我慢するとさ。そうして今はもう年金生活たい。でもお父さん長男やけん。実家のあるけんさ。どっかで甘えのあったけん、欲求不満に負けちゃ逃げ。捕まって、また逃げて……」

「辞めちまえよもう……」

「そう。最終的にはさ、なんかもう訓練の内容が『潜水』とかばっかりになってきて。ハハァン……さてはこりゃ潜水艦に乗せられる流れやねぇってウスウス気づいて辞めたね」

「（笑）」

▲左がオヤジ。右はオヤジの弟のケイ。髪なんか飾りですよ。

「んで自衛隊辞めて……東京？」

「そう。お前も前に会ったろう。ハギワラの社長と出会って、なんやかんやあってキミコと出会って、んでお前が生まれて……」

「一気に話飛んだなぁ……」

「話す事なんかあんまり無かよ。平々凡々としております」

「なるほどねぇ……。パチンコはどう？　ずっと打ってるよね」

「お父さんは東京に居る間はパチンコより麻雀ばっかいしよったね」

「あー……。なんか知ってる。超負けたんだよね」

「んあー負けたねェ！　家一件建つくらい負けた。一回の金額がバカんごと太か（とんでもなくおおきい）けん、ドツボにハマってとんでもない事になってさ。ダメばいアレは。お父さんの暗黒時代やね」

「あ！　婆ちゃんに金出させたろう！　100回くらい聞いたぞその話」

「しょうがなかやろうもん。殺される所やったとばい」

「カイジが……。で、パチは？　パチの話しようぜそろそろ」

「パチンコなぁ。麻雀から足洗って、そこからかなぁ一人で打ち始めたのは」

「好きな機種は？」

「海やね」

「出たよ……。あとは？」

「仕事人」

「新しいヤツ打った？」

「打っとらん。お父さんは今はもうイチパチ専門やけん。イチパチに新しい仕事人来たら打つよ」

「うわぁ……。遺伝だわコレ……トホホ（あしののブログの名前は『5スロで稼げるか？』です）」

「あとは美空ひばりやね」（※京楽の『CR美空ひばり不死鳥伝説』）

「美空ひばり……」

思わず黙る俺。数あるパチンコの中で美空ひばりを選んだジュン。そこには親子にしか分からない……というか俺にしか分からない符号があった。オヤジがもう33年も前に別れた生涯でひとりきりの妻。要するに俺の母だけど、彼女は『美空ひばり』のモノマネを十八番にしている。

また、オヤジとオフクロの二人が過去、渋谷で営んでいたスナックには、たまたま来店した美空ひばり本人の直筆サインが閉店するまで飾ってあったらしい。要するに、美空ひばりというアーティストは、オヤジとオフクロの二人の中で、特別の存在なのだ。

「ふうん──美空ひばり、ねぇ……。オーケー。わかった」

「うん。終わりですか？　もうお父さん疲れたばい」

「いや待った。質問ラッシュ行きたいんだけど、いい？」

「なんやそれ。よかよ」

「巨乳と貧乳……。あ、いいや。今回はいい。じゃあ……パチンコ業界についてなんか言いたいことある？」

「は？　お前一体なんの仕事してんの？」

「いいから」

「んー……。ギャンブルはもう、胴元が勝つモンやけん、それはもうしょうがなか事です。あとはもう本人のアレやけん。来るものは拒まず……。勝手にさせておけば良か。だいたいみんな、ある程度お金ば使わんと分からんちゃけん。パチンコがワルか！　みたいに言う人もおらすけど、結局は全部本人たい。自己責任。パチンコは悪ゥなか。と思います」

「深いような浅いような……なるほど……。じゃあ次。生まれ変わってもパチンコ打つ？」

「打つやろねぇ。海かなぁ……」

「サム何回くらい見た事ある？」

「サムってあのムキムキか？」

「そう」

「3回くらいかなぁ」

「少なッ！　もっとあんだろ……」

「いや、そんなもんよ……」

「うーん。じゃあ最後、人生を振り返って何か一言くれ」

「人生？　お父さんのか？」

「うん」

「そうやねぇ……」

オヤジは仕出し弁当のエビを剥きながら、真顔で行った。

「お前が生まれた時かなぁ」

「……え」

「もう、涙の出るほど嬉しゅうてさ」

「…………」

「うん。それかな。振り返って。ハイライトさ。お父さんの人生の」

「…………うん」

★総括。

以上。オヤジの人生設定推測だ。

なんだろう。絶対低設定だと思う。

千円で2回しか回らないモンスターハウスとかにしとこう。オヤジの人生はそれ以上でも以下でもない。ちょうどそのくらい。

でもその激渋台をぶん回してくれたお陰で俺が今ココにいる事を思うと、素直にありがとうと言いたい。

ありがとうございました。お父さん。

というわけで次回は大物の登場。うちいくTVからついにあのかたが……！そうです。「ヤルヲさん」です。

うおおお……スーパー緊張するぜ。というわけで次回をお楽しみに！シー・ユー・ネクスト・万枚！チャオ！