しくじり店長・第36話

元・店長カタギリ元・ホール店長カタギリのしくじり店長

「やっぱり時代はエヴァだよ、エヴァ！！　俺もアニメ観たけどアレ、良いよね～！！　特にミサトさん最高！！　　あんなイイ女はなかなかいないよ～！！　ウチも今度、中古で大量導入することになったからカタギリさん、ヨロシクね！！」

私と同様にパチンコのエヴァにハマッてしまい、アニメも全話鑑賞したトオヤマさんはすっかり上機嫌だ。　この人、猪木の新台入替で大失敗したことなどすっかり忘れているのだろうか？

今回導入となるスペックはもちろん大当り確率1/397.2、確変継続率59％の『SF』である。通常時から出玉ナシで突入する確変状態、いわゆる突確でパチンコファンの注目を集めた人気台。　中古とはいえ、定価以上の高い買い物なのだから今度こそ間違いなく稼働が上がってくれるだろう。いや、上がってくれなきゃ困るし、上げようと頑張るしかない。

それにしてもトオヤマさんは切り替えの早い人だ。こんなアニメの台なんて店に入れても無意味ですよ、と数か月前に私に言い放ったセリフなんて、彼はきっと覚えていないに違いない。だが、この変わり身の早さもコンサルの仕事にとっては必要なのだろう。

自分が良い台だと思わなくても結果が出ている台であれば、自店に導入して大切に使う。そうやって数字を上げていくのが彼の役割なのだから。少なくとも私はそう思っていた。そう、あの日までは。

エヴァ導入を目前に控えた私は、いつになくハイテンションだった。自身が大好きな台が、自分の店にも導入される。それはパチンコ店で働く人間にとって大きな楽しみのひとつだ。大連チャンさせているお客様の姿を微笑ましく、そして、少し羨ましく思いながら見つめる。大ハマリしているお客様の背中に向かって、頑張れと心の中から後押し声援を送る。集まってくれたお客様と一緒に、自分も楽しんでいるような空間で仕事が出来るなんて、素晴らしいことだ。たとえそれが、自分自身で決めた導入台ではなくとも、自らの手によって調整されたパチンコ台ではなくとも。

ところが、である。満を持して迎えた新台入替初日、お客様からの頂いた声に私は耳を疑った。

「時短100回で上皿の玉が全部なくなるって、ちょっとひど過ぎるだろっ！？」

「コレはさすがにマズいでしょ、確変なのに全然チューリップが開かねえよ！？」

遊技客からのクレームに慌てた私が黙々と打ち続けているお客様の背後に立ち、そっと覗き込んだ盤面で銀玉の軌跡を追う。皆さんのおっしゃる通り、スルーを抜けていく玉の数が異常に少ないのである……。

これはさすがにマズいだろ、という訳でお客様からのクレームををそのままトオヤマさんに伝えるも、返ってきた言葉に私はまたしても耳を疑うことになってしまったのだ。

「いや～、突確ってのは当たりってことじゃないですか。当たっているんだからお客さんも金を使ってくれるから気にしなくていいんですよ」

え、それ日本語でオッケーですか？　意味がわからないんですけど……。

ホールコンピューターで確認した数字で、今度は目を疑うことになった。確変中の出玉の増減を数値化した『確変ベース』と呼ばれる値。確変中に玉が増えも減りもしない値は100であるが、一般的には90～95前後の値になるように調整されることが多い。つまり確変中に玉が微減する状態が、高交換率店での妥当な営業スタイルである。

それにもかかわらず、自店のエヴァＳＦの確変ベースはなんとビックリの60前後。玉を打ち出せば1分毎に40発の玉が減っていくという、恐るべき鬼調整だったのである……。

高額の機械代金を早期に回収するための、ボッタクリ営業。わからない話ではないが、限度というものがあるだろう。明らかに間違ったやり方での営業に対する怒り、だがその感情を言葉にすることは出来なかった。

ホールで働く人間は、お客様からお金を頂いているという意識がある。だからこそきっと、お客様からの声を大切にしなければならないという自覚があるのだ。だが、コンサルは会社からお金を頂く立場の人間だ。利益を最優先した思考によって、お客様の声が耳に届かなくなっているのかも知れない。コンサルなんて、所詮は外部の人間なのだ。どうしてそのことに、もっと早く気付けなかったのだろう。

こうして、高額な費用を投じて完成した新台コーナーは再び巨大通路に早変わり。連日、大当り回数ゼロを示すデータランプを悲しい気持ちで見つめながら、私はこうつぶやいたのである。

「トオヤマさん、アンタ馬鹿ァ！？　　……いや、馬鹿なのは私も同じか」と。

カタギリ・今週の1枚

20連目に赤追撃（ソウルジェム虹）で689ゲームを叩き出したワルプル28連の結果は、自身初となる4ケタ乗せという反逆の物語の幕開けとなりました。

途中でエピボ2回、強ベルでの3ケタ乗せなどを挟んで、最終獲得メダルは大台まであと一歩の9,000枚オーバー。

……出来れば、20スロで体験したかったなぁ。

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この記事へのコメント（12 件）

元・店長カタギリ: 投稿日：2017/02/05; 特命MGはしもとさま。

おおっ、同業者の方の話は嬉しいですね！
ついでに香ばしい話も非常に興味深いｗ
今と比べて明らかにヤバい人が多かったですからね、当時は。

実は私の元・上司にもお縄になっちゃった人がいらっしゃるのですが、
その話を書こうかどうしようか迷って、結局お蔵入りにしちゃいました。

やっぱりパチンコ業界、いちばん面白いのは関わっている人間なんだよなぁ～ｗ

元・店長カタギリ: 投稿日：2017/02/05; あっきさま。

沖ドキ打ってるんですか！
なかなかチャレンジャーですな！
私は怖くてなかなか手が出ないんですよね～。
5スロにあったら少し打ってみたいですけどｗ

元・店長カタギリ: 投稿日：2017/02/05; 元職長さま。

話を聞く限りだとコンサルが絡んで板挟みになったり、やりたいことがやれなくなる店長さんって結構いらっしゃるんですよね。

私はパチンコ業界しかわからないので何とも言えませんが、現場を良く知らない外部の人間から偉そうにゴチャゴチャ言われたら腹が立ちますよね、誰でも。

それでたんまり報酬を得ているのが余計にムカつきますわ。

……おっと、愚痴っぽくなっちゃってスミマセン！

元・店長カタギリ: 投稿日：2017/02/05; 久兵衛さま。

当時はスロットオンリーだった私がパチに復帰するきっかけ。
それがエヴァだったので思い出は尽きることがありませんね。

ただ勿体ないな、と思うのは、もっといろいろなパチンコを打っておきたかったな、と。
皆さんがいろいろな機種を語るのを見て、羨ましく、そして少し悔しく思いますからねｗ

元・店長カタギリ: 投稿日：2017/02/05; 元店員ユイリィさま。

突確で追加投資が止まらない。
そんな店で打つ人いませんよね～。
当時は突確がメジャーじゃないとはいえ、少し考えればわかる話なのに。

5月1日のことは生涯忘れないでしょうねｗ
貴重な思い出になりました！

元・店長カタギリ: 投稿日：2017/02/05; ままどおるさま。

コンサルは今でもいろいろな形でホールと関わっていますよ。
現場常駐型のコンサルタントだと比較的、現場を理解してくれる人が多いのですが、オーナーとしか会話しないクセに多額の顧問料を取る連中もいますからねぇ……

今でもコンサルに苦しめられる同業者の話を聞くと、いろいろ思い出してイライラしてきますねｗ

まどか、次は一撃万枚を目指したいッスね。
ウチの店には2人いますからね、まどか一撃万枚スタッフが！

特命MGはしもと: 投稿日：2017/02/02; エヴァのSF懐かしいですね。釘をやるようになって2年目で担当になりました。出るか出ないかの台でしたね。ついでにあの頃私の上司だった人が最近刑務所に入ったのを風の噂で聞きました。なんかあの頃のパチンコ業界は変な人が当たり前のようにいたのを色々思い出しました。

あっき: 投稿日：2017/02/02; こんちは、カタギリさん

凄い調整で営業するなんて強者ですな。笑
最近、ホールに行ったら沖ドキで６０００枚でてびっくりしましたよ。

元職長: 投稿日：2017/01/25; 勤め人で有る限り上の命令は聞かなくてはならない
それに付随して上と直接つながって居ればその人の
言う事は聞かざる負えない
直属の長で無いのにえらい人
なんかムカつくんだよね

久兵衛: 投稿日：2017/01/25; 自分のパチデビューに時代が進んだおかげで今まで以上に楽しんでいます！
当のカタギリさんからしたらお辛い部分もあるかも知れませんがｗ

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元・店長カタギリ: 代表作：しくじり店長

シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。タイトルは「しくじり店長」。パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。